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デジリアルワールド   作者: 川端 誄歌
入学試験編
5/16

入学試験、Ⅴ

どうも、誄歌です。

週一投稿、もしかしたら週二に出来るかな?とか考えながら話を書いております



それでは、デジリアルワールドどうぞ( ゜д゜)ノ



この話で戦闘は描けなかった……

「…………………………」

小さな声で、凜がなにかを呟いた。

直後、彼の体から魔力が溢れた。

同時にコードに刻まれている技を発動させ、壁を狙う。

「(………そんな、薄い刀身じゃつけられる傷なんて無理があるんじゃ)」

次々に繰り出される突きは壁に小さな孔を穿つが、刺さることはなく弾かれている。

それは次の攻撃が当たる頃には消えていく。

それでは駄目だ。明らかに壁の修復力が、上回っている。

「………え?」

それでも、無言の気合いで彼は続ける。

孔は次第に大きさを増していった。

刀身から弾ける魔力の粒子は綺麗で、紅いためか私は花火を連想した。いや、本物を間近で見たことがなかったため、想像はさほど広がらなかった。が、こう言うものなのかと心が気持ちよくなった。

「…………っ!」

私の頬をちらりと照らした粒子は少しだけ髪を焦がした。それが、何だかとても懐かしい気がしないでもない。が唐突に終わりは訪れる。

連撃の最後の一撃は、一際力強く押し込まれ、武器から手を離した凜が私を抱き寄せて倒れ込む。

「大悟、これを殴れ!!」

「!!──スレッド』ッ!!」

散る火花。亀裂が走り、悲鳴をあげる壁。二つの武器が共鳴する。

交錯した二種類の煌めき、二重の赤が重なり、独特な朱色が色褪せた周囲を包み込んだ。

「……すごい…」

「砕けろぉぉぉぉぉぉおおおおお!!!!」

自然と出た私の感想は叫び声が重なったため、多分私にしか聞こえていないだろう。


──ドゴォオン!!!!!


