21
「さあ、諦めて勝負に戻りなさい。それとも降参ですか?」
エレナが勝ち誇るように言った。
「ボクは降参しない!!」
星男が元気良く答える。
「銀河くん、ちょっと待って!! スマホがダメなのは仕方ないよ。でも、この前みたいに本を探すから!!」と文奈。
文奈の言葉に星男が大きく頷く。
文奈は図書室の奥へと走った。
(将棋…将棋の本はあった!?)
必死に記憶を辿る。
度重なる状況変化で慌てていたが、本来、根っからの本好き少女紫文奈は図書室にあるほとんど全ての本の位置を大まかに把握はしているのだ。
(そうだ!! あの人の本があった!!)
文奈は1冊の本を手に取った。
「富士山相也 将棋界の風雲児」
富士山は最年少でプロとなった将棋界の若き天才である。
現在も若年でありながら怒濤の連勝記録を更新し続けている。
そのかわいらしいルックスから、将棋に詳しくない人々にも大人気となり、対局時に注文する「勝負めし」までが世間の注目の的となった。
対局中に勝ち筋を見つけた際に放つひと声「そうや!」のモノマネは大流行している。
文奈はこの本を読んではいない。
(でもこの人は間違いなくすごいはず)
文奈は本を手に「神の空間」に大急ぎで戻った。
「はい、銀河くん。この本を読んで!」
本を受け取った星男が猛スピードでページをめくる。
その両眼が強烈な光を放つ。
それも一瞬。
星男の顔がめちゃくちゃ賢そうになった。
「嫁よ」
星男が言った。
「嫁じゃないよ」と諭すように文奈。
「ボクが勝つのを見ててくれ」
「う、うん」
文奈が少し不安げに頷く。
テーブルの向こうに行き、2人ののっぺらぼうの間に座った。
それを確認してから星男が将棋盤の前に座る。
エレナと再び対峙した。
「やっと覚悟を決めましたね」
エレナが言った。
「あなたの星に帰ってください」
「いいえ」
星男が首を横に振った。
「『鍵』を渡してもらいます」
「ううう…」
エレナの口から絞り出すようなうめき声が洩れた。
青ざめた顔から脂汗が滴り落ちる。
(こんな…バカな…)




