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星男の演技が終わった。
満場の顔の無い観客が割れんばかりの拍手と歓声を送る。
「銀河くん、キャー!! 素敵!!」
文奈も両手を振り、ピョンピョン跳ねながら黄色い声を上げている。
キス&クライに座り観客たちや、特に文奈に向かって大きく手を振って応える星男。
得点が電工掲示板に映し出される。
大差の圧勝であった。
松岡には、この結果はすでに分かっていた。
キス&クライから降りてきた星男が松岡の前に立つ。
文奈も星男の横に駆けつけた。
「ボクの勝ちです」
星男の言葉に松岡が頷く。
「認めるわ」
「君の『鍵』をもらうね」
星男が言い終わると同時に辺りがピンク色の濃霧に包まれる。
「来た、銀河くんの変身パート!!」
文奈が両手で自分の顔を左右から挟む。
「流星くんのときみたいに松岡さんの好きな男子になってキスするのはダメだよ、銀河くん!! そんなのダメだからね!!」
「嫁の嫉妬がどんどんエスカレートしてきた!!」と星男。
「嫁じゃありません!!」
文奈の叫びと星男の身体が輝きだすのが丁度、同時だった。
光が収まるとそこには1人の美男子が立っていた。
「飛龍さん!!」
松岡が歓喜の声を上げる。
スポーツに疎い文奈といえども金メダリスト飛龍譲は知っていた。
「わー!! 王子様みたい!! すごいカッコいい!!」
文奈まで頬がポッと赤らむ。
飛龍は松岡の前へと進み出た。
松岡の瞳を飛龍が見つめる。
「その眼」
飛龍が口を開いた。
「君はもう気づいてるね」
「はい」
松岡が頷く。
「それなら、もう大丈夫。君は本当の意味で前に進める。嘘の力で得るよりも、ずっと大切なものがそこにある。お互いにフィギュアスケートを楽しもう」
飛龍がまばゆい笑顔で右手を差し出した。
松岡の右手が、その手を握る。
その瞬間。
松岡の胸が緑色に光り、発光球が浮き出た。
光の球は飛龍の胸へと吸い込まれる。
突如、強烈な光が飛龍から発し、あっという間に星男の姿に戻った。
「『鍵』をもらいました」
星男が笑顔で言った。
「あなたたち」
松岡が星男と文奈に微笑みかける。
「本当にありがとう」
深夜の星雲学園生徒会役員室。
闇の中に複数の影がある。
ただ1人、生徒会長席に座っている者が口を開いた。
「まさかこれほど倒されるとは」
女の美しい声。
女の影の前に立つ他の影たちに気まずい雰囲気が流れる。
立ち並ぶ影は3つ。




