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「ぐぬぬ…」
父が悔しそうにうめく。
謎の敗北感。
「もう!! 銀河くん、今日は自分の家に帰ってよ!!」と文奈。
「まあ」
母が言った。
「銀河くん、泊まっていってくれてもかまわないのよ」
「「ママ!!」」
父と文奈が同時に怒る。
「ボクは」
星男が口を開いた。
その両眼が緑色の光を一瞬、放つ。
父と母の瞳にも緑の光が束の間、宿った。
「だから、嫁じゃないって言ってるのに!!」
「そうだ、結婚は絶対に認めんからな」
父が文奈の言葉に頷く。
「じゃあ、この話はこれで終わりだ。ママ、私はお風呂に入る」
「はい、パパ。文奈、洗い物を手伝って」
「ボクもおママ様を手伝います!!」
「わあ!! 本当に? とっても嬉しいわ」
ニッコリと微笑む母。
「ちょっ、ちょっと!!」
文奈が戸惑う。
「銀河くんは自分の家に帰ってよ!!」
「文奈」
父が言った。
「何を言ってるんだ?」
「え? だから…銀河くんは自分の家に」
「銀河くんはこの家に住んでるだろ。おかしなことを言うじゃないか」
「へ…?」
「そうよ、文奈。銀河くんの家はここじゃない」
母が笑いだす。
「ええ!? どうしちゃったの、パパ、ママ!?」
「銀河くんはずっと我が家にホームステイしてるじゃないか。何だ、今さら」
父の言葉に文奈は絶句した。
「文奈さん」
「やん!!」
耳元で星男に囁かれ、文奈がビクッとなる。
「文奈さん、ボクがここに住めるようにおパパ様とおママ様の記憶を変更させてもらいました」
「ええ!?」
文奈が驚く。
「そ、そんなことも出来るの!?」
「はい。ボクの星ではデフォルトの能力です。もちろん、精神分野が遅れているこの星の人々だから効果があるのですが」
「ええ…」
文奈がおののく。
「ちょ、ちょっと待って!!」
「はい?」
「それなら銀河くんは私の記憶をいじって『銀河くんを好き』って思い込ませることも出来るの…?」
「出来ます。でも」
星男がニコッと笑った。
「ボクはそれはしません。文奈さんには本当にボクを好きになって欲しいから」
キュン。
(ええ!? な…なんで!? 私、ドキドキしてるの!?)
文奈の顔が真っ赤に染まった。
星雲学園の生徒会役員室。
電気もついていない闇の中、複数の影が居る。
「流星が負けたそうね」
女の美しい声。
他の影は全員立っているが、この影は生徒会長の席に腰かけていた。
「力も奪われたようです」
答えた男の顔を窓から入る月明かりが映し出す。
それは日本史教師、川中島信彦の顔だった。




