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14 庭園1

ニーナの荷物の整理が終わってから、屋敷を案内することにした。

ニーナは本が好きなので、当家の図書室にも案内したかったが、明るい時間のうちにまず、庭を案内する。


バラのアーチをくぐり抜けると、庭園が見渡せる。

花が咲き誇り、丁寧に剪定されていて、今は、誰もいない。

「すごいね、広いね!」

「気に入った?」

「もちろん!」

ニーナは、興味深げに歩いていたが、突然、立ち止まった。


「な、アレク」ぽんとニーナが僕の背中をたたく。

「あの建物まで、どっちが速く走れるか、競走しよっ」

ニーナが、庭の隅に建てられている東屋を指さす。

「えつ、なんで?」

「いくよ、ようい。どん」

ニーナが急に走り出した。

「あ、ニーナ、ちょっと待って」

「待ちませーん!」


すごい速さで駆けて行ってしまう。

僕は、慌てて後を追った。

ニーナは、ドレスでどうしてそんなに早く走れるのかわからないくらい早いスピードで、とても追いつかない。

そもそも、僕は足が遅い。

「勝ったぁ!」

先に東屋に着いたニーナが、両手を挙げて、嬉しそうに僕を見る。


普段あまり走らない僕は、東屋までの距離とはいえ、ヒイヒイ言いながらたどり着いた。

「なんだよ、ぜんぜんダメじゃん」

ニーナが腰に手をやり、胸を張っている。なんでそんなに元気なんだ…。お兄さんはついていけないよ。


「急に走り出すなんて、ずるいよ。はあはあ、でも、はあはあ、よくそんなドレスて、走れるね。はあはあ」

僕は、膝に手をおいて、呼吸を整える。

「鍛え方が違うからね。あと、親分だしね!」

とても自慢げだけど、ニーナに、ドレスで走るものじゃないと説明しよう。


「でも、レディは…」

「アレク、この生垣、跳び越えられる? わたし、できるよ!」

「あ、こら、ニーナ!」

人の話を聞かないニーナを捕まえようとして、さっと逃げられる。

ニーナは、数歩後ろに下がり、助走をつけて走り、生垣を飛んだ。

しゅたっと、着地して、自慢げに振り向く。

僕は、ポカンとニーナを見た。ドレス着たまま、なんで、生垣が飛び越えられんだ?


「アレクには無理かな」

ニーナがニヤッとした顔で、僕を見る。

その挑発には、さすがにムッとした。

「できるさっ」

そういって、生垣からできる限り離れていき、たくさん助走をつけて、飛び越す。

飛べた! 着地はずざざっと、膝をついたけど。

「すごい! やるじゃん!」

ニーナの歓声が上がる。まあね、僕だってやる時はやる。


「じゃあこっちは?」

ええっ!まだ跳ぶの?

ニーナが僕を挑発して花壇や生垣を跳んで見せた。


自分より身長の低いニーナには負けていれいらない僕は、がんばって、同じように跳んで見せる。

僕が跳べるとニーナが喜ぶので、だんだん楽しくなってきて、二人で笑いながら、いろんなところを飛び越えてみた。


「次さ、あの東屋に登ろうよ」

そろそろ、へとへとになってきた僕に、次の難題をニーナが提示した。

「えっ、なんで?」

「上から庭が見たいからっ」

言うが早いか、ニーナは東屋に登り始める。


「ニーナ、危ないって!」

「なんだよ、アレク、登れないのかよ」

ニーナはスルスルと東屋の屋根にたどり着き、僕を見下ろした。

僕はムッとして、東屋に手をかける。

ニーナが登っていったのを真似して登ってみるが、腕力の無い僕はなかなかスムーズには登れず、ゆっくりと慎重に手と足を運び、必死の思いで、屋根にたどり着いた。

もう、疲労困憊。


「やるじゃん!」

「ニーナ、いい加減にしないと…」

「わあ、綺麗!見て!」

ニーナが指さす方を見る。

東屋から見る庭園は、中央にある噴水を左右して、シンメトリーな様子がよく見えた。

「ほんとだね…」

僕も立ったまま、ぼんやりと庭を見下ろす。夕日が庭園を照らす。

庭園は僕たち以外には人は無く、二匹の揚羽蝶が戯れるように草花の間を舞う。

時折吹いてくる心地よい風。

しばらく二人で、景色を見ていた。


「君たちは、そこで何をしてるんだい?」

ふいに、よく知っている声が、足元から聞こえた。

僕はぎくりとする。

今、ここで聞きたくはなかった声だ。

僕は声の方を見下ろし、その人と目が合った。

「と、父さん…」


お読みいただきありがとうございます!

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