入学試験、Ⅵ
どうも、誄歌です
この会は一旦全員の名前を出すために書きました。
それでは、「デジリアルワールド」どうぞ( ゜д゜)ノ
眠たい!
眠気まで襲ってきたところで、それは聞こえた。
「うっぉぉぉぉぉぉお!!!!!!分かりやすかった、ありがとな!樹里!」
どうやら、セブンコードについて説明を受けていた薊の咆哮らしい。なんとも、うるさいものだ。
「……あれは、御愁傷様だな」
傍らに魂が抜けかけた菫の姿がある。
真っ白というか、生気を感じられない。
「なぁなぁ!セブンコードってすげぇんだな!」
大手を振って薊がこちらへ向かってくる。
他は遠目に見るだけで関わってくることはなかったというのに、
「子供か。常識だろ」
姉に膝枕をしてもらっていたのだが、興が覚めた。眠気も覚めた。
「……痛かった?」
「ちょっと痺れたかも。でも平気よ少しすれば立てるわ」
体格差的にも、本来は僕が膝枕をするべきなのだろうが甘えたかったから仕方がない。
「それまで僕が持つよ」
「そう。お願いするわ」
肩に左腕を回し、逆の手を膝下に通す。
立ち上がったところで、喚く薊が僕の前に立った。
「いや。もー!なんで知らなかったんだろうってくらい、知らなかったわ。参っちゃうね~」
「それだけ育てばその図体にもなろうな」
「え?なんて??」
「……ふむ」
嫌味のつもりで呟いたが、まさか聞こえなかったとは想定外だ。
「いや、なんでもない」
「そうか?」
「あぁ、それより大悟。聞きたいことがある。この壁また壊せると思うか?」
後ろの壁画を示す。これは先ほど僕たちが破壊したはずの壁だ。今は完全に直っており、罅の一つもない。
「……行けるとは思うけども、んー。いろいろと無理があるだろ。瓦礫も残ってるしよ」
「だよな。僕もそう思う」
それどころか、この壁の魔力を吸う量がとてつもないことも、僕たちが分かりきっていた。吸われた分だけ、壁の修復スピードが増していたことも。
「この壁は最終手段だとして考えておくべきね。他の道がないか探しましょう」
「「……あ」」
僕は肝心なことを忘れていた。薊も同じことを思い付いたらしく、口が空いている。
「玲羅、どうやってここに入ったの?」
そう、姉を含め四人が僕たちの前にここへ入っていたことだ。
「私?導きのルーン使ってそれにしたがって歩いて、気付いたらあの壁の前に居たわ。ここに入るために、ルーンを壁に描いたの。そして入った。しばらくしてあの三人が凜たち同様、壁を突き破って入ってきたわ」
「……そうなんだ」
一番乗りは姉のようだ。それに姉だけは他とは違う入り方をしている。
「因みに、出られるかはもう試してあるわ。結論は、わかるでしょう?」
と、言うことは既に出られるか検証済みで、出られなかったということになる。姉のルーンは絶対だ。それが駄目なら、不可能ということになる。
「入ることだけが可能な空間……これも、トラップ的なやつか?」
多分、内側からこの壁を破壊することも不可能かもしれない。姉は最終手段として取っておくべきだと言ったが、期待はしていないだろう。
「どうだかなぁ~。にしても、暇だな。出られねぇとなるとすることもねぇや」
薊の言葉は最もだった。することがない。
「とりあえず真ん中に集まりましょうか。これからのこと、話すべきじゃない?」
「……そうしようか、玲羅。大悟、呼び掛け頼む」
「おう、任せとけ。おーい、お前ら……!」
僕に背を向けた薊が大声で他のやつを呼ぶ。その背中を見て、ため息を吐きたくなる。
まったく、本当に無警戒な奴だ。
壁際にいた僕らが集まるのは一番遅かった。
だが、会話そのものはスムーズに行われ、結論がすぐに出た。
出口はない、と。
『……………………』
だからこそ、全員が黙り込んでいる。
無理もない、出口が見当たらないと結論が出た時点で、皆どうするべきかわからなくなったからだ。
「さ、出口がないならどうしようかねぇ」
が、沈黙を破ったのは不機嫌な蓮だった。彼女は毛先をクルクルといじりながらそっぽを向いている。
