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イェルフと心臓  作者: チゲン
第三部 人間とイェルフ
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58/61

19頁

 また独りになってしまった。

 ポロノシューは誰とも、ほとんど口を利かずに過ごした。医者と患者として以外、村人との接触を避け、食事さえろくに摂らなかった。

 シュイはあの日以来、姿を見せない。

 泣きながら出ていった彼女の顔が、何度も鮮明に蘇った。

「キローネに間違って薬を飲ませたときも、あんな顔をしていたな」

 思いだして、自嘲気味に笑うこともあった。

 一日が長いと感じた。

 もう何年も、孤独な日々を送っているような錯覚に陥(おちい)っていた。実際は、キローネたちがこの村を去って、まだひと月ほどしか経っていない。

 シュイ目当てに足繁(しげ)く通っていた男たちも、しだいに姿を見せなくなった。

 これが正常なのだ。元に戻っただけだ。

 ポロノシューは水を飲もうとして、厨房にやってきた。

 大瓶は、ほぼ空だった。そういえば、しばらく井戸に汲みにいっていなかったことを思いだした。

「独りだと、水もなかなか減らないんだな」

 渋々、井戸まで水を汲みにいった。

 村の広場にある井戸は、住人の共有である。

 井戸端には女や年寄りたちがいて、世間話に興(きょう)じていた。

 ポロノシューの姿を見るや、真っ先にシュイの近況を尋ねてきた。彼が知らないと答えると、残念そうに山の中腹を仰ぎ見た。

 ポロノシューも釣られて、山を見上げた。

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