入学試験、Ⅱ
こんばんは、誄歌です
全話書き直しを繰り返しているところです
案外、昔の自分の癖が気になりますね(笑)
では、どうぞ( ゜д゜)ノ
寝ます(切実)
「でな、この試験は裏の合格ルールがあるらしいんだよ」
「はぁ?」
戦闘を終え、姉を探す旨を伝えた僕は、薊を引き連れてさ迷っていた。
初めは軽い自己紹介から始まり、今は目的の話しになっている。
「その裏の合格ルールってなんだよ」
「いやぁ、ほら。何でもここって最高一学年六クラスだろ?……んで、普通の合格手段はゴールすっこと。そうするとAから順にクラスに割り振られてくって、やつやん?」
相槌をうちながら歩く足は止めない。
この学校は他の系列校と違い、入学試験がある意味で簡単だ。今僕たちがやっているように、ほぼ実践に近い状態で試験は行われ、終わる。人と戦い、実力を示す。そして迷路を脱出する。ペーパー試験はない。
「まぁ、それでもAはイメージ的に強いクラスって感じがあるよな。わざとBに行くやつらもたまにいるけどよ」
だが、ただ運が良いだけでゴールすることもないわけではない。実際、早くゴールすれば実力に関係なくクラスはAになる。仮に誰とも戦ってないとしてもだ。そのせいか、以前強い人がわざとにBに集まったという話しは、僕も知っている。
「あぁ、性格の悪いやつらだ」
そのため、その年は例外的にAとBのクラスを替えたらしい。
「…………してな?噂の合格方法があるんだよ。特殊クラス七組の話だ。俺はそれを確認したい」
「……(間はなんだったんだ)七組?その噂はどこ出なんだ?」
はじめて聞く噂だった。思わず足が止まる。
「あぁ、えぇっとな。俺は校門で聞いた。先輩だと思える人たちがな、笑いながらなんか言ってたんだよ。「今年は出るかなぁって」それで確かめたくなったわけよ」
「ずいぶん最近だな。で、方法とか、そんなのは聞いたのか?」
若干の呆れが入り、歩くのを再開する。とんだ信憑性の薄い話だった。一瞬でも興味を持ったのがバカらしく思える。
「んや、こっそりあとをつけて聞き耳たててたんだけど、方法とかは分からんかった。調べようにもなんも出てこなかったし。俺もただの噂なのかなぁと考えてたんだけど。確かめてみたいもんだろ?」
だが、当の本人は疑いつつも信じているようだ。
歩いてる道の先が三つに別れていた。
立ち止まり薊の方を見る。
「どっちへ行く?それともここで別れるか?」
左右と前を順に指差し、ヘラヘラと笑ってみせた。
「楽しそうだな~。あ、おい凜!そこに金髪女子いる」
「あ?あー、ほんとだな」
確かに金髪だった。目を離した隙に出てきたらしい。
カチューシャのようなものを頭に着けて、パーカーを着ている。
背は遠目に見ても小さい、まるで子供みたいだ。
彼女はキョロキョロと左右を確認していた。どうやら、この先も複数に道が別れてるらしい。
「ならとりあえず前の道は考えないとして左右のどっちかだな」
「え?合流しようぜ、一人みたいだしよ」
「お前はお気楽だな。もしそれが狙いで近づいたら集団に襲われる。なんてことになったらどうするつもりだ」
「でも俺らなら切り抜けられんだろ」
「どこから出る自信だそれ……」
一度も共闘をしたことがないというのに、薊は自信ありげに胸を張っていう。さっきの戦いは結局別々に戦って終わったんだ。互いに連携したわけではない。僕がこいつの戦闘スタイルを見たわけでもない。
薊は勝手に盗み見ていたらしいが、
「あ、でもあっちから来たぞ」
「えぇ?」
彼女の方を見直す。小柄な金髪の少女が、耳のついたカチューシャを揺らしながら走ってきていた。
なんだか、嫌な予感がする。
「よし、薊。お前は左、僕は右の道に行く。どこかで合流しよう」
「あ。おい凜!待てよ!」
急いで右へ曲がる。
正直倒してもこの際良かったのだが、小さい子供のようなやつを斬るのは若干罪悪感がある。
