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 歪んでいた視界が一瞬で戻り、エレナが盤面を見つめる。


「ま…」


 エレナが言った。


「負けました…」


 消え入りそうな声。


 ゆっくりと星男に頭を下げた。


「やったー!!」


 文奈が大喜びしながら星男に駆け寄った。


 星男も立ち上がり、2人がハイタッチする。


「良かったね、銀河くん!!」


 文奈が星男の両手を自分の両手で握る。


「はい!!」


 星男が満面の笑みを見せた。


 唇を尖らせ「んー」と文奈に顔を近づける。


「イヤーーーーッ!!」


 文奈が星男の顔を両手で押し返す。


 星男の顔が潰れて変な表情になった。


「私が…負けるなんて…そんな…」


 顔面蒼白のエレナが呟く。


 がっくりと下を向いた。


 エレナの瞳からこぼれた涙が、ひざの上に置いた手の甲にポタポタと落ちる。


「ボクの勝ちだから、君の『鍵』はもらうね」


 星男がエレナに言った。


「あ!?」


 文奈が驚きの声を上げる。


 いつの間にか「神の空間」はピンク色の濃霧でいっぱいになっていた。


 星男と流星の野球対決で発生したものと同じ霧だと文奈は気づいた。


 文奈からは将棋盤の側に居る星男とエレナの姿が、かろうじて見える。


 突然、星男が眩しい光を発した。


「わ!!」


 文奈が眼を閉じる。


 しばらくして眼を開けると。


 星男の姿は無く、そこに1人の優しそうな70代外国人女性が立っていた。


 東欧の美しい民族衣装を着ている。


「エレナ」


 女性が項垂(うなだ)れているエレナに近づき、そっと抱きしめた。


「誰!?」と文奈。


「おばあちゃん」


 エレナが泣きだした。


「おばあちゃん!? エレナさんの?」


 文奈が戸惑う。


「私…頑張ったんだよ」


 エレナが祖母に抱きつく。


「ああ、分かってるよ。エレナはよく頑張った。おばあちゃんは知ってるともさ」


(あれ?)


 文奈は首を傾げた。


 エレナとその祖母が喋っている言葉は明らかに外国語なのに、何故か文奈には意味が日本語でも同時に聞こえてくるのだ。


 まるで同時通訳のようである。


 これはピンク色の霧の不思議な力なのか?


 エレナの祖母が孫の頭を優しく撫でた。


 すると。


 エレナの胸の辺りから緑色の発光体が出現し、祖母の胸へと吸い込まれた。


 エレナの祖母がゆっくりと孫から手を離す。


 立ち上がった。


 祖母の身体が眩しい光を放つ。


 一瞬で祖母は元の星男の姿に戻った。


「よし。『鍵』はもらえた」


 星男がニコッと笑う。

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