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巨大な野球場。
満員の観客。
大歓声をあげてはいるが、その顔は全員タマゴのようにツルンとしたのっぺらぼうだった。
ユニフォーム姿でマウンドに立つ1人の男。
私立高校星雲学園2年C組。
流星兵馬。
野球部のエースである。
ホームベースの後ろに座るキャッチャーを見つめる。
キャッチャーにも顔が無い。
流星がボールを右手に握り、前に突き出した。
「次で終わりだ!!」
バッターボックスには制服姿のひょろりとした男子学生。
2年D組、銀河星男。
あっさりとした顔立ちに半分まぶたの閉じた眠たげな両眼。
ボサボサの髪は青色がかっている。
今日、転校してきたばかりだ。
ヘルメットを被り、バットを持っている。
おそろしくセンスのない構えで立っていた。
これでは、おそらく打てない。
否、絶対に打てない。
「ちょっと待って!!」
1塁側のベンチから1人の女子生徒が駆け寄ってきた。
2年D組図書委員、紫文奈。
髪型はショートボブ。
黒ぶちの眼鏡っ娘。
小柄。
あまりに地味で大人しい性格ゆえにクラスの誰1人として気づいていないが、実はかなりかわいい。
「何だ!? 男同士の勝負の邪魔をするな!」
流星が怒った。
「こんなの勝負じゃないよ!!」
文奈が言い返す。
尋常ではない勝負の不公平さに、さすがの内気な彼女も声を荒げた。
「銀河くん!!」
文奈が星男の前に立つ。
「野球したことあるの?」
「この星のベーシックな知識は頭に入ってます」
星男が言った。
「このままじゃ負けちゃうよ! それでもいいの?」
「ボクは勝ちたい。勝って任務を果たす。そして君を」
星男の顔がキリッとした。
話は今朝へと遡る。
星雲学園2年D組、朝のホームルームに転校生、銀河星男は現れた。