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「むっ」


 豪雷の右手が文奈の寸前で止まる。


「何だ? お前は?」


 豪雷が首を傾げた。


「俺の『神の空間』には転校生しか入れないはずだぞ? 何故、女子がここに?」


 豪雷は明らかに動揺していた。


 あまり女子と話したことがないようだ。


「もうやめてください!!」


 文奈が叫ぶ。


 その瞳からポロポロと涙がこぼれ落ちている。


「こんなの勝負になってません!! これ以上、銀河くんを傷つけないで!!」


「ぐぬぬぬぬ」


 豪雷が、まださほど動いてもいないのに顔中に脂汗をかき、アゴから滴らせた。


「男と男の勝負を女子が邪魔するとは…いかん!! いかんぞ、これは!!」


 豪雷が文奈に右手の人差し指を突きつけた。


「部外者は引っ込んでろ!! これは男同士の神聖な勝負だぞ!!『神の力』を授かった俺と宇宙人銀河星男の1対1のケンカだ!!」


「文奈さんは…」


 涙を流す文奈の背後から、息も絶え絶えな声がした。


「銀河くん!!」


 文奈が振り返る。


 頭から血を流した銀河が両手を地面に着き、何とか上半身を起こしていた。


「文奈さんは…部外者じゃない」


 星男が言った。


「ボクの嫁です!!」




 エレナ・コヴァルスカを朝の戦いで退けた星男と文奈(文奈は戦ってないが)は、その日の下校までは平穏に過ごせた。


 エレナが泣きながら2年D組の教室を出ていく姿を目撃した生徒たちに「星男を巡る文奈とエレナの三角関係か?」と勘違いされかける一幕もあったが、ボーっとした星男の顔を見直した彼らは、すぐにその考えを頭から消したのだった。


「じゃあ銀河くん、家に帰ろう」


 期せずして星男とひとつ屋根の下で暮らすこととなった文奈が、学校カバンを手に言った。


 現状に戸惑いがないと言えば嘘になる。


 星男の言う「鍵」なる物がいくつあるのか?


 星男の任務とは何なのか?


 星男はいつ紫家から居なくなるのか?


 分からないことだらけである。


 だが、ひとつだけハッキリ言えるのは目の前の謎の宇宙人、銀河星男は恐ろしい侵略者には全く見えない。


 おかしな発言は多いが、けして悪い人間…いや宇宙人ではないと思われる。


 嫁うんぬんの恋愛要素は置いておくとしても、文奈は星男に好感を抱いていた。





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