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野伏は十二人。
だが、ポロノシューたちの位置を、正確に突き止めている訳ではないようだ。三人ずつの四組に分かれ、この近辺を捜索していた。
結果的に、ポロノシューが奇襲をかけた格好になった。
ひと組目は、うまく虚を突き、得物を抜く暇さえ与えなかった。
ところが、最後の一人に呼び子を鳴らされた。これで他の野伏たちに、奇襲を知られてしまった。
いつもならこんなヘマはしない。負傷のせいか、今日は体の動きが鈍かった。
二組目のなかには、先日討ち漏らした野伏がいた。
その野伏は、ポロノシューの顔を見るなり、恐怖に駆られて遁走した。そのため他の二人も浮き足立ち、苦もなく一蹴することができた。
これで野伏の数は半減した。
残った六人は、リーダーの指示でひとつにまとまり、周囲を警戒しながら移動し始めた。これでは迂闊に手が出せない。
ポロノシューは、茂みのなかから様子を窺った。
このまま野伏たちが進むと、ウタイが隠れている辺りに接近してしまう。
「まずいな」
珍しく、ポロノシューは舌打ちした。その拍子に、足もとの小枝を踏んで、小さな音を立ててしまった。
「そこだ!」
野伏たちが、一斉に矢を放った。
ポロノシューは身をかがめて駆けだした。
矢が、腕や足を掠めていく。
一本が、左肩に突き刺さった。