15 庭園2
東屋の上に立ったまま、父さんを見下ろす形になっている。
…これは、まずい…。
「あ、アレクが庭を見せてくれるって言ったからっ」
ニーナが僕を指さした。
「えっ、ニーナっ、君、今、人のせいにしようとしてるでしょっ」
「なんだよ、アレクだって登ってるじゃないかっ」
「それは君が…」
「…いいから、二人とも、早く降りてきなさい」
腕を組んだ父さんに睨まれている。
「はい」
ニーナは、なんの躊躇もなく、東屋の屋根から飛び降りた。
2メートル以上はあるのに!
ニーナは、ふわりと父さんの前に着地する。
僕は、足元を見下ろし、飛び降りるのは僕には無理だと悟って、登ってきた場所を、慎重に降りてきた。
ニーナが僕に駆け寄ってきて、僕と手を繋ぎ、父さんの前に立った。
父さんは、腕を組んで、険しい顔をしている。
なんて言い訳しようか。
「まったく、びっくりしたよ、うちの庭で、どこのお子さまがじゃれあっているかと思ったら…ふっ」
突然言葉が止まり、見ると、父さんは、下を見て小刻みに震えている。ふ?
「ふははははははっ」
なんと、父さんは、大きな声で笑いだした。
僕も驚いたけれど、ニーナもぽかんとして父さんを見ている。
「あ、アレク、君たち、なんてひどい格好だ…」
涙を浮かべて、お腹を抱えて笑っている。
何が面白いんだろうと、ニーナを見ると、ニーナのドレスは、胸のところから、スカートの裾まで真っ黒に汚れていた。、東屋に上ったとき煤が付いたのかもしれない。
自分を見ると、確かに、全体的に黒く煤汚れていて、ズボンの膝は破れている。
あーあ。
「アレク、なんだか、ボロボロだよ、顔も黒い…」
同情するようにニーナに言われた。
どうやら僕は顔にも煤がついているようだ。
「ニーナも…」と、こちらもニーナに同情する。
とても、レディらしいとは言えない格好だ。
ニーナは、自分の服を見下ろした。
「わ、ドレスが真っ黒。こんなに汚したら、リヒトに殺される。どうしよう」
涙目になっておろおろしている。
リヒトと聞いて、僕も慌てる。きっと僕も叱られる。
「だから言ったのに…」
ニーナの服の汚れを触ってみる。
どうしよう。クリーニングできれいになるかな。
父さんは僕らの慌てようを見て、また可笑しげに笑い出した。
「人の不幸を笑うのは、お行儀が悪いんですよ」
ニーナが、両手を腰にやり、父さんを睨み付ける。
「お行儀って、君が言う?」
思わず口をついた言葉に、僕もニーナに睨まれた。
「ははは、ごめんごめん、久しぶりにこんなに笑った」
ふうっと息を吐いて、父さんは、優しげにニーナを見た。
「ニーナの、ドレスは綺麗にしてあげよう。うちのクリーニングは腕がいいんだ。アレクは、服を破ってしまったことをちゃんと執事に謝るんだね。二人とも、もうすぐ夕食だから、早く着替えた方がいい」
そういって、僕とニーナの頭に軽く手を置いて、東屋から離れていった。
僕とニーナは、顔を合わせ、どちらからともなく笑いだした。
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