特に、姉の体型に近い女子を斬るのは。
そういえば、今頃姉はどうしているのだろうか。
姉に刻まれたルーンに変化がないことから、無事なのは分かるが、それでも不安だ。
一人で行動しているのだろうか。それとも、誰かと行動を共にしているのだろうか。
お、男と行動していたら…………あぁ、考えただけで震えてくる。
もしそうだったら礼を言って斬り捨ててやる、
「………絶対に」
考え事をしていた僕は後ろを振り返ることなく、右の道を突き進んだ。
「お前ほのりっていうのか~。俺は薊大悟、こいつは橘凜だ」
「大悟さん、よろしくね。……なんで凜さんはほのりのこと避けるのかな……?」
「さぁ、なんでだろうな。俺にもわからん」
僕は、突き進んだ。
「なんで着いてきたんだよ、薊」
が、薊が着いてきてしまった。
左へ行かず、小柄な少女を連れてきてしまったんだ。
僕は立ち止まる。
後ろの二人も立ち止まった。
振り返り、二人と対峙する。
「だってよ、話も聞かずにお前が行くから悪いんだろ」
「…………わかった。それは僕が悪かったとしよう。だがその子はどういうことだ」
少女を指さす。少女は屈託のない笑顔で僕の方を見てきた。
改めて見ると蒼色の眼が綺麗な、小柄な少女だった。
少女はペコリと腰を折り、
「私、百合ほのりって言います。よろしくお願いします」
挨拶をしてくる。
「……はぁ。橘凜だ」
なにかを期待する眼差しで見られ、仕方なく挨拶を返す。
すると、百合は嬉しそうに回る。
その場で、スカートを翻しながら。
前を閉めていないパーカーの裾がつられて舞う。
長い髪が、ふわっと散る。
「俺のときと反応ちげぇじゃん」
「唐突に握手なんか求めてくるからだ。……なにニヤニヤしてんだよ」
「べーつに。それよりこれからどうする?」
「…………そうだなとりあえず道のど真ん中で会話ってのもあれだから、どこかで休みながらにしたいところだが……」
真剣に考えている、風を装う薊を見て、進行方向を見る。
しばらく前に休憩ができそうなスペースはあった。だが、そこまで戻るというのも気が引ける。かといって見える道なりにそのような場はない。
そもそも、実をいうと休むことに時間を費やしたくはない。早く姉のもとに向かいたいのだ。
だから百合と合流したくなかったのだ。
髪の色も長さも違うのに、姉に似た身長のお陰で気にかけてしまう。
「なさそうね。歩きながら改めて自己紹介をしあいましょう?」
だが、元気がありあまってるのかくるくると百合が先行する。
変わった少女だ。
何を考えているのかわからないが、それでも百合からは敵意が感じられない。
動作に淀みがない。
真っ直ぐな少女だ。
「しかたない。ほら、凜行くぞ」
「あ、……そうだな」
呆れ半分で百合を眺めていた。
考えなしに先行するのがどれだけ危ないことか、と考えていた時、薊に肩を叩かれる。叩かれた方へ向き直ると同時に、薊が百合を追いかけて僕の横を通過した。
「っ……。なんだろうな、変な気分だ」
然程して知りもしない二人の背中を見て、心が痛くなった気がした。
あの二人は友人ですらない。知り合ったばかりだ。なのに、
「なんで丸腰で居られるんだ」
なぜ、そんなにも互いを信用する。
なぜ、僕に背中を見せられる。
なぜ、笑顔で会話が出きる。
僕は薊と行動を共にすることになり、鞘に剣を納めたとは言え、ずっといつでも抜刀できるよう柄に手を添えていた。
いつでも斬り伏せられるように、していたのだ。
「おい、凜!早く来いよ!」
「…………はぁ、わかった。今行く」
この晴れない気持ちはなんなのか。
残念ながら今の僕には説明ができない。
だから、とりあえず僕は。二人の背中を見続けることにした。
どうでしたか?
本来は長くする予定でしたが、短く切りました。
次は熱いバトルと今さらながらの説明が繰り広げられます(予定)
果たしてどうなるか。御期待(あくまで予定です)