25 翼5
「僕は、不思議なんだよね」
カードを切りながら、ニーナとマリーに話しかける。
街で人気のショコラティエのチョコレートはまだ半分以上残っていた。
それを、カードゲームの勝利者が獲得するという話が、僕らの間でまとまり、夜に、僕の部屋に3人で集まった。クロエとイネスは来なかった。
「あのカラスの巣は、木のずいぶん高いところにあって、下からは見えないんだ。それにカラスの巣は、他にも何箇所かあった。ニーナは、どうしてあそこが犯人のカラスの巣だとがわかったの?」
二人と自分に、5枚ずつカードを配る。
受け取った二人は、カードに目をやった。
「わたしは、屋根に登るからね、上から見えるんだ」
カードを見たままニーナは言う。
「ニーナ様は、空が飛べるんですよ」
と、これまたカードを見たままのマリーが言う。
え?
「私、ニーナ様が、空を飛んでいるところを見たことがあります」
マリーがカードを2枚捨てて、2枚山札からとる。
マリーは僕と目が合うと、ニヤッと笑った。
「冗談ですよ、ね、ニーナ様」
ニーナは、カードを見たまま、難しい顔で考えていて、聞いていなかったのか、答えず、3枚捨てた。神妙な顔で、山札から3枚とる。
「びっくりするじゃないか、マリー。ニーナなら、本当に空も飛べるのかもしれないと、一瞬、思ったよ」
マリーは、ふっと笑う。
「そうですね、この国には、魔法がありますもんね」
「でも、魔力は国王しか持っていないんだよ」
僕も、カードを3枚捨てた。山札から3枚とる。
「あれ、坊っちゃま、ご存知ないのですか。王族以外にも、たまに魔力を持つものが生まれるみたいですよ。
でも、魔力を持った者が生まれたら、王に差し出さなければいけない決まりがあるそうです。
魔法は、この国では禁忌だから…。国王の許しを得ずに魔法を使ったものは厳しく罰せられます。
…私は、このカードで、ストップです」
「へぇ、マリー詳しいんだね、僕は知らなかったよ、魔法なんて見た事もないし」
ニーナは、もう2枚捨て、2枚山札から取った。僕も同様にする。
山札からきたカードは、僕の願ったものとは違った。
「はい、私の札は、これです」
マリーが自分の手札を差し出す。ニーナと僕も、カードを明かす。
またもマリーの勝ちだった。
「私の5回目の勝ちですね、では、チョコレートはいただきます」
息を止めていたのじゃないかと思うくらい、カードゲームに真剣だったニーナは、ガックリと肩を落とした。
チョコレートの箱を受け取ったマリーは、ニーナに言う。
「ニーナ様、このチョコレートは、あなたに差し上げます」
「いいの?」ニーナは目を丸くする。
「あなたは、今日、イネスの無実を証明するため木に登り、カラスの巣からお宝を取り戻した。
本当ならもっと褒めてもらっていいはずなんです。でも、クレマンさんにあんなに叱られて、旦那様にも坊っちゃまにも大して褒めてもらえず、散々でしたもんね、チョコレート食べて元気出してください」
「マリー!!」
ニーナはマリーに抱きついた。
「マリーは、いつもニーナ様の味方です。」
マリーは、ニーナの頭をぽんぽんと撫でる。
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