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視線を受け、シダは顔を上げる。
ジイロが、思い詰めた顔で見つめていた。背に少ない荷を、腰に父の形見の曲刀を佩いて。
「母さん……」
言いかけ、ジイロは口ごもる。
「あのさ……」
「子供ってのは、あっという間に大きくなるもんだ」
「え……?」
シダは目を細めた。
「おまえを守れって頼まれてたけど、もうそんな必要はないみたいだね」
「母さん、俺……」
「無駄死にだけはするんじゃないよ」
シダは寂しげに微笑むと、それ以上何も言わなかった。
「ああ」
ジイロは力強く頷くと、母に背を向けた。