壁に大穴が開き、私たちは大悟の推進力により、雪崩れ込む形で中にはいった。壁の破片とともに、しばらく転がり止まる。

「……うまく、いったな」

「ノープラン過ぎだ。危うく埋まるところだったぞ」

笑顔満点な大悟の言葉に、凜は悪態をつく。

それでも、私のことをそっと抱きしめていてくれたことに、私は少しだけ照れくさくなった。もとの年齢の差はある、身長の差も。しかし、それとは別の物を──

「……(うっ~!)」

──紅くなった頬は示していた。



貫通した壁の向こう。

後ろを振り返ると既に瓦礫によって退路は塞がれていた。

ぎりぎり、だと言えるだろう。

「……(とりあえず良かったわけだが)」

ここは最初に薊と出会った空間よりも遥かに広い。

天井も、見えない。

目を凝らすようにして薄暗い前を見て、僕たちはそこで考えもしなかった先客の姿を捉えた。

「……あ、あいつは試験前に話しかけてきたやつか」

背の小さな、金髪の少女がこちらを睨んでいた。若干部屋が暗いため顔の判別はできないが、魔力のおかげで判別がつく。

その側には眼鏡をかけた短髪の少年と、背の高い凜とした雰囲気の少女がいる。あの二人は初対面だ、魔力も知らない。

それとは反対側に一人、よく知った魔力を感知して僕は我慢ができなくなった。

「玲羅!!!」

目から自然と涙が出る。

起き上がりながら、必死に走った。

一〇メートルもない距離だったが、とてつもないほど遠く感じた。

だから、姉のもとにたどり着いた瞬間、膝を床につけて抱き寄せた。

懐かしい匂いが鼻腔を駆け抜ける。

頭を撫で、手に絡み付く髪の質が心地よく、いつまでも触れていたい気持ちになる。

「凜、お友達ができたのね」

「……別に。友達じゃない…………もん」

数時間ぶりの再開の一言がそれかと、少しがっかりした。

別の意味で泣きたい気持ちになった。が、今は再会できたことへ涙を惜しむことなく流そう。

「………………」

「よしよし。よく頑張ったね、お疲れ様。凜」

「……足りない」

「うふふ。甘えんぼさんね」

控えめな胸に頭を沈めた。

それに対して、玲羅が頭を撫でてくれる。

それだけで、僕は満足だった。

「……お取り込み中失礼?」

薊が来るまでは。

「なんだよ、来んな」

「いやぁ、だってあの三人の方行くのもなんか怖いしよ」

「それに忘れ物届けにきたのに、それはないよ~」

「だよなぁ~」

「……忘れ物…?」

スッと差し出されたものを見て、理解する。僕は、剣を置いたまま玲羅の元へ向かったようだ。

「…………ふん」

剣を奪い取り、鞘に納める。

「あらら?凜、限定解除したのね。私にはしてくれないのに……」

「玲羅が武器を持つ必要なんてないの。僕が守るんだから」

後で解除しなくてはな、と考えて改めて二人へ視線を向けた。

本当に、空気が読めないというか、なんというかだ。

睨み付けても去る気配はない。むしろ見守ってくる。

お前らは僕の両親かなにかか。

「ふ~ん。優しそうなお兄さんに、可愛らしい子ね。お人形さんみたい」

スッと玲羅の手が百合へ伸びる。

「ひゃっ!?」

玲羅は迷わず百合の頬へ触れ、滑るように唇へ触れる。

そしてそのまま──

「っ……噛まなくても、良いじゃない」

「そ、そりゃ急に口の中に指を入れるからでしょう!?なに考えてるんですか!」

猫のように、カチューシャの耳を立てて、薊の後ろへ百合は隠れた。僕も、流石に驚きはした。初対面の人へ玲羅がそんなことをするとは、考えていなかったからだ。

「お、おぉ……姉弟ってだけあってどこか似てるのな」

「(誤解を生むようなこと言うな。僕はお前になにもしてないだろ)」

「んー?貴方、名前はなんて言うの?……私の名前は、凜から聞いているでしょう?」

百合へ出した手とは逆の手を差し出して、玲羅は握手を薊に促していた。

薊は苦笑いしながらもしっかりとその手を握る。

「俺は薊大悟。そして後ろのこいつは百合ほのり。凜の親友で仲間です。姉貴」

「……あね、き……?」

「うっす!今日からそう呼ばせてください!」

「……馴れ馴れしいぞ、大悟。玲羅は──」

「……素敵ね。弟が増えた気分だわ。これからも、うちの弟を可愛がってくださいな、大悟くん。ほのりちゃん」

玲羅が僕から離れて、くるりと回る。

上がったスカートの端を摘まむと、少し脚を曲げてペコリと会釈した。

「……むぅ」

今日の姉は機嫌が良いらしい。

いつものテンションより少し高めだ。

正直、薊の馴れ馴れしさに腹が立つが、玲羅が良いなら僕は構わなかった。

優先は玲羅の気持ちだ。

