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しばらく後、おそるおそる眼を開けると。
文奈は恐ろしく広い畳敷きの部屋に立っていた。
「やっぱり!!」
文奈が天を仰ぐ。
「また変な場所に来てる!!」
文奈の前には低く細長いテーブルが置かれ、その向こうに将棋盤を挟み星男とエレナが相対している。
「どうぞお座りください」
左右に座った人物の1人に声をかけられた文奈がそちらを見ると、相手には顔が無かった。
(野球のときと同じ!)
「お座りください」
のっぺらぼうにもう一度促され、文奈は渋々テーブルの前に正座した。
「勝負は将棋」
エレナが星男に言った。
「平手で打ちます。ただし3局のうち1局でもあなたが勝てば私の負け。それでよろしいですか?」
「はい」
星男が爽やかに答えた。
(ええ!? 銀河くん、また安請け合いして…将棋したことあるのかな?)
文奈がヤキモキする。
そしてあっさりと1局目が終わり、そのままの流れで2局目に突入。
「あなたの負けですよ」
1局目のリプレイ映像のようにエレナが言った。
「では最後の1局…」
エレナが前回同様、駒を並べようとする。
「ちょっ、ちょっと待って!!」
文奈がたまりかねて立ち上がった。
テーブルの外を回って将棋盤の前まで来る。
エレナが文奈に顔を向けた。
「さっきから気にはなってましたが…あなたは誰ですか? どうして私の『神の空間』に?」とエレナ。
「文奈さんはボクの嫁です」
星男が笑顔で言う。
「嫁…嫁ですか?」
エレナが戸惑いを顔に出す。
「私はまだ嫁じゃありません!!」
文奈が否定する。
「そうなのですか?」
「いえ、文奈さんはボクの嫁です」
「もう!! とりあえず嫁の話は保留! エレナさん!」
文奈がエレナの顔を指した。
「あなたは将棋がものすごく強いのでは?」
「ええ」
エレナが頷く。
「私は奨励会に所属しています」
「しょ、奨励会!!」
文奈がたじろいだ。
「それってプロやプロを目指してる人が入ってる会じゃないですか?」
「そうです」
エレナが眼鏡をククッと上げる。
「何か問題でも?」
「大問題です!!」
文奈が星男に向く。
「無理だよ、銀河くん! この人に将棋で勝てるわけない!! こんなの勝負になってないよ!!」
文奈が星男の手を掴み立たせる。




