君と共に添い遂げたい
私は特に才の無い平凡な日本国民である。社会人となってからは月曜日から土曜日にかけ仕事に行き、日曜日には休日を貰うと言う毎日。
そんな代わり映えのない毎日ではあるが、私にとってはかけがえのない毎日だ。何故なら私には、愛しい妻がいるのだから…。
今日も今日とて夜遅くまで働いた。仕事が出来るから、会社がブラックだからと言うわけではない。単に私の器量が悪く、ノルマを達成するために残業してしまうのだ。
周りからは仕事が出来ないのに給料が多く貰えて良いな。などと皮肉を言われてしまう。これには私も苦笑いだ。何も好き好んで残業などしていないと言うのに…。
「ただいまー。」と私は家のドアを開ける。家、と言ってもマンションであり、そこまで広くもなくギリギリ2人が暮らせるほどの広さだ。玄関からリビングに向けては1、2メートル程の長さがあり、ドアがある。そのドアがガチャっと音を鳴らした。
「お帰りなさい!今日も遅かったわね〜。毎度毎度こんな時間に帰って来られると、何かあったんじゃないかって気が気でないわ!私のハートはガラス細工で出来てるんだから。」
ドアが開かれたと共に、妻が腰に手を当てて不満そうな顔をしつつマシンガンのように言の葉を打つ。
「いやいや。心がガラス細工で出来ているなら、マンボウの着ぐるみを着ながらゴミ捨てなんか行かないだろ?」
妻は時々可笑しな行動をとる。エンターテイナーと言うべきなのか、普段から無表情で愛想笑いしかしない私を斜め上以上の発想と大胆な行動で笑かしにくるのだ。お陰様で1日に笑わない日はなく、前など妻の発想が移ってしまったのだろう。無表情で「ストッキングが薄い女性は欲求不満だ。やれるぞ。」などと口走ってしまった。普段から下ネタ連発の同僚も、これにはドン引きである。
「ピカ○ュウとか、ハ○太郎とかの寝巻きを着る人だっているじゃない?それが私の場合はマンボウなだけよ!別に変ではないわ!」
などと犯人(妻)は意味不明な証言を決め顔で申しており…いや本当、勘弁して欲しい。朝起きると横にマンボウが寝てるんだぞ。とんだ朝チュンだよホント。
「そんなことより疲れてるでしょ?鞄待つわよ!私って出来る妻ね!」
「おっしゃる通りですお代官様。」ハハーッ
「うむうむ、苦しゅうない。」
いや本当、私には勿体ない妻である。
「あっ、そうだわ!お風呂も洗ってあるし、ご飯も温めるだけなのだけれど…。」
む?これはまさか…!
「ご飯にする?お風呂にする?それとも…わ・た・し?」
「もちろん、わ・た・し。」
「キャーッ!」
「と言うのは半分冗談で。ご飯にするよ。君のことだから、待っててくれたんだろ?」
「そんなことないわよ?据え膳食わずは何とやら!バッチしつまみ食いしてやったわ!」
「また太るよ?」
「胸が?」
「お腹が。」
「やだ私の旦那ってば辛辣過ぎ⁉︎」
「全くもう…。」
人によっては疲れるタイプの妻だろう。でも私にとっては、こんな軽口を叩いてふざけ合える妻が愛おしい。私は幸せ者である。