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イェルフと心臓  作者: チゲン
第二部 イェルフの子供たち
22/61

8頁

 寄合には、あいかわらず重苦しい雰囲気が立ちこめていた。

 トスカの額にも、しわが寄っている。

「これが嫌なんだよな……」

 ジイロは、ここに来たことを早くも後悔していた。

「アコイの奴……なんで俺まで」

 成り行きとはいえ、彼にうまく乗せられてしまったような気がして、腹が立つやら情けないやら。

「決心はついたようだな」

 トスカの問いに、アコイは無言で頷いた。トスカの顔に、初めて、満足げな表情が浮かんだ。

「では今より、アコイを自警団の長とする」

「えっ!?」

 驚きの一声をあげたのは、ジイロ一人だった。長老衆は一様に頷きあっている。すでに話はできていたのだろう。

「まあでも、当然っちゃあ当然か」

 アコイの実績や人望をかんがみれば、むしろ遅いくらいだ。

 その新しい団長が、最長老に向かって提案した。

「副団長に、ジイロを付けさせて下さい」

「おれぇ!?」

 思わぬ展開になった。青天せいてん霹靂へきれきだ。

「おいアコイ、そんなの聞いてないぞ」

「言ってないからな」

 アコイが自分を連れてきた理由が、ようやく判った。

「よかろう」

 これもあっさりと最長老に承諾された。

「……いいのかよ」

「おまえじゃないと駄目なんだ」

 面と向かって言われると、何だか面映おもはゆい。それにアコイの補佐ができるなら、断る理由はなかった。

 ぎすぎすしていた寄合の雰囲気が、少し和んだかに見えた。

 だがアコイの提案は、それだけでは終わらなかった。

「自警団の何人かで、人間たちに夜襲をかけようと思います」

「なんと!」

 これには、さすがのトスカも驚愕した。長老衆からも、どよめきが起こる。

「おまえ……」

 ジイロでさえ、言葉を失っていた。

「こちらから攻めるというのか!?」

「危険すぎる!」

 たちまち長老衆から反対の声が上がった。

 奇しくも、先程アコイがジイロに対して言った言葉そのものだった。

 だがアコイに動じた様子はない。居並ぶ長老衆に向かって、きっぱりと言い放った。

「我々からも攻めるべきです。でないと、人間たちは図に乗って、見境無くこの山に押し寄せてきます」

 長老衆がなおも反対の声をあげるが、トスカがそれを制した。

「それが良いと、おまえは考えたのだな」

「はい」

「ジイロもそう思うか」

「え……」

 いきなり水を向けられてあせるジイロだったが、アコイの顔を見て、力強く頷いた。

「判った」

 最長老のまさかの決定に、座から悲鳴にも似た声があがった。

「全ての責任は私が取る」

 まさに最長老の鶴のひと言である。長老たちも口を閉ざすしかなかった。

「任せるぞ、アコイ」

「はい」

 アコイは表情を引き締めた。

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