僕のことはどうでもいい。

「なにあれ、きっもちわるい。貴方、強いくせに女々しいのね」

怨み語のように呟かれた言葉が、遠くから聞こえる。

「……なんだ。蓮玲奈だったか。ロードがなんのようだ」

金髪の目付きの鋭い少女を見た。

彼女とは、少しだけ面識がある。

「あら、覚えてくれたの?振った女の子とを、ね……」

「ふ、振った!?おま、凜!告白されてたんか!」

薊が鼻息を荒くして肩を掴んでくる。こいつは、単純というか、人を騙せない人種なのではないだろうか。

「違う。交際の話ではなく、手を組めと試験前に言われたんだ。……仮に交際でも、振るけどな」

僕の返答に蓮は薄く微笑んだ。

わざと紛らわしい言い方をしたであろう彼女に、苛立ちを覚える。

「……なにをがっかりしているんだ、大悟」

「いや、なんか。……ごめん」

「なんなんだ……」

男子中学生というのは、こうも面倒なものなんだろうか。

色恋沙汰や下着程度で興奮するとは、やれやれだ。

「……まぁ、今から付き合ってくれても良いのよ?騎・士・サ・マ」

あざとく唇に手をあて、こちらに向けてくる。

僕はそれに対して、インデクスを開眼させ対抗した。

「支配は効かないぞ。仮に僕を操りたいなら今の一〇〇倍強くなることだな」

「……魔力量だけで相手の技量を測らないことよ?ま、確かに貴方には効かないようだけどね。試験前に試したもの」

「ああ、知ってる。あれは虫酸が走った」

唐突に支配をかけられた時は、一瞬驚いたが、それで終わりだった。

ロードの使役には、条件がある。

自分より弱いことと、心を許してくれていること。

蓮にとって、僕はどちらも条件を満たしていなかったため、なにも起こらなかったということは明白だろう。

僕が驚いたのは、それでもかけてきた。ということではなく、僕に対して技を発動することができたという点だ。

さらに言えば、僕には玲羅のルーンがいくつもかけられており、大抵の支配系の技は効かないし、発動すら許されない。それをすり抜けたことが何よりも驚かされたのだ。

だから僕は、インデクスで蓮を観察した。僕は支配の合図がわかっていないのだ。また支配しようとしてきた場合、対処ができないと困る。あり得ないが、万が一にかけられる可能性があるからだ。彼女の行動の一つも逃さない。なにが合図かを知る必要がある。

「やめやめ。仲良くしよーぜ?とりあえずこれでも食べとけや」

隣の薊がなにかを三人へ向けて投げた。

眼鏡をかけた男が前へ出てそれを手刀で弾こうとして、受けとる。こいつが投げたのは飛び道具でもなく、ただのアメだ。

「……なにそれ」

「おう、アメだぜ。玲奈……だっけかうめぇから食っとけな。そこの二人もよ!」

蓮の台詞は、明らかに気持ち悪がっていたように聞こえたが、大悟自身はそう受け取っていないようだ。

「あ、姉貴もどうぞ。凜にも好評だったんで口にあうと思う」

「えぇ、有り難くもらうわ」

「……………ふむ」

精神的に疲れたところで蓮から目を離した。

インデクスの魔力消費は大きい。できればあまり不毛なことに使いたくはない。だが、せっかくだ。ついでにこの空間を眼で視てみよう。

この眼には全てが写る。少しの手掛かりくらいは、見つけられるのではないだろうか。

「……この空間、外からは一切視えなかった。中にいる玲羅たちの魔力すら感知できなかったし、……………………あの壁も直ってるしね」

ここは少し特別なようだ。隔離されている。という言葉が適切だろう。インデクスにもほぼなにも写らない。写るのは壁中に刻まれたルーンと先ほどの壁のみ。それ以外はなにもない。

「長方形の部屋に、七人か。大悟、七組の話、あいつ等にも聞いてきたらどうだ?」

眼を解いて、しゃがむ。

そしてまた姉に顔を押しつけた。

しばらくは、こうしていたい。

「…しゃーね。聞いてくらぁー。………おーい。あのさぁー」

薊はなにを言うわけでもなく、すぐに居なくなった。

百合は少し距離があるものの黙ってこちらを見ている。なんだか気まずそうに、忙しなく首を振っていた。薊についていけば、良かったものを、見送るからそうなるのだ。

「ほのりちゃんも来る?お姉さんが抱きしめてあげよっか」

そんな百合を見て、玲羅は微笑みながら手招きする。

「……別に、そう言う訳じゃ………………」

「あら、いいの?今なら───」

「……うっ。ま、迷うなぁ~?」

玲羅がなにやら小声で言ったらしい。

僕にはなにを言ったのかはわからないが、初対面で口に指を入れられたというのに、それでも迷えるとはどういうことなのか。やはり百合のメンタルは鋼より固い気がしてならない。