それに対して百合が申し訳ないように手をあげつつ、
「……自己紹介、する……?」
僕でもわかる。違う、そうじゃない。と。だが、当の本人はやる気に満ちており、なぜか進行役として抜擢された僕へ熱い視線を送ってきた。
「……他に意見は?」
仕方なく薊を指名。
「いいんじゃね?金髪はどう思う」
「そうね。今更だけどいいんじゃないかしら。することもないしねぇ。ミユ、貴女は?」
「…………」
「ミユも良いって言ってるわ。樹里、貴方は?」
「(待て、いつ言った?)」
「異論はない、進行役が決めろ」
と、薊、蓮、露草、菫の順に答える。
「これ僕より玲奈がやるべきだろ」
配役が間違っている気がしてならなかった。
明らかに一人、僕とコミュニケーションが取れないやつがいる。
「めんどくさいもの。で、どうなの。進・行・役・様?」
「……はぁ、ならいいんじゃないか。玲羅もいいでしょ?」
「私は、凜がいいならいいわよ」
「じゃあ、それで」
次のお題は決まった。
自己紹介。
きっと本来ならもっと前にするべきことだろうが、こんな状況だ。この際タイミングはいつでも構わない。
それに、出られないんじゃ試験の続きを、など言えたものではない。それが全員の周知の見解だった。
『………………』
が、結局全員下を向いたまま一言も話さない。順番を決めてないからだ。
ここは、押し付けられた進行役として、僕が決めるしかないだろう。
「ほのり、言い出しっぺだ。頼んだ、あとは時計回りに」
「……はーい。えー、ほのりの名前は、百合ほのり!訳あって高校の入学試験を受けてますが、実は一二歳です!あー、読モやってます!よろしくお願いします……?これでいいのかな」
「……お、そうだったの?」
薊が反応したため僕は黙ったが、同じ気持ちだった。年下だったとは、思いもしなかった。それに、今時「読モ」という職業をやっているとは、珍しいと言えるだろう。
「ま、次は俺か。俺は薊大悟だ。大好きなのは筋トレと寝ることだな。歳は一五。よろしくな!」
百合の返答を待つのかとも思ったが、薊が先に始めた。どうやら、一方的に言うだけで良いらしい。
「橘凜。特になし」
「橘玲羅よ。家事全般が好きね。あとは、そうね。編み物もたまにするわ」
「菫樹里だ、見ての通り視力が悪い。趣味は読書で、読むのは歴史物だ」
「私は蓮玲奈。私も特にないわ」
「…………………………」
最後の一人、蓮の隣の露草が黙った。
いや、こいつはずっとこうだ。
出会ってから声を聞いたことがない。
「だ、そうだ。これも速攻終わったな」
「……本当ねぇ」
「もー!みんなもっと話そうよー!」
僕の言葉に、蓮と百合が反応する。
だが、この様子ではこれ以上この話に花は咲かないだろう。
早々に会話から思考を切り離した僕は考える。
密室的なこの空間の有意義はなんなのか。
入り口はあるが出口がない。
壁の模様、ルーン、誰かからの言葉。
そして、配管らしきものとその中にある配線。とてもじゃないが関連性が感じられない。
「──お、なんだこれ」
「…………それは?」
薊が赤いなにかを拾うのを見て、僕は一旦思考をやめる。
それは花弁だった。赤い色の花びらが一枚目。
先程まではなかったものだ。
「……バラ、みてぇな匂いがするな」
「薔薇って、誰か校門から制服にでも付けてきたんじゃないの?この学校、ローズガーデンって名前だけあって薔薇が咲いていたでしょう」
蓮が得意気に語る。
そう言えば校舎まで両端が褐色と緑で彩られていた気がした。
風で舞う花びらで視界を赤色に染めたことも、思い出す。
「あり得なくはないが、それはないだろ。ここまで、そこの二人は少なくとも水でずぶ濡れ。それだけじゃなくとも戦闘をこなしているはずだ」
あれだけ動いて、ここまで残っているとは考えにくい。
薊から受け取り、花弁を手に持った、
「……っ、痛ってぇ」
瞬間。電流が迸ったような激痛が指先から走る。
意識が、揺らぐ感覚を、覚えた。
「凜、凜!しっかりしなさい、凜!」
「う…………っ、くっ……」
気づけば上を眺めている。
倒れたのか。
