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「文奈さん、その本を持ってきて」


 星男が言った。


「うん」


 文奈は図書室へと足を踏み入れた。


 今は司書教師も居ないようだ。


 文奈は図書室の本の位置はだいたい記憶していた。


「確か…ここに」


 文奈が一冊の本を手に取る。


「ペーブ・ルーズ 伝説の打者」


 ペーブはアメリカ野球界の強打者だ。


 数々の輝かしい記録を打ち立てている。


 プライベートはかなりルーズな人だったらしい。


 文奈は、この本は読んでいない。


 スポーツが苦手だからだ。


 何となくの浅い知識しかない。


(でも、この人はすごいはず)


 文奈は「ペーブ・ルーズ」の伝記を手に図書室から巨大スタジアムへと戻った。


 星男に本を手渡す。


「銀河くん、その人は野球のすごい人だよ。それで何とかならない?」


 星男が本を開き、猛スピードでページをめくりだす。


 その両眼が激しく輝く。


 それも束の間。


 星男の顔つきがガラリと変わった。


 めちゃくちゃ落ち着いている。


 ガムを噛んでいるように口を動かした。


 ゆっくりとした動作で本を文奈に返す。


「おい! いい加減にしろ!」


 流星が怒鳴った。


「嫁よ」


 星男が文奈に言った。


「だからまだ嫁じゃないよ!」


「退がって見ててくれ」


 星男の言葉に文奈は不安げな表情を浮かべながらも、邪魔にならない位置まで退がった。


 星男がバットを構える。


 それは先ほどまでの何万回振ろうともボールにかすりもしなさそうな構えとは違う、威風堂々としたオーラを放つ構えだった。


「来いっ!!」


 星男が吼えた。


 まるで獅子の咆哮だ。


「ムッ」


 星男の激変した様子に流星も気づいた。


(こいつ…まるで別人だ…)


 しかし。


 だから何だというのだ。


 流星は思った。


 小中学校でエースで鳴らした流星が星雲学園野球部に入ると、そこで待っていたのは補欠という残酷な現実だった。


 どれほど頑張っても、それこそボロボロになるまで努力しても、遠く手に入らぬレギュラーの座。


 

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