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「さあ、続きを始めようぜ」と星男。
「お…おう」
豪雷が答える。
先ほどまでとはうって変わった星男のすさまじいオーラに、やや気圧されていた。
(な、何だと…俺としたことが…)
豪雷が唇を噛みしめる。
(俺は…俺はもう負けたくない!! 番長として正義を貫くには、この宇宙人に勝って追い返さなくては!!)
豪雷の全身に闘気が満ち満ちた。
「うおおおおおっ!!」
豪雷が叫ぶ。
「来い!!」
星男も叫んだ。
豪雷の右拳が振り上げられ、そこから星男の顔面に叩きつけられた。
これ以上ないほどのテレフォンパンチ。
が、星男はそれを1mmもかわさない。
心なし太くなった眉毛の険しい顔でモロに受け止めた。
ものすごい打撃音が響く。
「キャーーーーッ!!」
文奈が思わず眼を閉じ、悲鳴を上げる。
恐る恐る両眼を開けると。
豪雷のパンチによって星男の上半身は横に90度曲がっていたが。
しかし、踏ん張っていた。
強烈な豪雷の打撃をダウンせずに耐えきったのだ。
星男の上半身が元の位置に戻る。
「おおおおおーーーーっ!!」
今度は星男が雄叫びを上げた。
右拳を振りかぶる。
最大限に引き絞られた拳が、まるで大型の投石機から放たれる巨石の如く射出された。
やはりこれも格闘技の「か」の字も無い大振りの打撃。
しかし、豪雷もこれをかわさない。
歯を食い縛り右拳を迎える。
すさまじい打撃音と共に星男の拳が豪雷の左頬を正確に捉えた。
星男の勢いは止まらない。
豪雷の顔がひしゃげ、首がグルリと回った。
豪雷が両ひざを折って、その場にストンと倒れる。
その瞳は光を失い淀んでいた。
豪雷の脳が揺れ、見ている景色がグニャグニャとアメ細工のように歪む。
豪雷の意識は一瞬途切れたが、かろうじて再び繋がった。
過去の思い出がフラッシュバックする。
イジメられている友達。
しかし、自分には何も出来なかった。
友達を庇って自分もイジメられたらどうしよう…。
そう思うと恐ろしくて身体がすくむ。
見て見ぬふりをしていれば良い。
誰だって自分が大事だ。
自分だけを守ればいい。
しかし…。
ああ…こんな自分は嫌だ…大嫌いだ…。
俺に力があれば。
イジメてる奴らをものともしない力さえあれば。
奴らをボコボコにして友達を救ってやれるのに!!
力が欲しい!!
あいつらより強くなりたい!!
そう思っていた矢先に「神」が現れた。
「お前が欲しがっている力をやろう」
「神」は言った。
運命が変わった。
豪雷は加害者たちを徹底的に痛めつけた。
恐怖のどん底に突き落とした。
3人の加害者は泣きながら何度も謝罪したが、豪雷は許さなかった。
力で人を傷つけた報いを骨の髄まで分からせてやった。
怒りは際限なく広がり、豪雷は暴走した。
もはや3人を殺しても良いと思い始めていた。
こいつらは罪人だ!!
俺は正義を行っている!!
これは正当な罰だ!!
トドメの拳を振り上げた豪雷の前に立ち塞がった者が居た。
イジメられていた友達だった。




