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デジリアルワールド   作者: 川端 誄歌
入学試験編
1/16

入学試験、Ⅰ

お久しぶりの誄歌です。


日々投稿していかないと文章力落ちるので投稿することにしました。



それでは新しいデジリアルワールド、どうぞ( ゜д゜)ノ



お腹いたい(まじめに)

四〇〇三年、三月。

時刻は零時を過ぎた時のことだった。


──ジリリリリリリリィ!!


耳鳴りがするほどの轟音が鳴り響く。

これは、開始の音だ。

「「うぉぁあぁぁぁあ!!」」

一斉にそこら中から声がする。

近くにいる人はほとんどが赤の他人だった。

この試験、制限時間は丸一日。殺すも騙すも手を組むのもあり、なんでもありの地獄のような試験。

知り合いは必ず五〇〇メートル以上離れた位置に配置されるようになってる。

僕としてはその方が面倒がなくてありがたくもあるが、姉のことを思うとその限りではない。

「玲羅……」

目を閉じ、精神を集中させる。邪魔な雑音はすべて排除していい。近くで弓を引く音や剣戟。それらを全て無視する。目指すは、無──

「おい、お前なにしてんだ!」

「……お前こそ、なにをしている?」

姉の居場所を掴むまであと少し、のところで初対面のバーサーカーに話しかけられてしまう。

片手にグローブ型のドライブを着けた短髪の白髪の少年だった。ガタイがいい。身長も、僕より高い。

「ドライブの状態でセイバーを制圧、か。強いんだな」

男の様子を見ればわかるが、なぜかこの男は僕のことを助けたらしい。右手の赤いドライブで剣を受け止めている。

ドライブとは、魔力とコードをもって初めて起動させることができる特殊器機、所謂デバイスだ。起動させることで武器にはなるが、デバイス状態に戦闘能力はほぼない。

「強い強くねーは関係ねぇよ。なんでお前攻撃を避けようとしなかったんだよ。アブねぇ、だろっ!」

「がはッ!」

男の後ろを狙って出てきたランサーに、裏拳が決まる。

「……っ」

剣から手を離したセイバーがバーサーカーに殴りかかろうとしたのをみて、僕は顔面を殴る。よく見るとセイバーが女であることに気がついたが、もう殴ってしまった今、考えても仕方ない。

「……おぉう。エグいことすんのな、お前……」

「これで貸し借りナシだ。僕はもう行くぞ」

「あぁ!ちょっと待てよ!」

踵を返し、僕は男を無視して歩いた。この場所は激戦区なのか、うるさい。それに、集中して精神を集中しようにも、ここではこの男のようなやつに絡まれそうだ。

「お前、セイバーだよな?」

「……お前はバーサーカーだな」

「おうよ、見た目からしてそうだろ?」

悠々と隣を陣取って歩く男は、自慢げにグローブを見せてくる。

横目で見る限りあまりいい奴とは思えたものではなかった。シャツは全だし、腰にはなにやらチェーンようなものを着けている。それが少しうるさい。

「……なんでセイバーだと思った」

「いやぁ、風格?勘で言った」

「呆れた」

「はは、そう言うなって。俺は薊大悟、よろしく頼むぜ」

僕は立ち止まった。差し出された手を睨む。

なぜこんなにも絡まれるのか。何が目的だ。

この薊大悟という男の顔には覚えがない。知り合いにバーサーカーコードを持ってるやつもそもそもいない。なら、

「試験合格のために利用したいやつか」

ストレートに聞く。アザミという男はなおも手を差し出していた。握手をしたいようだが、当然ながら僕はするつもりがない。正直、姉を守ること以外なにも考えていない。姉は強いルーンコード保有者だが、戦闘能力は皆無だ。その姉と離れた上に訳のわからない男と共闘なんてしたくはない。

「あー、それもある。この試験、正規のルールの他にある噂があんだよ」

その気がないことが伝わったらしく、薊は手を引っ込め、頭の上で組み直す。先頭を勝手に歩き始めたため、無視して僕はちょうどでた角を曲がった。

学園の下にある迷宮とも言える迷路、複雑すぎる。そもそも、なぜ高校の下にこのような迷宮があるのだろうか。創設当時からあるらしいが、それにしてはこの迷宮は綺麗に見えた。