「……お、お邪魔しま…」

「おぉい!凜、ビッグニュースだぜ!このちっこいの七組について少し知ってるって!」

「うっ、?」

「……あら、ほのりちゃん。御預けね」

ぐりぐりっと顔を埋めてから立ち上がる。

少しだが満足はできた。

百合が後ろで涙目になっていたが、厄介そうだから触れないでおこう。

「……どんなことを?」

姉を抱き抱え、肩に乗せる。

「…………んと、凜次第で教えてくれるってよ」

「ほう……。おい、蓮。要求はなんだ、できる範囲なら応えるぞ」

薊と百合の前例がある。なんでもやると、言ってしまうわけにはいかない。

蓮は少し考えてから、悪い笑みで口許を歪ませた。心なしか目許も少し怖い。

「そうね……私に服従しなさい。そうしたら……」

「断る」

「即答ね。分かりきってたわ、そう言うと思ってたもの」

「ならはじめから言うな」

「だからこうしてあげましょう。もう一度私のことを下の名前で呼びなさい。できたら教えてあげる」

「………………」

嗚呼、こいつらは下の名で呼び合うことに飢えているのだろう。非常に厄介だ。いっそのこと斬ってしまおうか迷う。

「ふふふ、凜良かったじゃない。入学前に友人ができて」

上で姉が笑った。

だが僕は笑えない。

隣の薊は涙目で懇願してくる。その様子は、聖母マリアにお祈りする聖者のようだ。最も、こいつは宗教なんてオカルトをやるたちではないだろうがな。

「(あと一人や二人増えたところでかわりないか)……いいよ。玲奈、これでいいか」

「……………………えぇ、いいわ。私が知ってるのは、七組とセブンコードに繋がりがあるってこと、それだけよ」

「はぁ?」

割りに合わなかった。

やはり斬ろう。

「っと、凜落ち着こうぜ。あいつ斬ってもなにも解決しないからな?」

「……精神的に楽になるんだが」

まぁ、今はやめておこう。

柄から手を離し、姉の手を握る。

蓮を斬り捨てるのは簡単だが、このままでは姉が返り血で汚れてしま、

「……なぁ、それよりセブンコードってなに?」

『……えっ???』

薊の一言で相容れなさそうな全員が彼を見た。

こいつは本当に約一四年間、なにを学んで生きてきたんだ。

「薊くん、本当にわからないの?」

なぜか姉がオロオロと慌て始める。どうしていいのかわからない、という感じで両手が宙をさ迷っているため、これは本当に困っているようだ。

どうしよう、姉が可愛い。

「いやぁ、どっかで聞いた覚えはあるんだけど。わからんのだわさ」

こいつは本当に今まで鍛えて、食べて、寝て、を繰り返してたのではないだろうか。そうでもしない限り『セブンコード』のことさえ、忘れはしないだろう。

「……樹里。あのお馬鹿に教えてあげなさい。」

「……そうだな。おい、バーサーカー。名前を教えろ」

「ん?俺は薊大悟!よくコードがわかったな!」

樹里と呼ばれた眼鏡が、薊へ歩み寄る。

薊は誰に対しても明るい性格は貫き通すようだ。

僕には真似できない。

「菫樹里だ。コードはそのアクセサリーでわかる。それはあいつらの間で流行っているものだろう」

菫が邪険そうに薊のチェーンを指差した。なるほど、これはそういう類いのものだったのか。てっきり、メリケンサック的な使い方をするものだと認識していた。

「りーん。あれは武器的な扱いはしないものよ。普通は」

「そうなんだ?会ったときから思ってたんに」

「違う違う。あれはただのアクセサリー。武器じゃないわ」

クスクスと姉が笑う。楽しそうに笑みを浮かべる顔を見て、心が晴れた気分になる。

菫が薊へ説明をしている間、この空間をもっと詳しく調べるべく、姉と一緒に離れる。説明を聞いても良かったのだが、知っている知識を聞いたところで、なにも変わるとは思えないからだ。

