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「あ!」


 文奈が声を上げた。


「じゃあ、前のときと同じ…エレナさんに撫で撫でしたのは…エレナさんのおばあさんじゃなくて…銀河くん…」


 文奈が顔を曇らせた。


 自分でもよく分からないが、何だかモヤモヤした。


「また、嫁のヤキモチか」


 星男が言った。


「嫁じゃありません!!」


 怒った文奈がふと気づくとピンク色の霧は晴れ、エレナが「神の空間」を造りだす前の、朝の2年D組の教室に戻っていた。


 星男の机に両手を着いたエレナの顔が下を向いている。


 まだ涙が止まらないようだ。


「『鍵』をもらったから、もう君の力は無くなった」


 星男がエレナに言った。


「そう…ですか…」


 エレナが顔を上げないまま、フラフラと教室から出ていく。


「エレナさん…立ち直って欲しいです」


 文奈が心配そうに言った。




「うおおおおーーーーーっ!!」


 星雲学園2年E組、豪雷龍二(ごうらいりゅうじ)の武術の「ぶ」の字も無い大振りの猛烈な右フックをこめかみにもろにくらって、星男の身体がコマのようにクルクル横回転しながら吹き飛んだ。


 豪雷の造りだした「神の空間」、荒涼とした大地にまばらに立つ尖った岩のひとつにぶつかり、粉々に粉砕してから星男の身体がようやく止まる。


 砂煙が収まると、うつ伏せに倒れた星男が現れた。


 身長2m近くある堂々たる体躯を進める豪雷が星男の側に仁王立つ。


 クセが強く逆立った髪。


 荒々しい眉。


 精悍で男らしい顔立ち。


 太い首。


 厚い胸板。


 ゴツゴツとした筋肉質な身体。


 (たくま)しい四肢。


 星雲学園の制服ではなく、昔のバンカラ学生の格好をしている。


 足に履いているのは木の下駄だ。


「どうしたーーーっ!!」


 豪雷が咆哮した。


「もう終わりか、転校生!!」


 倒れている星男をにらみつける。


「最初の一発でおネンネか!? ふざけるな!! 立て!! 立てよ、転校生!!」


 怒鳴りつつ、ピクリとも動かない星男に右手を伸ばす豪雷。


 その指が星男に届く前に、2人の間に我が身を飛び込ませた者が居た。


「もうやめて!!」


 小柄で、か細い体格の眼鏡女子、紫文奈である。

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