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「僕たちは負けない!!」と優。
「え!? えーっと」
文奈が戸惑いながらもペダルを回す。
「わ、私も負けません!!」
そして顔を真っ赤にしながら。
「な、何だか分からないけど、よ、嫁スパートっ!!」
文奈が叫んだ。
猛烈な勢いで並走する2台の自転車がゴールに向かって突進する。
道路脇から横断幕を掲げ大声援を送る顔の無い観客たち。
文奈と優、2台の自転車がほとんど同時にゴールラインへと飛び込んだ。
そのまま走り続ける。
「優勝は」
のっぺらぼうのアナウンスが辺りに響いた。
「星雲学園2年D組」
「ええ!?」と文奈。
「紫文奈!!」
「わ、私、勝っちゃった!?」
あたふたする文奈。
ゴール前の熾烈な戦いに大歓声を送っていたのっぺらぼうたちが文奈のコール直後から、ピタッと黙り静まり返る。
遅れてゴールした星男と瞬が、スピードを落とした文奈と優に追いつく。
4人は自転車を停めた。
星男と文奈が抱き合って喜ぶ。
一方の双子は抱き合い、泣き崩れた。
激しく慟哭する2人を見て、星男と文奈も喜ぶのを中断し、瞬と優に近づく。
「『鍵』をもらいますね」
星男が双子に言った。
4人をピンク色の霧が包む。
星男が光り輝き、その後に現れたのは。
2人の中年の男女だった。
「誰!?」と文奈。
「しかも銀河くんが分裂したの!?」
男女が双子に呼びかける。
「瞬、優!!」
男女の声に顔を上げた双子の涙が止まる。
「「父さん、母さん!!」」
双子がワッと男女に抱きついた。
ひとしきりの家族の再会の後、父が双子に語りかけた。
その口調は優しく愛に溢れている。
「お前たちが離れたくない気持ちはよく分かる。おじいちゃんの命令も理不尽だ。それは正しい。でもな」
父が双子を正面から見つめる。
「お前たちのしたことは他のロードレース出場者に対して卑怯だと思わないか?」
双子はバツの悪そうな顔になった。
「お前たちの強さは実力じゃない。誰かからもらった都合が良いだけのニセモノの力だ。そんなものを使って、他の真面目にロードレースに打ち込んでいる人たちを傷つけてまで、自分たちの望みを叶えるのか? 本当にそれで満足か?」
父の言葉に双子は項垂れた。
「お前たちにはまだ、やれることがある。ロードレースに実力で勝つ。おじいちゃんを粘り強く説得する。そうじゃないか?」
双子は頷いた。
母が優しく2人の頭を撫でる。
「あなたたちなら、きっと出来るわ」
母が言った。
双子が泣き出し、両親に抱きついた。