去り際に菫が「書ける魔力ペンはないか」と、行く手を阻んだため、姉の所持品を一つ貸した。ルーンだからこそ、持っていたに等しいが、

「壁自体はただの岩……のようね」

「ルーンは?」

「沢山。盛り沢山。とてもじゃないけど、私には無理な芸当ね。しかもこれ、かなり古いわ」

ルーンの厄介な点。

それは前に言ったように個人によって発動が異なる以外にも、まだある。

今姉にはルーンが視えているが、僕には見えていない。

そう、ルーン同士じゃないと見抜けない様に出来るということだ。流石にインデクスを使えば、視えるが、普段から使うやつはそうそう居ない。だからこそ、わからない。

それともう一つ、一度書けば消されるまで残るということ。

「何千年も前にかかれたものかも……。呪式が単純。それこそ、『始まりの大戦』前後のものかもしれないわ」

「……始まりの大戦。七組は、本当にセブンコードと関わりあるのか…………?」

始まりの大戦。

今から二千年前にあったとされる世界の変革であり、七人の少年少女が挑んだとされる戦いだ。

セブンコードとは、呼び方には地方によって異なり、一概には言えないが『始まりのコード』と共通認識がある。

能力は僕たちの七つあるコードと変わらない。変わるのは、それぞれのコードの頂点に立つということだけ。諸説では一人で同じコード一〇〇〇人以上分の力を誇ると言われている。まさに一騎当千の具現化と言えるだろう。

「その時代の産物ってことは、もしかしたら初代が残したものって可能性もあるのね。ふーんロマンがあるじゃない」

「……なんのようだ、玲奈」

「あら、いいじゃない。私だって調べたいのよ。ねぇ、ミユ?」

「………………」

後ろに現れた蓮が、無口な女を連れて壁を睨んでいた。

無口なやつは背が高い。

蓮と並ぶとさらにそれが際立つ。

「彼女は露草未夢よ。私の友達なの」

「別に聞いてない」

「熱心にミユのこと見てたじゃない。……もしかして大きい方が好きなの?」

身長の差を見てた。と、言おうとしてから姉も背が小さいことが、過る。普段、何気なく肩に乗せたりしているが、その事をいじると姉は拗ねる。しかも、この中で一番背が小さいはずだ。

どう見ても全員、一三八センチ以上はある。

その姿も可愛いとはいえ、今ここで拗ねられて捜索できなくなっても困るのは僕だ。

勘違いさせたままの方が、マシかもしれない。と、思考した僕は、

「あ、うん。そりゃ胸は大きい方が好きでしょ。寝やすそう」

と、思ってもいないことを言う。

瞬間、露草が一歩下がり、無表情のまま豊満な胸を押さえて平手打ちをかましてくれる。幸いなことは背中にしてきたということか。ちょっと痛かったが、支障はない。

蓮はなにを思ったのか青ざめている。たしかに、こいつは俗にいうまない──

「皆までいうと貴方でも殺すわよ、凜」

─だから、かもしれない。

流石に触れないであげよう。姉にも、女子に対しての接し方は気を付けるよう言われている。

「力量が足元にも及ばない癖に、良く吠え……ん?」

視線を蓮の奥へ向けると、岩から突き出ている筒状のものを見つける。

「な、なによ。私になんかっ!?」

「用はない。玲羅、これ……」

頬を赤らめた蓮の肩を掴み、退かせる。大方、見つめられたとでも思ったのだろう。

筒状のものは配管らしく、中に切れたケーブルが見える。

「埃を被ってるとはいえ、綺麗に切断されてるのはわかる。……セイバーか?……それより、何でここにこんなものが?」

「…………もともと施設だったのかも。あの壁の周りには抉られたような形で作られた壁が残ってるのに、他の場所は岩肌が出て、ルーンだけ刻まれてる……。初代たちは、ここでなにをしていたの……?」

考えれば考えるほど、謎は深まるばかりだった。

なぜ、このような空間を作る必要があったのだろう。仮に施設だとしても、ここまで迷路チックにする必要があるだろうか。これではまるで、攪乱させるための道のように思える。

僕たちは始めからバラバラにここへ飛ばされている。だからただゴールへ向かうわけだが、あの入り口から、もしここまで向かうとしたら。何度も分かれ道に悩まされることになる。

