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父の全身から冷や汗が、どっと噴き出す。
慌てて振り返った父の顔を母の光る両眼がにらみつけた。
「カレーの準備が出来てるの」
母の低い声が響く。
父と文奈は息を飲んだ。
まるで蛇ににらまれたカエルだ。
星男は空気が読めないため、平気な顔をしている。
「あ…ああ…そうか!! 今日はカレーか!! ママのカレーは世界一、いや宇宙一美味しいからな!! な、そうだろ、文奈!?」
「うん、うん!! ママのカレーはすごく美味しいよ!!」
文奈が高速で頷く。
「話は後にしてママのカレーを食べよう!!」
父の言葉を聞いた母の顔がパッと晴れやかになった。
「嬉しい!! じゃあ、みんなで食べましょう!!」
母がキッチンに戻りカレーのご飯を皿によそいだす。
父と文奈はホッと胸を撫で下ろした。
父が顔の汗を拭う。
「銀河くんとやら」
「はい」
「文奈の話はカレーを食べた後で、ゆっくりと聞こうじゃないか」
「文奈さんはボクの」
星男がそこまで言ったところで、文奈の両手がその口を塞いだ。
「さて」
父が言った。
母の自慢のカレーを皆で食べ、ペロリと2杯を平らげた星男を見た母の「やっぱり男の子は食べっぷりが良くて嬉しくなるわね!」に父が「負けんぞ!!」と謎の対抗心を燃やす一悶着があった後である。
「さっきの話の続きだが」
正面に座る星男を再びにらみつける。
「文奈との交際は認めん! ましてや嫁などと!!」
「おパパ様、文奈さんは」
「だから!!」
父と星男の会話に文奈が割って入った。
「私は銀河くんと付き合いたいと思ってません!! 結婚もしません!!」
「ええ!?」
驚く星男。
「『ええ!?』じゃない!!」
「ふははははははっ!!」
父が笑いだした。
「聞いたか、銀河くんとやら!!」
立ち上がり、星男を見下ろす。
「君はどうやら完全にフラれたようだな!!」
「ふははははははっ!!」
何故か星男も笑いだした。
ガバッと立ち上がり父と顔を突き合わせる。
単純に父のマネをしただけで、もちろん深い意味はない。