四肢の感覚は感じられない。
これは、一体──
気がつくと真っ白な空間に横たわっていた。
先程の空間とはまた別な感じだった。
「重いな。体がだるい」
しっかりと手は握れる。
上体も起こせた。
景色は、どこまでも白かった。
「一人──じゃあないみたいだな」
碧瞳を持つ人間がいた。
「目が覚めた?」
僕を見下ろす様に、立っている。
「覚めてるから会話をしている。…………ここは」
白すぎて角がわからない。
そもそもここはどこなのか。
「ここは私の世界よ。初めまして、貴方が一〇代目?」
目の前の女性は、聞き取れなくはないが、微妙にイントネーションに違和感があった。どこか、日本語を話せる外国人という印象を受ける。
「……他のみんなは」
「ここは私と貴方だけよ。他の人たちは貴方を心配しているわ」
頭上に楕円形の穴が開く。
そこに、上から覗く形で六人の様子が映る。
僕の身体もあるから、七人の様子か。
どうやら、ここは少し不思議な空間のようだ。
「お前は誰だ。なんでこうなっている」
「……ふふ、なんか。イレギュラーなことが起こっているみたいね。いいわ、説明してあげる。貴方は──」
銀髪の女性が回る。
髪がつられて靡き、ゆっくりと舞う。
「──一〇代目、セブンコードのセイバーよ」
「…………は?」
自慢げに頬笑む女性。
何を言うかと思えば、そんな戯れ言か。
あり得ない。
なぜなら、セブンコードになった者が現れてから次の代が誕生するまでは、二〇〇年という月日がかかると言われているからだ。
「お前、どんな手を使ったのかは知らないが、僕をここから出せ。出さないなら斬る」
九代目とされる人が産まれてからまだ六四年。
あと一三六年ほどある。
そんな嘘、誰でもわかるものだ。
「あら、知らないの?■■■■■のよ?あの子達」
「……なに?」
剣を出そうとブレザーのポケット。ズボンのポケットを探すが、ドライブが見つからない。それどころか、魔力が自分の体から感じられなかった。
通りで、体が重いはずだ。
「待て、どうなってる。お前の世界とは、どう言うことだ」
「……混乱するのもわかるけれども、まずは私の名前。アーニャよ、橘リンくん?」
「凜だ。……わかった。落ち着こう。順を追って説明してくれ」
ペースが狂わせられる。
しかし、確かに情報整理は大切だろう。
「貴方、人の説明を聞こうとしないくせに、困ったら素直になるのね。いいケドね」
「コードも魔力も武器もないんでは、抵抗できないからな。まずは話すさ」
「……私はここ、ローズガーデンの守護霊のようなものよ。元は普通の人間だったんだけどね。私の世界、これは意識だけの世界。貴方の夢のようなものだけど、主導権は私にあるわ」
複雑な気分になった。魔力を持つ人間は、霊的なものを信じていない。なんせデュエンデという怪物が存在しているからだ。人形のデュエンデだっている。それがそう見えた。と、結論が出てしまうからだ。
最も、魔力を持たない人は、霊や精霊などといった類いを信じている人もいるらしいが、
「で、その守護霊様がなんのようだ。一〇代目とか、なんの話だ」
「そうね、簡単に言えば、私は案内役。私の薔薇にセブンコードのリーダーに相応しい人が触れたらこっちへ連れてくるように仕込んでいたの。貴方が来たってことは私にとって“そういうこと”なのよ」
「それで一〇代目か」
「そういうこと。でも、貴方は不思議な人ね。うぅん。貴方以外も…………私は犯人がわかるけど、貴方に伝えることができないのね。ねぇ、■■■?」
「おい、最後何て言ったんだ。聞こえないぞ」
急に言葉が濁った。違う、さっきも聞こえない部分はあったんだ。ノイズが走ったような、違う音が被さるように。
「……肝心なところが貴方に伝えられないようになっているの。困ったものね。でも、これだけは教えてあげる。何度も言っているけど、貴方たち七人はセブンコードの一〇代目よ。これは、聞こえているでしょう」
途端、世界が揺れた。
頭上の穴を見ると、現実の皆が飛行型のなにかに襲われている。
