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  私が「ルチア」として産まれてから一年程経った。

  私はシャナル王国という国の「クライシス侯爵家」の長女として生を受けた。「ルチア・(ルーク)・クライシス」というのがフルネームだ。

  侯爵家とか貴族とか初めて聞いた時はこの家はそういう設定で生活しているんだろうかと真剣に考えた。だがそうじゃないらしい。

  どうしてこんなことが分かるかと言うと、産まれてきてから、言葉が理解出来るという謎現象が起きているからである。

  前世を思い出した時は言葉を理解出来る事について不思議に思う余裕がなかったけど、今考えると便利だけど謎すぎてちょっと怖い。

  まぁ言葉が分かるに越したことはない。



  私の今の状況を整理するのには大分時間がかかった。

  憶測だけど、私はどうやら「転生」というのをしたらしい。

  まずこの世界に日本なんていう国はない。これは地図を見せてもらった時にチェック済みだ。

  それどころか、テレビや携帯などの電化製品もない。外の景色も、教科書で見たような中世ヨーロッパの様な風景が広がっている。他にも衣類、食事、言語、文字等など色々出来る限り見てみた。が、どれもこれも見たことも聞いたこともないようなものばかりだった。

  この事から私は悟った。


「これはよく見るヤツだ」と。


  具体的にどんな世界に転生したのかは分からないけど、一つだけ引っかかることがある。

  「ルチア・L・クライシス」という名前・・・

  どっかで聞いたことあるんだよなぁー

  多分私の死ぬ前、つまり前世に関係している気がする。

  どこだっけ、どこで聞いたっけなぁ。


  ボーっと私は床に座りながら考えていると、ヒョイっと抱き上げられた。

「まぁルチアったら、窓の外ばっかり見て、もしかしてお外に行きたいのかしら?」

「まぁま」

  私を抱き上げたのは「オリビア・L・クライシス」、私のお母様だ。柔らかな印象の人で、とっても優しい。お母様に抱っこされると、すぐに眠くなってしまう。

「お外はまだ駄目よ、一人で行くのはもうちょっと大きくなってからね」

「あぁ」

  外か・・・確かにちょっと興味ある。どんな感じなのか実際に見てみたいな。


「なら、今度一緒に視察に行くか」

「まぁ、あなた!帰ってらしたのね」

「あぁ」

「もう、ノックくらいして下さいね、ルチア、お父様がいらしたわよ~」

「ぱぁぱ」

  この人が私のお父様「アルフィー・ L・クライシス」シャナル王国の外務副大臣でかなり偉い人だ。

  ラピスラズリの瞳に、髪は黒に近い色だけど、日に透かすと青みがかる綺麗な色で、顔立ちはもう非常に整っておられる。それに相まって、お父様はあまり笑わないので美しさが更に際立つ。ぶっちゃけ顔面だけで戦争が起きると思う。

 

「ルチア、こっちにおいで」

「あーうー」

  私はお母様からお父様へバトンタッチされる。

「ルチアは賢い子だ、もう文字が分かるみたいだしな」

「そうなのよ、欲しがるものも本ばっかりで、この間なんて、書庫に行きたがってたから連れていったら、地図を漁り出しちゃって、もうびっくりしたんだから!」

「ふむ、やはりルチアには何か他の子にはない才能があるのかもな・・・」

  普通の赤子ならないよ。私多分普通じゃないから。前世あるんだよ。

「だから、本が好きなのかしらね」

  ちょっとやり過ぎた自覚はあるけど手っ取り早くこの世界について知りたかったんですよ。


「・・・ルチア、さっきの話だが、次の視察には一緒に行こう」

  おぉーそれは是非とも行きたい。

「あなた!本当にルチアを連れていくんですか!?」

「あぁ、この子の良い経験になるだろうし、何よりルチアが外に行きたがっているからな」

「でも・・・」

  その時、ノックの音と共にドアが開いた。

「失礼します。母さん、父さんが帰っていると聞いたのですが」

  入ってきたのは私のお兄様である「レイモンド・L・クライシス」、私とは四歳年が離れている。

  五歳ながらもしっかりしていて、将来お父様の仕事を引き継ぐため、かなり勉強しているそうだ。

  更に、外見もやはりこの親にしてこの子ありという感じで、お父様と同じラピスラズリの瞳に、青みがかった黒の髪を持ったお父様似の美少年だ。


「にぃにー」

「・・・っ、ルチアがいたのですか」

「あぁ、それがどうかしたのか」

「いえ・・・やはり出直してきます」

「・・・?そうか、後で執務室に行こう」

「はい、ありがとうございます。では失礼します」

  お兄様はこちらを見ることなく直ぐに出ていかれた。


  ・・・・・どうやら私は嫌われているらしい。

  特に嫌われる行動をしたつもりは無いんだけど、それ以前にお兄様とはあまり会わない。私は自力で歩くのはまだ難しいので、部屋の外にはあまり行かない。なのでお兄様が会いにこない限り遭遇する事は無いのだ。

  因みにお兄様が私に会いに来たことは一度もない。

  かなり嫌われているらしい。


「あの子ったら、どうしたのかしら?」

「・・・もしかしたら、ルチアもなのかもな」

「えっ!?まさか、実の妹なのよ!?」

「それ程なのだろう、レイモンドの"女嫌い"は」

「そんな・・・」


  なるほど・・・お兄様は女嫌いだったのか。

  だから私と会うことが少なかったのか。

  前世では私には兄弟がいなかったので、この世界では兄がいると聞いて嬉しかった。でもその兄が私の事を嫌っているのは、少し悲しい。


「まぁルチアは妹なんだ。もしかしたら徐々に慣れていくかもしれない」

「そうね、少し様子を見ましょうか」

「あぁ、とりあえずはルチアに外を見せないとな」

「あなた、本当に大丈夫なんですか?」

「いつかは外に出掛けるんだ、それが少し早くなるだけだ。なぁルチア」

「あぁー!」

  行きたい行きたい。

「ルチアまで・・・もう、しょうがないですね。ちゃんと良い子にしてるんですよ?あなたも、ちゃんとルチアを見ていてくださいね?」

「あぁ、分かっている」

「あーうー!」




  なんやかんやで私の初の外出が決まった。










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