試験の参加者は、最多の二〇〇〇人を越えていると聞いたが、そんなに人が居るとは思えないほど、ここは静かだ。

「強制召喚、ができないのか、しないのかわからないけど……。僕から玲羅を探すのは無理そうだな」

壁に手を当て、魔力を流す。

黒い壁に浸透した魔力は少し離れたところで弾け飛んだ。どうやら、この壁には魔力を吸収する機能が備わっているらしい。

これでは、仮に集中できたとしても魔力の繋がりが、途中壁に吸われて追うことができない。

「お、こっちか。なにしてんだ?」

「お前もしつこいな。僕はお前に用はないぞ」

ストーカーに追われてる気分になり、嫌気がさす。

壁から手を離して数歩離れた僕はドライブを取り出した。この際、こいつを斬り殺しても構わない。

「ドライブ──起動、承認しろ。僕は、橘凜だ」

初めてこのドライブを起動させた。つい先日まで使っていた白式のドライブは壊れてしまったのだ。これは政府から新たに送られてきた赤式のドライブ、試験が終わるまで使うことはないだろうと思っていたのだが、そうもうまく事は進んでくれないらしい。

「凜って言うのな、よろしく頼むぜ」

「……お前、その腕切り落とすぞ」

ドライブが起動し、武器へと変わる。

ノイズが走るようにして、手元の世界が裂ける。

切っ先が読み込まれ、徐々に姿を現す。

出現した剣は細く、長い。俗にいう、レイピア系統。

柄は紅く、鍔はない。

「やっぱ、セイバーだな。俺にお前との戦意はないっての」

「ならついてくるな、なんのために僕のあとをつける」

薊に戦意がないこと自体は分かりきっていた。そもそも戦う気があるのなら、握手を求めてくる必要はない。油断させて……という戦法。ということもあり得るかもしれないが、このお気楽そうなやつにそこまで考えられるとは思えない。

現に今も握手を求めている。

もちろん、

「だから、一時的に協力しようぜ。俺は俺で目的があんだよ」

「……その目的を話すなら協力してやるよ」

「あ、まじで!?あー、どうしよっかな。言おうかな~。でも、言って笑われんのもやだしなぁ……」

するつもりはない。

頭を抱えて悩む薊をよそに僕は歩く。そもそも、武器を出したくなかった理由は相手にコードをばらしたくなかったからだ。だが、出してしまった以上は逆にしまうとかえって狙い撃ちにされる可能性が出てくるため、しまえない。頭が単純なやつしかいないのか、武器をしまうイコール魔力が少ない。と、考えるやつが多いのだ。たしかに、武器形態を維持するのにも魔力を消費しなくてはならないが、それも微々たるものだ。魔力保有量が極端に少ないやつではない限り、わざわざしまうこともない。最も、任務中で生死をさ迷うときなら、温存のために解除することも、なくはないだろう。

突き当たりをもう一度左に曲がる。

唐突に迷宮に入っているが、これは高校の入学試験だ。

それに、思いの外しんどい。

まさか姉と離ればなれになるとは、始まる直前に言われるまで考えてもいなかった。

その上居場所を探せないとなると、もはや自力で探し当てるしかない。

「試験内容は“ゴールに生きて出ればいい”だから、玲羅でもクリアできると思うけど……」

姉が男どもに蹂躙されるのを想像した。

剣で斬られ、矢で射貫かれ、槍で刺される。破壊者で消され、狂戦士に潰される。

どれもあってはならない。姉が傷つくことなど、起こってはならないのだ。唯一、同じコードであるルーンと対峙したときのみ逃げ切れるだろうが、二〇〇〇にも人がいるなかでたまたま“文字使い”とだけ出会いました。なんてことはないだろう。

