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「静さんを幸せに…そして」
良男が再び息を大きく吸い込む。
「君がいっしょに居てくれるだけで俺も幸せになれる!! 結婚してください!! お願いします!!」
息を吐く勢いで告げ、良男は右手を差し出した。
静の前に2人の男の手が並んだ。
4人の女子社員たちも固唾を飲んで見守っている。
「お2人の真剣な気持ち」
静が口を開いた。
その声は少し震え、美しい瞳には涙がうっすらとにじんでいる。
「すごく伝わりました。だからこそ私も真剣に考えて答えを出します」
静の手がスッと前に伸びた。
その手は良男の右手を握っていた。
「紫さん、これからよろしくお願いしますね」
静がニッコリと笑い、そのせいで瞳からこぼれた涙が頬を伝った。
良男は、なんて美しい涙だろうと思った。
そして。
「うおおおおおおおっ!!」
喜びのあまり天を仰ぎ叫んだ。
自らの負けを潔く認めた茂手田が無言でその場を去っていく。
4人の女子社員たちが2人を祝福する黄色い歓声を上げた。
「………パ!」
あのときは文奈が生まれたのと同じくらいに嬉しかったな…。
「パパ!!」
「え!?」
耳元で呼ぶ妻の声に良男…いや、文奈の父は現実へと引き戻された。
文奈の母が頬を膨らまして拗ねている。
「私以外のこと考えてる?」
「いや。君へのプロポーズを思い出してた」
「まあ」
母が顔を赤らめた。
「パパ、好きよ」
母が父の頬にキスをする。
父の全身を激しい衝動が疾り抜けた。
「マ、ママ、文奈と銀河くんはどうした?」
今すぐに妻をめちゃくちゃ抱きたい欲望を抑え込み、父が訊いた。
そう、文奈と星男が居る状況では、そんな大っぴらに始められるものではない。
「ああ」
母がニコッと笑った。
「2人ならデートで映画を観に行きましたよ」
「デ、デ、デート!!」
妻の魅力で頭がいっぱいだった父が一気に慌てた。
愛娘の恋愛も妻に負けず劣らず大問題である。
「つ、付き合ってないのにデート!?」
「パパ」
母が父を諭すように言った。
「銀河くんは素直で優しくて素敵な男の子よ。最近、2人の間で何か進展があったみたい。文奈も銀河くんのことを」
「わー!! わー!!」と父が大声を出す。
「何、パパ!? 急に何なの!?」
「聞きたくない、聞きたくない!!」
「ウフフフフ」
母が笑う。




