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星男が両手を広げ、上にかざす。
星男の胸から今まで集めた「鍵」、緑の発光体が全てフワリと浮上した。
9個の球体は空中で旋回しつつ次々とぶつかり合い、ひとつの大きな塊に変化する。
星男の身体ほども膨らんだ球体は、そのまましばらく辺りを飛び続けた。
文奈は星男の身体から「鍵」が出現した瞬間から、周りに居る登校中の星雲学園生徒たちが全員、動きを止めたと気づいていた。
自分たち以外の時間が停止したようだ。
星男が挙げていた両手を一気に振り下ろした。
緑の発光体がひときわ高く舞い上がり、星雲学園のグラウンドへと飛んでいく。
「行きましょう」
星男が文奈の右手を握り、走りだす。
2人はグラウンドの中央にやって来た。
球体は2人の頭上にある。
「フィールドの『門』を開けます」
星男が言うと同時に発光体が地面に向け降下し始めた。
グラウンドに吸い込まれて消える。
しばらくは何も起こらなかった。
「?」
文奈が戸惑った瞬間。
吸い込まれたものと同じ大きさの発光体が、地面から無数に飛び出した。
「わ!?」
文奈が驚く。
次々と浮かび上がってくる球体は2人の頭上まで上がるとシャボン玉が割れるように破裂し、消えた。
そして。
グラウンドから今度は深紅に輝く球体が出現した。
球体はフラフラとあてどなく動いた後、星男の眼前に止まった。
「彼です」
星男が文奈に言った。
「こ、これが!?」と文奈。
「フィールドが破られた今、彼もとうとう観念したようですね。もうどんな手を使ってもボクには敵いません。『鍵』を造るのにかなりのエネルギーを使ってますから。フィールド内では消費したエネルギーを回復できないのです」
「…そ、そなんだ。じゃあ、この人を逮捕して終わり?」
「はい」
星男が赤い発光体に右手で触れる。
光が星男の手の中へと吸収されていく。
完全に消えた。
「大丈夫?」
得体の知れない宇宙人の犯罪者が星男の身体に入った不安で、文奈が心配そうに訊いた。
「ええ。彼はボクの精神の中にある牢獄で収監されています。もう影響を及ぼす行為は不可能です。後はボクの星に連れて帰るだけ」
星男がニコリと笑った。




