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 本を受け取った星男が高速で読み始めた。


 星男の両眼がカッと輝く。


 そしてすぐに、その瞳が半分だけ閉じた。


 やたらと落ち着いた表情。


 まるで俗世のことなど完全に忘れ去ったようであった。


「銀河」


 川中島が言った。


「どちらにするか決めたか?」


「萌杉信々で」


 静かに星男が答えた。


「では俺が竜田玄々だな」


 川中島が右の口角を上げる。


 余裕が窺えた。


「今から俺たちは実際の戦いと全く同じ状況から勝負を始める」


 川中島が足下の景色を指す。


「俺は竜田玄々、お前は萌杉信々となって戦う。どちらかが敵の総大将を倒した時点で終了。俺が勝ったらお前は大人しく宇宙に帰る。俺が負けたら『神の力』…お前の言う『鍵』を渡す。それでいいな?」


「よかろう。始めよ」


 星男が言った。


 いつもの星男と全然、口調が違う。


「合戦」


 川中島が右手を挙げる。


 その手を一気に振り下ろした。


「スタート!!」




 気がつくと文奈は、周囲を木々に囲まれた森の中に立っていた。


 隣には星男が居る。


 そして。


 今や「神の空間」ではお馴染みとなった、のっぺらぼうたちが2人の前に大勢、整列していた。


 皆、戦国時代の鎧や胴当てを着ている。


「ええ!?」


 川中島の説明で何となくは理解していたが、実際に戦場の1人となってみると驚きが先に立った。


 さらに文奈を慌てさせたのは、自分も武将が着る甲冑(かっちゅう)をフルセットで装備していると気づいたからだ。


 隣の星男を見ると、やはり鎧を着けている。


 しかも何だかズバ抜けて目立つ格好良いデザインだ。


「ぎ、銀河くん、私も来ちゃってるよ!! 何で!?」


 星男が文奈に顔を向けた。


 ゆっくりと口を開く。


「奥よ」


「お、奥!?」


「落ち着くのだ。これより我らの命を懸けた(いくさ)ぞ」


「ぎ、銀河くん、キャラ変したの!?」




 川中島は自軍の陣幕の中、甲冑に身を包みどっかりと腰を下ろし、軍配を右手に持って左手のひらにポンポンと当てながら考えを巡らせた。


 日本史教師、川中島信彦の知るこの戦いの概要は。


 ある日の昼頃「ぽん酢城」に籠る1300の竜田勢に対し、萌杉の兵1300が対峙した。


 萌杉信々の神がかった采配を知る城方は、そのまま籠城を選択する。


 時が経てば本城より竜田玄々率いる本隊が現れる。


 そうなれば萌杉勢を挟撃できるだろう。


 実際、この判断は正しく、すでに竜田玄々は800の軍勢を率いて「ぽん酢城」へと向かっていた。


 見張りの報告によって竜田の援軍の動きを知った萌杉信々は、全軍で「ぽん酢城」からやや離れた山の山頂へと移動する。



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