第3話 多くの人の願い
「別の人の願い?どういうことだ?」
「言っただろう。多くの人の願いを叶えるために天使はあらわれるんだって。お前の願いは叶えてやった。今度はお前が不幸のどん底に叩き落とした人たちの願いを叶える番だ。」
天使は気味の悪い声で笑うと、大きなハンマーを片手に近寄ってきた。
「ハンマーで全身の隅々まで叩き潰して殺す。これはお前が殴り殺した部下の家族の願いだな。それから・・・」
403号は後ずさりした。
「肉を喰らう虫に全身を噛みちぎられてながら何日もかけて死ぬ。うん、うん。これもいいねぇ。命がいくつあっても足りないなぁ。」
「お、お前!なにをする気だ!」
「うーん。これはお前が最初に犠牲にした女の願いじゃないか。なになに」
「近寄るな!おい!!誰か!誰か来てくれ!!」
天使の顔から一切の表情が消えていく。冷徹とはまさにこの顔のことかと思うほど恐ろしい気配を漂わせ、ハンマーを片手にした天使が歩み寄ってくる。
思わず腰を抜かした403号は、這いずって逃げようとする。その403号の右足にむかって、天使がハンマーを叩きつけた。右足は瞬時に骨ごと粉砕された。
「あぎぎぎぎぎ!!!んぐぐぐぐぐぐ」
「あぁ!いい音だぁ。女の願い事はな。『死ねない体で永遠に苦しみぬけ』だってさ。たいへんだなぁ。みんなの願いを叶えるのは。ははは!さぁ今度は左足だ!」
さらに天使がハンマーをふりかぶった。その顔は悪魔そのものだった。