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2人の身体から緑色に輝く球体が飛び出す。
瞬から出たものは父に、優から出たものは母に吸い込まれた。
両親がまぶしく光り輝き、星男の姿に戻る。
「『鍵』をもらえました」
星男がニッコリ笑って言った。
星雲学園の校門に仁王立つ1人の女生徒。
星雲学園生徒会長、2年F組、宝蔵院清香。
容姿端麗、成績優秀の美少女。
さらに剣道インターハイ優勝の実力を持つ女剣士である。
ごった返す朝の校門の真ん中に立ち、登校してくる生徒たちをにらみつけている。
通り過ぎる生徒たちは宝蔵院の大きく美しい瞳に見つめられる度、アタフタとなり、すぐに彼女から遠ざかった。
大げさに言うならば、さしずめ今の宝蔵院は大海原を割るモーゼといった状況か。
宝蔵院の視線が前から歩いてくる2人の生徒に向けられ、ピタッと止まった。
銀河星男と紫文奈。
仲良く登校してきた2人だった。
「わ! 何だか、めちゃくちゃにらまれてる!」
文奈は自分の星男への気持ちが外に出すぎて風紀を乱すほどイチャイチャしていると思われたのでは、と心配になった。
宝蔵院が険しい表情で2人の前にやって来る。
スラリとしたモデル並みの長身で2人を見下ろした。
星男の瞳がキラリと光る。
「君、『鍵』を持ってるね」と星男。
「それが最後の『鍵』だ」
星男の言葉に文奈の眼が点になった。
「ええ!? 最後の!?」
そもそも文奈は星男の集めている「鍵」なるものが、いったい何なのかこれっぽっちも分かっていなかったのだが、これだけ毎日のようにその「鍵」をめぐる熾烈な戦いに巻き込まれていると「ああ、ついにこの騒動もこれで終わるのか」という妙な感慨めいたものが胸中に去来した。
(あれ? ちょっと待って…)
文奈は記憶を辿った。
(銀河くんは任務を終わらせて…その後、どうするって言ってたかな…?)
首を傾げ、急にはっとなった。
「君を嫁として連れて帰る!!」
文奈の顔が真っ赤になった。
(わ、私、とうとう宇宙に嫁入りするの!?)
いやいや「恋人」は良いけれど「嫁」は早すぎる。
文奈はブンブンと首を横に振った。
さすがに、まだ心の準備が出来ていない。
キスだってしていないのに。
文奈の心の動揺をよそに、宝蔵院の全身から強烈な光が発した。
「わー!! もう始まっちゃった!!」
文奈の叫び。
次の瞬間には、3人はひざ辺りまでの高さの草が一面に生えた草原に立っていた。
空には青白い満月。




