33
「『鍵』をもらえました」
星男が言った。
豪雷同様に星男も足元がフラつく。
文奈がその身体を支えた。
文奈はまだもらい泣きしている。
「良かった…本当に良かった」
文奈がしきりに頷く。
いつの間にかピンク色の霧は消え、3人は校門の側へと戻っていた。
「宇宙人…」
豪雷が星男に言った。
「俺はお前が悪い奴だと思ってた…でも、そうじゃなかったんだな。俺の間違いに気づかせてくれて…ありがとう」
豪雷がペコリと頭を下げた。
「俺…あいつに…里村に連絡するよ。そして、ちゃんと謝る」
「うん、うん!!」
文奈がさらに激しく頷いた。
「それが良いです!! 大賛成です!!」
豪雷も頷く。
「宇宙嫁にも迷惑をかけてしまって…ごめん」
「ううう、宇宙嫁っ!?」
豪雷の言葉に文奈がガーンとなった。
「じゃあ帰ろう、宇宙嫁よ」と星男。
「私はそんな変な嫁じゃなーーーいっ!!」
日曜日の穏やかな午後。
紫家では昼食を終えた面々がくつろいでいた。
文奈と星男、そして文奈の父母の4人である。
リビングのソファーで新聞を読む父。
その前には文奈と星男がカーペットに座りテレビを観ている。
母がかわいらしい陶器のティーセットをテーブルの上に置いた。
「はい、紅茶ですよ」
文奈と星男がテーブルの側に来る。
「パパ」
「ああ」
母の呼びかけに父が新聞を畳んだ。
紅茶を一口飲んだ後、星男が口を開いた。
「文奈さん」
文奈を見つめる。
「お願いがあります」
「え!?」
今さら、改まった言い方をされ、文奈は戸惑った。
「ど、どうしたの、銀河くん?」
文奈が不安げに答える。
「ボクはコンビニというものに行ってみたいです」
「コンビニ?」
「はい。楽しそうなので実際に体験してみたくて」
「へー。銀河くんの星にはコンビニないの?」
「ボクの星では科学が大幅に進み多次元的なアプローチまで到達してます。地球のような物質世界はすでに過去のもの。この身体も」
星男が自分の胸を指した。
「地球に滞在するための仮の姿。入れ物に過ぎません」
「え!? 本当の銀河くんは違う姿なの?」
文奈が首を傾げる。
「すごい怖い姿だったらヤダな」
星男がガーンとなった。
「嫁に嫌われるピンチ!!」
「こら!!」
2人の会話を黙って聞いていた父が割って入った。
「文奈は銀河くんの嫁じゃないぞ!! 私の娘だ!!」
「いえ、ボクの嫁です!!」
星男と父が取っ組み合いを始めたので、文奈と母が2人を引き離した。




