第1章 1話『偏見アドバイザー』
二話です。よろしくお願いします。
突然ですが、『キモオタキモー』と、ご丁寧にわざわざ二回も刺してくださる女子の皆様――
食わず嫌いせずに本気でオタク文化と向き合ってみてはいかがでしょうか?
最初は抵抗があるかもしれません。ですが、必ずハマると思います。
ハマってしまえば、新しい世界が開かれ、開きっぱなしの股は閉じられ、押しに強くなり、推しに弱くなり、幼き頃の純粋さを取り戻せるでしょう。さらに並ぶのはタピオカではなくグッズ販売に、口癖は「ウケる〜」から「尊い」に。
どうです?
軽い女から気高き乙女へと変貌したでしょう?
この機会に試してみますか? 大丈夫。損するのはチャラチャラしたイケメンクソ野郎だけ。このアドバイザー田上、全力でバックアップします。常におすすめの作品を用意しておきます。
一緒にオタク文化を盛り上げま――何? これから〇〇大学医学部の男子達と合コン?
じゃあ君でいいや。ん? 何? これからテニサーの飲み会?
そ、それじゃあ……え? キモい? うざい? 鼻毛? チビカス? 世界のあか?
やめろ……そんなこと言うな……うわぁぁぁあああ!
「――はぁ、はぁ、はぁ、夢か……」
壇上に上がって熱く語っていたはずが、いつの間にか自室のベッドでぐったりと横になっていた。まぁ、どう考えても夢だよな。
俺の名前は田上蒼生。高校一年生。小学校の頃のあだ名は【命名大王】と【変態界のパイオニア】だ。前者はあだ名をつけるのが好きだったから(うまいとは言っていない)。後者ははっきり言ってよくわからん。趣味はアニメ視聴。中でもマイブームはおねロリ。好きな言葉は無邪気で嫌いな言葉は穢れだ。
好きな女性の仕草は美味しそうにご飯を食べているところ、髪を結んでいるところ――なんてクソみたいなアンケート調査にありそうな回答はしない。シンプルにパンツの食い込みを直しているところが好きです。
そんなどこにでもいる爽やか男子高校生の俺の周りで、平和でほのぼのとした日常系4コマ漫画とは明らかに嗜好性をずらした、残念な日常且つ非日常が始まっていた。
次回もよろしくお願いします。