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「ボクの嫁になってください!!」
あまり変わっていない言い直しに、石化し続けている文奈以外が「うーん…ん?」となった。
「いいか、銀河。ああいうことは他の人が居るところでは大声で言うな。2人きりなら構わないが…いや、紫が嫌がったらダメだが…まあ、ほどほどにしておけよ」
なかなか端正な顔立ちの痩せ型体型日本史教師、川中島が言った。
呆れ顔だ。
「………」
無言の星男。
「もういい、帰っていいぞ」と川中島。
爆弾発言により職員室で厳重注意を受けた星男は、ようやく解放された。
職員室のドアを開け、廊下に出た星男は階段を下りた。
そこで図書室から偶然、出てきた文奈とはち合わせる。
「あ」
文奈が下を向いた。
そりゃそうである。
朝一でとんでもないセクハラをぶちかましてきた、しかも今日知り合ったばかりの男子の顔をまともに見れる女子はそうは居ない。
今日の授業が、どれほど気まずかったことか。
星男が文奈に駆け寄る。
「文奈さん!!」
星男が大声で呼んだ。
「ぎ、銀河くん、声が大きいよ!」
「文奈さん」
星男が文奈の耳元で囁いた。
「やんっ! 近すぎ!!」
文奈が真っ赤になる。
「さっきは言葉を間違えてしまって。まだ翻訳機の調子が良くなくて」
星男がペコリと頭を下げた。
「君を一目で好きになりました。ボクの嫁になってください」
星男が大真面目な顔で言った。
「あ、あの…」
文奈が口を開く。
「結婚の話はいったん置いて…銀河くんは、その…ホントに宇宙から来たの?」
「はい、別の星から来ました。この星での任務を終えたら自分の星に帰ります。君を嫁として連れていきます」
「任務?」
星男の言う後半は無視して文奈が訊ねた。
星男と話していると、いちいち引っかかって先に進めない。
「はい。任務のためにこの星に来ました。任務の詳細は、まだ話せません」