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「宇宙人、銀河星男」
宝蔵院が言った。
「私と勝負よ。私が勝ったら大人しく宇宙へ帰る。いい?」
「いいですよ。ボクが勝ったら『鍵』をもらいます」と星男。
宝蔵院が頷く。
「私は…死んでも『神の力』は渡さないわ…」
宝蔵院の眼は血走り、息が荒い。
まさに必死の形相だった。
美しい顔に脂汗が浮かび。
「うう………」
低くうめくと、その場に片ひざを着いた。
「え!?」
文奈が慌てる。
「大丈夫ですか!?」
駆け寄った文奈が宝蔵院の肩に触れた瞬間。
「神の力」の光とは対照的な真っ黒い闇が宝蔵院の身体から放出された。
人間ほどの大きさのそれは渦を巻いて文奈に襲いかかる。
「キャーッ!! 何これ!?」
悲鳴を上げる文奈を闇が包み込む。
「銀河くん、助けて!!」
「文奈さん!!」
星男が闇に包まれた文奈に駆け寄り、右手を伸ばす。
が。
闇の中から突然、雷撃が疾り星男の右手を直撃した。
「ぐっ!!」
星男の顔が苦痛に歪む。
暗闇が晴れると、そこには。
虎柄のビキニを着た文奈が立っていた。
頭には2本の鬼のような角が生え、口からは2本の牙が少しだけ覗いている。
眼鏡はそのままだ。
「こ、これは…」
星男が愕然とする。
「神の力」と、その宿主である宝蔵院清香の相性によるイレギュラーが起こったのか?
はたまた宝蔵院の「神の力」への執着が原因か?
この状況は宇宙人、銀河星男も未知のものだった。
しかもそれが自ら伴侶と決めた相手に発現するとは。
文奈の眼は吊り上がり、怒っている。
おそらく本人の意識はなく、宝蔵院の星男への敵意に精神を乗っ取られた状態。
とうの宝蔵院は草原に片ひざを着き、呆然と成り行きを見守っている。
文奈が両手のひらを星男に向けた。
2本の雷撃が空間を切り裂き、星男を撃った。
「うわーーーーっ!!」
星男が苦痛に絶叫する。
プスプスと煙を上げながら倒れた。
まだ意識はある。
「これが…これが嫁の雷というものか…」
絶対、違う。
頭がボーッとして、ものが考えられない。
遠くの方でバリバリと大気を震わせる音が聞こえる。
それと男の叫び声。
むき出しの怒り?
「神の力」を奪われたくない?
宇宙人は自分の星に帰れ?
他人の感情が渦巻いている。
自分はいったい、どこで何をしているのか?
「………さん!!」
苦しげな叫びを上げる男の声が何か言っている。
「………奈さん!!」
誰かを呼んでるの?
この声…聞いたことがある…知ってる人の声…。