デュエンデなのはわかるが、個体名がわからない。見たことのないタイプだ。
「待て、九代目が誕生してから二〇〇年は過ぎていない。なのになぜ一〇代目が存在する」
「……あら、自分の体が心配にならないのね」
「姉のルーンが刻まれている。ちょっとやそっとの攻撃では傷つか……っ。これは……」
アーニャが少し薄くなったと同時に僕の頬が少し切れる。
手の甲で拭うと血が出ていた。
「あれはガーディア。悪魔のデュエンデ。普通のデュエンデより遥かに強いわ。さすがに、焦るかな?」
「……姉を守らないといけない。ここから僕を出せ」
「駄目よ。説明がさ──」
「うるさい。出せといっている」
「ぐっぁ……。好戦…的、なのね」
一歩近づき、首を掴んだ手に力を込める。
折ることはできないが、絞めることなら可能だろう。
掴んだまま脚を払い、アーニャを床へ押し倒した。
暴れる腕を、膝で踏み込んで、抵抗させない。
「……魔力がなくても、人くらい殺せるさ」
手に力を込めた。白い肌の顔が赤くなっていく。
「…………ザン…ネ、ん」
が、一瞬で視界が赤くなった。
反射的に後ろへ下がる。
「……世界を守るヒーローとしては、向いていなさそうね。貴方は」
「……薔薇。それは、なんなんだ…!」
信じられなかった。今まで白いワンピースのような服を着ていたはずのアーニャが、赤いドレスを着ている。だからこそ、僕は右手を前に出した。
そこに、剣がないことが分かっていたのにも関わらずだ。
彼女は、得たいの知れないコードを保有している。
「………………」
アーニャの左腕が動く。
何かに腕を捕まれ、後ろ手に組まれる。
「…………これは」
「毒よ。私の薔薇には二種類の毒があるの。デュエンデと、人間に効く毒。貴方には人間用の毒、それもとびきりの猛毒を入れたわ」
脚に力が入らなくなり、顔面を打ち付けた。
若干、意識が飛びかける。
「……でも、勘違いしないで。貴方を守るための毒よ。貴方自身に害はないわ……それに」
グイッと顔を無理に上に向けられる。
顔が、近い。
「意外と私、貴方のような人嫌いじゃないの。強引過ぎるけど、あの人のようで」
「……っ」
「首を絞めた罰よ。またあとで来なさい。とりあえず、この場を切り抜けて。一〇代目」
強引なのはどっちだ。
薄れる意識のなか、触れられた唇。
毒を盛られた女に、されるとは考えてもいなかった。
──意識が覚醒した刹那、馬乗りのガーディアを殴った。
目を開けるとそこは現実の世界。
どこからか現れたガーディアに襲われている瞬間だった。
偶然、攻撃を防いだようだが、目の前の相手は既に第二陣の攻撃をしようとしている。流石に、素手であれを防ぐのは得策ではない。
「……玲羅!」
半身を起こして、姉の方へ転がる。
振り下ろされた爪が、床を抉った。
「凜、目が覚めたのね!」
姉は薊が護っているようで無傷だった。その薊自身は既にボロボロだったが、守ってくれたことは感謝するしかない。
「んな、凜!ほれ、受けとれ!」
「……チッ、ありがと!」
投げられた剣を受け取ろうと身を乗り出す。
同時に後ろに迫るガーディアを見据え、技を選ぶ。
出し惜しみをしている余裕は、ない。
「……っ!」
左足に力を込め、床を踏みしめる。
鞘ごと緑色のエフェクトに包まれる。
そのまま片手で剣を横へ振り回し、頭を弾く。
回避速度は、低いらしい。
剣を抜き、跳ね上げるように右腕をあげ、刀身を背中にピタリとつける。
鞘から色が抜ける。
代わりに、今度は、後ろの刀身だけが赤色に染まる。
これは打撃と斬撃を兼ね備えた技。
『ワールド・クラッシュ』。
僕が使える技の中で唯一の混合技だ。
魔力消費が少ないわりに、火力は出る。
頭だったそれを斬り飛ばし、残った胴体を蹴り飛ばす。
ガーディアの胴体が四散した。
ポリゴン片が、舞う。
「頭に核がある、頭を潰せ!」
核の位置を叫んでから、閃で姉のところへ跳んだ。
「玲羅、どうなってるの」
状況が掴めない。見えていたとはいえ、見たのは襲撃された直後から。
