表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イェルフと心臓  作者: チゲン
第三部 人間とイェルフ
47/61

8頁

 翌朝、シュイは里の医者を訪ね、足の具合を診てもらった。

「もう走っても大丈夫でしょう」

 ほっとして周囲を見回すと、棚や机に、たくさんの文献や薬草が並べられていることに気付く。

 充実している。誰かさんの所とは大違いだ。

「なんでここと麓で、こんなに違うのかしら」

 シュイたちの里がある辺りは、標高もさほど高くなく、水も豊富にある。畑には灌漑かんがいが行き届いているから、冬でも食糧に困らない。

「薬も、いろんなのがあるし」

「秘宝のおかげですよ」

「そりゃ、判ってますけど」

 シュイの里に伝わるイェルフ族の秘宝は、主に薬学に関する秘伝書だ。

 今や廃れた魔術関連のものも多いが、生活に直結したもの……病や怪我に効く薬の処方箋しょほうせんなどもあり、大変重宝ちょうほうしている。

 噂では、禁忌の秘薬についても書かれているらしいが。

「ねえ先生、熱冷ましの薬ってあります?」

「ありますよ」

 医者は、こころよく粉薬を分けてくれた。シュイが飲むのだと、信じて疑っていない。

 シュイは心中で医者にびながら、薬を受け取った。

「これがあれば」

 居ても立ってもいられなくなり、里を飛びだす。もちろん誰にも見とがめられないように、細心さいしんの注意を払って。

「もう、あたし……なにやってんのよ」

 ばれたら、今度こそただでは済まない。

 それでもシュイは斜面を駆け下り、大急ぎで沢を下っていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