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イェルフと心臓  作者: チゲン
第一部 イェルフと心臓
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6/61

6頁

 近くの村で、服と食糧を調達してくる。そう言って、ポロノシューは姿を消した。

 ウタイは、おとなしく彼の帰りを待つしかなかった。どこに追っ手の目があるか判らないので、下手に動けないのだ。

「動きたくても、動けないんだけど」

 独り言が口をついて出る。

 痛みこそないが、思うように動かない左足を、ウタイは呪(のろ)い、叱咤(しった)した。

 もどかしい。

 二人で旅をするようになって幾日。

 毎晩出てくる薬草スープにも飽きてきた。固い干し肉や干し果実は、もう見るのもうんざりだ。

 焼き立てのパンや、もぎたての瑞々しい果実、肉汁の滴(したた)るステーキを腹いっぱい食べたかった。

「うっ……」

 突然、吐き気を催した。胃液が逆流してくるような不快感。

「えうっ!」

 ウタイは激しく嘔吐(おうと)した。

 消化中の朝食が、地面に飛び散った。

「うえっ……げほっ……」

 胃の内容物を全て吐きだすと、ようやく嘔吐感は治まった。

「あうっ!」

 安心したのも束の間、今度は胸に激痛が走った。

「う……く……」

 心臓が締めつけられるようだ。

 両手で胸を押さえつけた。

 さらに強烈な痛みが襲ってきた。

「うああっ!」

 上体が、ビクリと反(そ)り返った。

 意識が白濁(はくだく)のなかに落ちた。

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