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「わ!! そんな食べ方したらソフトが落ちちゃうよ! 優しく舐めないと」
しかし、時すでに遅し。
星男の口の周りはソフトクリームだらけになっていた。
「ほらー」
文奈が手を伸ばし人差し指で星男の口元のソフトクリームを拭った。
「子供みたいなんだから」
文奈が笑った。
(銀河くん、かわいい)
そう思った。
(あ。でも私は孔雀山くんを好きなはずなのに…)
文奈が首を横に振る。
孔雀山の美形な顔が頭に浮かぶ。
(最近、銀河くんといっしょに居ると…ドキドキしちゃうの…何でだろう?)
文奈の人差し指に付いたソフトクリームをジーっと見ていた星男が、突然パクッと食いついた。
文奈の指が星男に咥えられる。
「やだ!! 何するの、銀河くん!!」
「嫁の指に付いたソフトクリームを優しく舐めてます」
「こらーーーーっ!!」
「先生」
星男が言った。
放課後の職員室。
自分の席に座っている日本史教師、川中島信彦が首を後ろに回して星男を見た。
授業の後に星男に職員室に来るように告げたのは川中島だった。
「おお、来たか銀河。ん?」
川中島が怪訝な顔をした。
「お前は…紫じゃないか?」
星男の横に立つ文奈に気づいたからだ。
「あー」
文奈が困った顔をする。
「何といいますか…」
「何だ?」と川中島。
「銀河くん一人だと…心配なので…」
「アハハ!!」
川中島が笑った。
「おいおい、紫は銀河の保護者なのか?」
「保護者ではありません」
星男が言った。
「文奈さんは」
そこまで言った星男の口を文奈が右手でサッと塞いだ。
「面倒見が良い友達です」と文奈。
「ややこしいから、誰にでも『嫁』って言わないで」
文奈が星男の耳元で囁く。
星男がそれでも何か言おうとするのを文奈が押さえ込む。
「何だ、何だ。お前たち、えらく仲が良いな」
川中島が肩を揺らして笑う。
ようやく笑いが収まった川中島が、急に真顔になった。
「じゃあ、銀河の方を先に片づけるか」
言い終わると同時に川中島の全身が強烈な光を放つ。
「キャッ!!」
文奈が思わず瞳を閉じた。
再び眼を開けると。
そこは職員室ではなく、空中だった。
文奈、星男、そして川中島が青空に浮いているのだ。
下には緑の美しい森や丘や山が広がっている。