「貴方が倒れてから、どうにか出る方法を探そうってことになったのよ。その時、露草さんの矢を天井へ向けて射つことになって、そうしたら……」
「僕はどれくらい気を失ってた?」
「そうね、五分も倒れてないわ」
「なるほど、数は見る限り一〇〇は越えてるな……。辛くない?これ」
薊が受け止めたガーディアの頭を狙って、下から刺す。
「うぉ!?あ、ありがとな!」
「別に、それより角へ行くぞ。二人を守りながら四方八方守るのはきつい」
姉を抱き寄せ、『閃』を使う。
「あ、おい!ほのり、行くぞ!」
後で薊が拳を引き、突き出す動作を見た。先ほども見たが、どうやらそれは推進力を伴う、何らかの技らしい。
「で、どうするんだよ!策はあるのか!」
策なんてなかった。見たところ上から発生しているガーディアは、中心から広がるようにして降下している。壁際には居ないからこそ、角まで下がっただけだ。
「凜、露草さんと反対側へ行きなさい。他の二人には別の角へ行くよう指示して」
「でも、玲羅──」
「行きなさい!」
「……玲羅とほのりを任せた」
本当はずっとそばで守りたいが、この中で唯一姉を守っているのは薊だけだ。こいつになら、今だけは信用してもいい。
襲ってきた数体を一掃し、走る。
攻撃してわかったのは爪以外弱いということと、核を狙わなくても倒せるということだ。
「玲奈、角へ行け。露草は借りるぞ」
「っぇ!?」
露草の後ろから腰に腕を回し、持ち上げる。
「ちょ、凜!?あぁ、もう!樹里、あんた頑張りなさい!」
「えぇ!?嘘だろ──」
もちろん、許可なんて降りなくても連れていく気があった。
だから二人の会話は無視した。
後ろへ下がり、誰もいない角へ向かって走る。
露草は矢を番えたまま硬直していた。僕を、じっと見つめて固まっているが、
「……見てないで追っ手を射てくれ。アーチャーならこれくらい当てられるだろ」
「…………わかった」
初めての会話。
そして見事にこいつは片手で抱えられているという状況下でも、飛行体を射ぬく。
「流石だな。そして意外と可愛らしい声だ」
「なっ、お前も馬鹿にするのか!」
なるほど、無口な理由はそこか。
視界に複数の個体が写る。
改めてみると凶悪な顔をしていた。
牙は剥き出し、皮膚らしきものは青い。
おまけに翼は少しごつく、爪は強靭な強度で剣でも斬れないときた。
「別に、可愛らしいとは言葉通りの意味じゃない。比喩だ」
ガーディアの攻撃の間合いに入った。
横へ振られた爪を刃の腹で受け止め、後ろへ流す。回りながら体勢を変え、『スラッシュ』を発動させる。
「露草、他は任せる。他は、僕が斬る」
遠心力で威力を加速させた横一文字の一線。
前後二体の体が、上と下で別れ、頭上を構えたガーディアが露草の矢に貫かれ、宙で停まる。
僕は続けて『閃』を使い、前へ出た。
後で三体のガーディアが爆発し、ポリゴン片へとなった。
「…………無茶苦茶だ。お前の戦い方は」
「お前の視野よりはましだ」
正直真上の個体は見えていない。「他を任せる」とはブラフに過ぎなかった。仮にいた場合、こいつは射ぬ射てくれなかった可能性が高い。追っ手も頼んで初めてやったほどだ。
「コード故だ。……して、なんのようっ!?」
露草を壁に投げつけ、一歩引く。
「用はない。お前はそこから攻撃しろ。後ろの守りを心配する必要がなくていいだろう」
「……口頭で言えばいいものを。しかも投げるとはなんなんだ」
「すまん、想像より重くてな」
「ここで死ぬか、お前は!」
放たれた矢を剣の腹で反らした。
後ろにいたガーディアの羽に当たったらしく、足元まで転がってくる。
「ナイスショット。流石だな」
皮肉の一言を言ってから、脚を攻撃される前に核を刺す。
「……あとで覚えていろよ、橘弟」
なんで姉はこの布陣にしたのか。
それを考えながら次の襲撃に備えて、剣を構え直した。
「デジリアルワールド」どうでしたか?
多分次の話、もしくは次の次の会で「入学試験編」は終了となります(文字数的にも)
次は盛大に戦いを描きたいところです
それでは次の投稿で
感想、誤字脱字報告、等も待っておりますm(_ _)m