「…………ここは、なんなんだ」

「…あ、これってなにかな?」

考えが行き詰まったところで、百合の声が空間に響いた。彼女の目の前には、岩自体に描かれた模様がある。

「……あら、それって…………」

「あ、玲羅っ」

姉がピョンっと肩から降りた。

「待ってよ、玲羅!」

慌てて僕も追いかける。遠目に見ても、意味を成しているとは思えない。

いや、近づいてみても、上手いとはお世辞にも思えなかった。線は雑で、刃物で書いたと思われるそれは、大きいものでもない。僕の背より、少し低い位置に書かれている。

絵というよりは、言葉だろうか。

「……ふっふふ………………、……」

長年の風化により所々崩れているだけでなく、そもそも欠けていて読めたものではない。と、考えていた直後だった。背伸びをして姉が文字を見て、笑い出し、ボソボソとなにかを呟く。

「読めるの?」

「えぇ、少しだけね。『未来を託す』ですって」

文字使いだからか、姉にはこれが読めるらしい。僕には、どう見ても雑な斬り込みにしか見えない。それに『未来を託す』とはどういうことなのだろうか。

「それって誰からの言葉?」

「まだ、教えてあげない。でも、私たちにとって、とても勿体ない言葉よ」

「ふーん。ほのり、わからないのはもやっとするなぁ」

「ミユは読めないの?」

「………………」

「そ、……もう少し話す努力をしなさいな」

「…………」

ざわざわとギャラリーが湧く。鬱陶しい。

「あら、凜っ」

僕は姉を持ち上げて離れた。

「どうしたの、凜。なにか嫌なことでもあった??」

「……別に、そうじゃない」

「……苦手だものね。人と接するの」

僕は姉を守る力だけが欲しかった。

そのために強くなった。

他は知らない。

「距離感って大事だよね」

「あの子達はぐいぐいくるタイプだったのね~、凜が疲れるなんて珍しい」

端まで下がり続けた僕は、姉を降ろして腰を下ろした。文字に夢中の今なら、流石にここまで追ってくることはないだろう。

「大切にしなさい。友達は一生ものよ」

姉は笑顔だった。

それでいて真剣だった。

優しかった。

「玲羅、僕は玲羅だけを守るために強くなった。僕の両腕は一人しか守れない。他の誰かを『大切』だなんて考えたくないんだよ」

「凜…………」

「あの二人と一緒にいて、疲れたんだ。男は馬鹿だし。女子は強いコードの癖に使いこなせないらしくて、ずっと守られるだけだったし。その上全員初対面。なのに、背中を預けてくようなやつで、!?」

「はい、おしまい。私の顔を見なさい。貴方の悪い癖よ、暗くならないの」

姉に頬を摘ままれ、考えるのをやめた。僕にとって、それらを理解するにはまだ、時間が足りない。

「人間関係難しいよぉ~。姉ちゃん~」

甘えたい気持ちで一杯になった。

両腕を精一杯伸ばし、姉を抱き寄せる。

「よしよし。あと少ししたら、いつもの凜に戻りなさいな。家でも慰めてあげるから、ね?」

自覚はしている。

時々自分でも分からないほど深く考え込む瞬間がある。

「……ありがと。姉ちゃん」

だが、こうやって玲羅が頭を撫でてくれると段々落ち着いてくる。

「……いいのよ。私の可愛い弟。いくらでも甘えなさい」











デジリアルワールド、どうでしたか?

作者の中で主人公どうなってんねん。な感じかと存じ上げますが、実は元から姉の前では幼くなる。姉優先、姉大好きな弟くんとなっております。なんというか、彼は冷酷な人間でもあり、また一弟として、甘えたがり屋でもあるのです。

姉も姉で弟を甘やかす天才ですけどね。ちょっと変な一面もありますが……それは今後の話の展開に期待するとしましょう!(←誰目線?)



それでは次の投稿で

感想、誤字脱字報告等もどしどし待っておりますm(_ _)m


ps.間に合えば本日二本投稿致します

投稿する話は、デジリアルワールドです。

Zeroの方は少々時間がかかりそうで申し訳ないです……


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