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「もうやめてくれ」


 友達は泣いていた。


「俺はそんなこと望んじゃいない」


 豪雷はやっと我に返った。


 加害者の3人は転校し。


 友達も転校した。


 豪雷の心を形容し難い虚しさが満たした。


 しかし豪雷はそこから眼を逸らした。


 俺は間違っていない。


 正義を行っただけだ。


 俺はこれからも「神の力」で正義を貫く。


 だが今、星男の前でくず折れかける豪雷の脳裏に浮かぶのは、あのときの友達の泣き顔。


(何故だ…何故だ…何故なんだ!?)


「ぬああああっ!!」


 豪雷が気合いと共に立ち上がった。


「俺は『番長』として正義を守る!!」


 豪雷が右拳を振り上げた。


「おおおおおおおっ!!」


 うなりをあげる右拳が星男の顔面に突進する。


 やはり星男は避けない。


 猛烈な衝撃音。


 が。


 先ほどのパンチと違い、星男の上半身は全く動かない。


 豪雷のパンチは星男の顔面によって完全に受け止められた。


「何だ、その腑抜けた拳は!?」と星男。


 豪雷の拳が顔に当たったまま、星男が右拳を振りかぶった。


「豪雷ーーーーっ!!」


 星男が咆哮した。


「歯ぁ、食い縛れーーーっ!!」


 星男の拳が空を裂く。


 真正面から豪雷の顔面に叩き込まれた。


「うおおおおおっ!!」


 雄叫びと共に星男が右拳を振り抜く。


 その威力を耐え切れず、豪雷の身体が縦回転しながら後方へとぶっ飛んだ。


 尖った岩のひとつに豪雷が激突する。


 岩が粉々に砕け豪雷が砂煙の中に倒れた。


(ああ…)


 再び途切れそうになる意識。


(俺は…負ける…のか?)


 仰向けになった身体を起こそうとするが全く力が入らない。


 まるで自分の身体ではないかのようだ。


(俺は…間違っていたのか…?)


 泣いている友達の顔が、また浮かんできた。


(俺は…俺はお前を助けたかったんだ…)


 大の字に倒れた豪雷の足元に星男が立った。


「立てーーーっ!! 豪雷っ!!」


 星男が吼えた。


 が。


 豪雷は立てない。


 そして。


「俺の負けだ」


 豪雷が弱々しく言った。


 その瞳から涙が流れている。


 負けた悔しさではない。


 あのとき、友達の心情を理解せず自分勝手な正義を振りかざした己への自責の念からの涙であった。





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