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ずっと2人はいっしょだったのだ。
片時も離れたくはない。
しかし祖父の言葉は絶対だ。
2人は別々の学校に入学した。
双子にとってはつらい日々が続いたが、唯一2人に自由が許されるものがあった。
それがロードレースである。
常に経営学に関する勉学を強要する祖父も、双子がロードレースで結果を出すと意外なほど喜んだ。
双子たちの父、すなわち祖父の息子が学生時代にロードレースで入賞していたのを思い出させたのかもしれない。
双子はお互いに連絡を取り合い、この一点に賭けた。
ロードレースで実績を上げ、同じ高校に入学するという作戦である。
これは上手くいった。
2人は着実に結果を残し、星雲学園ロードレース部でチームを組むべきであるというお墨付きを受けるところまでたどり着く。
祖父は相変わらず2人がひとつ屋根の下で暮らすのは許さなかったが、星雲学園でロードレース部に所属するのは咎めなかった。
ただ、祖父は厳しい条件を決めた。
公式大会で必ず結果を出すこと。
もし上位入賞できなければロードレースを辞め、後継者修行に専念するという約束だ。
2人は自分たちが公然と逢える時間を失いたくはなかった。
お互いは常に側に居るべき、かけがえのない存在なのだ。
ロードレースだけは何としても守り抜かなければ。
実力は充分にある双子だったが、競技本来の重圧プラス引き裂かれるかもしれないという怯えも重なり、どんどん空回りしていった。
そして、上手く成果が出せなくなり始める。
焦りが焦りを生み、泥沼にはまった。
そこに「神」の声が聞こえてきた。
「お前たちが欲しがっている力をやろう」
「神の力」でレースは圧勝の連続になった。
これで双子たちの共通の時間は守られる。
はずだった。
((宇宙人め!!))
双子は歯噛みした。
再び負けるかもしれない恐怖に2人は直面している。
((何故!? 何故こんなことに!?))
双子の顔が歪む。
無心でゴールまでの300mを漕がねばならないのに、2人の視線はついつい星男たちの方へと向く。
((俺たちは少しでも長くいっしょに居たいだけなのに!!))
最終のスパートで力を出し切った星男と瞬がスピードを落とし、先頭から後方へと退がっていく。
自らが風除けとなって後ろを走る者に体力を温存させていた。
後ろを走る者とすれ違う瞬間に。
「優、頼んだぞ!!」
瞬が叫ぶ。
「文奈さん、嫁スパートです!!」
星男も叫んだ。
「よ、嫁スパートって何!?」
文奈がすっとんきょうな声を上げる。
残り250m。
文奈と優の自転車がゴール目掛けて飛び出す。




