表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/96

21 翼1

部屋の外で、誰かが言い合う声がする。

ニーナの声もしているようだ。

部屋で論文を書いていたのを中断して、僕はドアを開ける。


「だから、もうしないから! クロエ、お願いだよ!」

とニーナの声。

「いーえ、今日という今日は許しません、ニーナ様! 坊っちゃまに叱っていただきます!」

ニーナ付きの侍女クロエの声もする。


「どうしたの?」

僕は、ニーナと、クロエに声を掛ける。ニーナ付き侍女のマリーもいる。


ニーナは僕を見るとハッとした顔をした。

クロエは、何かを決意した表情で、僕の方へ、ツカツカとやってきた。

ちなみに、ニーナは、スボンにシャツ姿だ。大人しくはしていなかったことだけは明白だ。


「坊っちゃま、お聞きください!」

クロエの勢いに僕もたじろぐ。

今度は何をやらかしたんだ、ニーナ…。いつも冷静なクロエをこんなに怒らせるなんて…。


「ニーナ様の行動は、さすがに許容できません。何度も申し上げているのに、一向にお聞き入れくださいません!」

「そ、そうなんだ、クロエ、ちょっと落ち着いて。僕の部屋へどうぞ、みなさん」

僕は、3人を招き入れる。


怒った顔のクロエ、困った顔のマリー、むうっとした顔のニーナ。


クロエは、しっかり者で18歳、マリーは、マイペースな16歳。


はじめは使用人に警戒していたニーナも、我が家に来て1週間が過ぎた今では、この二人を、姉のように慕っている。


「まあまあ、座ってよ」

ソファーに促すと、クロエもマリーも、いいえ、そんなわけには…と断ろうとするところを、無理やり座ってもらった。


机の引き出しから、チョコレートの箱を取り出して、3人の前に置く。

「君たちには、いつも苦労をかけているから、よかったら食べて。街で有名なショコラティエの新作なんだよ」


「わあ、素敵!」

なぜか、厄介ごとの元凶であるはずのニーナが、真っ先に手を伸ばした。

「どうぞ、クロエ、好きなのとって!ほら、マリーも!」

二人に配り、自分も、ぽいっと一つ口に入れる。

幸せそうな、ふにゃっとした顔になる。

「美味しいね!クロエ!」


クロエも、「ええ、美味しい!…」と幸せそうに、ニーナに笑顔を返して、ハッと、顔を引き締める。


「いいえ、ニーナ様、私はまだ、お話が終わっていません」

「えー、もういいじゃん!」

「ニーナ様っ」

クロエが目くじら立ててニーナを睨むと、ニーナは首をすくめた。


「坊っちゃま」

キッとした顔で僕を見るクロエ。

「ニーナ様は、何度言っても、ベランダから出入りされるのです。2階から飛び降りて、部屋から逃げていかれるのですよ! とても、冷や冷やして見ていられません。もう、2回もやめてくださいと申し上げましたのに、今日も、そうやって出ていかれて、これで3回目です! さすがに、これはいけないと思いまして、このように、坊っちゃまのところへ伺ったしだいです」


「二階から、跳び下りる?」

僕は、びっくりしてニーナを見た。

前に、東屋から、軽々と跳び降りたニーナは見たことはあるけど、2階って、それより高いよね?


「驚きますでしょ? やっぱり、坊っちゃまもご存知なかったんですね。でも、ニーナ様、坊っちゃまはご存知だとおっしゃってましたよね?」

クロエに再び睨まれて、ニーナは、うっと、たじろぐ。


「ニーナ、どういうこと?」

僕も、ニーナを見据える。僕が知っていると、クロエに嘘ついたってこと?


ニーナは、マリーのほうへ逃げた。

「マリー、助けて!」


「ニーナ様、残念ながら、無理ですね」

マリーは、ニッコリ笑って、チョコレートをもう一つ、自分の口に入れた。



その時、また廊下から、騒がしい声が聞こえてきた。

執事のクレマンの声がする。

なんなんだ、今日は…。


「ちょっと見てくるよ」

3人に声をかけて、僕は、廊下に出た。



お読みいただきありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