8
悔しくて悔しくて夜も眠れなかった。
エースピッチャーを激しく憎みもした。
(お前さえ、お前さえ居なければ…)
だが、そんな怒りも己の実力には何も結びつきはせず、もはや諦めかけていた、そのとき。
神が現れた。
神が言った。
「お前に望みの力をやろう」
神の力を授かった流星は、あっという間にエースピッチャーのポジションを勝ち取った。
(俺はこの力で甲子園に行く! そして優勝する! そのためには神の命令を実行しないと!!)
「行くぞ、転校生!!」
流星が気を吐いた。
片足を上げ、投球ホームに入る。
「オオオオオオーーーッ!!」
流星の瞳に炎が燃える。
たわみ、ひねられた身体がムチの如くしなり、振りかぶった右腕がカタパルトのようにボールを射出した。
ド真ん中の豪速球。
1球目、2球目を凌駕する速さでキャッチャーミットへと爆進していく。
星男を心配そうに見守る文奈の眼には、あまりの速さにボールは全く見えていない。
前の2球をどうすることも出来ずに見送った星男。
その両眼がカッと見開き輝く。
すさまじい速さでバックスウィングを終え、そこからさらに速いスピードでアッパー気味にバットをフルスウィングする。
ゴッ!!
バットの芯が正確にボールを捉えた。
次の瞬間。
流星の豪速球はバットを完全にへし折りはしたが、投げられたスピードとほぼ同じ速さでスタジアムの外へと消えていった。
「なっ!?」
流星が振り返り、打球を見送る。
「じょ、場外ホームランだ…と…」
流星がうめき、両ひざをマウンドに着いた。
続いて両手も地面に着き、うなだれる。
「やったーーーっ!!」
文奈が星男に駆け寄った。
「すごいよ、銀河くん!!」
ハイタッチする星男と文奈。
抱きつこうとする星男。
さすがにそれは拒む文奈。
文奈の眼にマウンドの流星が映った。
文奈がマウンドに向かう。
星男もついてくる。