曲がった道の先は晴れて大きな空間だった。先程までいた激戦区とは違い、静かなものだ。人は、居るようだが、

「……多数対一か。嫌いではないよ、それも」

部屋の中心まで来たところで周りを囲まれる。セイバーもいれば、アーチャーも、一通りのコードはいるだろう。

「お、お前!降参す、するならそこに這いつくばれ!!」

どこかから声が聞こえた。その声は震えている。どうやら、即席の集団のようだ。

当たり前か、自分から周囲五〇〇メートルに知り合いはほぼ現れないのだ。それに、合流しようにも居場所が掴めない今じゃ無理がある。

ぐるりと回る。見る限りやはりほとんどのコードが揃ってると言っても過言ではないだろう。人数は二〇人。全員、怯えたような弱気だ。

「仕方ない、この数で勝てると見込んだお前たちに敬意を表して戦おう。僕は、少しだけ機嫌が悪いんだ」

下段に剣を構えた。目の前に居るのは同じくセイバー。その横二人はアーチャー。他はバラバラに並んでいる。

「くっ、は、放て!!」

先程の声の持ち主は目の前のセイバーだった。

それを合図に矢が放たれる。目の前の二人と、視界外から計六つ。しゃがんで矢を避けた。無理に跳んで宙で矢の集中砲火を受けるのは、流石にきつい。

「ぎゃぁっ!!」

「痛い、痛い痛い痛い痛い!!!」

流れ弾もとい、流れ矢が円陣で僕を囲っていた誰かに当たる。雑にならんでいるからだ、綺麗に隊を組めば当たらなかったろうにな。

声からして二人ダウン、残るは一八人。

「う、うぉぉお!!」

「ちっ、さすがに、部が悪いなっ!」

一人がこちらへ走ってきた。

第二波が放たれる前に右へ走る。

これで矢が乱雑に放たれることはないだろう。

視界に槍を持った男女、宙でなにかを描く女子、弓を構える男子を納める。追いかけてくるのは、槍使い。他は矢が味方に刺さったことによって動きが鈍い。

「まずは、ルーンだ」

ルーンは様々な能力を持っているため厄介だ。人によって発動条件も異なり、読みにくい。

右脚に魔力を込め、ルーンへ向けて跳ぶ。

ルーンを護るために構えられていた槍を避け、ルーンの顔面を掴む。

「ひいっ」

瞬きの間に僕は彼女を壁際まで押し付けた。

右腕を引き、剣を突き出して、

「う、うわぁぁぁぁぁあ!!?」

脳を貫くつもりで、狙いを定め、押し出したのを直前で考えを改めて、手首を少し、右へ反らす。

耳の横の壁に、刃が突き刺さる。

文字使いは気を失って失禁していた。自分が死ぬ姿でも想像したのだろう。多分、戦いが終わる頃まで起きることはない。仮に気がついても、もう試験に復帰するだけの気力はないはずだ。

が、振り返ると同時に首へ蹴りを一つ。折れていなくても罅は確実に入ったろう。念には念を、確実に潰す。

三人の槍使いが腰を深く落とした。その後ろで弓兵が矢を番えている。

「…………いいんじゃ、なっい」

槍使い達が走り出す前に、僕は地面を蹴った。

剣を突き出し、矛先と切っ先が触れそうな一重で腕を下げ、真ん中の槍を上へ弾く。端の二本の槍の間に入り込み、遠心力を乗せた一振りを振るった。三人の腹部が裂ける。

真ん中の槍が縦になっていたため、邪魔だった。

腹部を斬られても再度槍を突き出そうとする二人の男子。顔色はあまり良くない。

放っておいても、きっと自滅するだろう。

「──『閃』」

真ん中の槍兵を盾に、加速する技を使い進む。

そして、

「ふんっ」

蹴り飛ばす。

優しいというべきか、弓兵は番えていた矢を消して少女を抱きしめた。ずっと矢を放たなかったのも、僕が彼女の影に入り込んでいたからだろう。

二人の両肩をめがけて剣を振るう。

これで、七人、残るは一三人。

数歩下がって二人の槍を見た。睨まれはするものの、どうやら動くことは難しいようだ。

「槍、借りるぞ」

「っ、お、い!!!」

無理矢理、槍を奪う。

実際に持ってみると長いことが実感できる。これでは、接近された時対処ができないだろう。

離れて陣形を直している所へ裏手に持ち替えた槍を、

「……ふんっ」

投げる。

そもそも、セイバーコードの僕に槍の扱いの心得は一つもない。投げて終わりだ。

放たれた槍が背を向けていた二人に当たる。存外、槍も使えるかもしれない。

もう一人からも槍を奪い取り、もう一度投げる。

が、今度はセイバーに弾かれ、無念に終わった。

「まだ一〇人も居んのか。さすがに、めんどくさくなってきたな……」

技を使おうか迷う。一度に複数相手にする技はないわけではない。だが、対象が増える毎に魔力消費も多くなる。保有量に自信はあるが、無駄に消費はしたくはない。

「いっけぇぇぇぇええ!!」

剣使いが剣を掲げ、指揮を取る。この集団のリーダーと呼べるのはあいつのようだ。

槍使い五人が放物線を描くような波状攻撃を仕掛けてくる。若干の差があるから、最悪スピード勝負で一人一人を倒すしかないだろう。初めは──

「うおぉぉぉぉぉぉぉおおおお!!!」

「なっ!!?」

考え事をしていたため判断が遅れた。

急いで回避をとるが、突撃していた五人の槍使いは全員が吹き飛ぶ。

さらに一歩下がり、二次被害を免れる。

侵入者の体から赤い蒸気が出ていた。髪も紅く見える。

明らかに、バーサーク。“暴走”状態だ。魔力を使いきらせないとこれは戻らない。バーサーカーコードの代名詞とも呼べる狂化だ。

「(どこのどいつだ、暴れてここまで出てきたやつは……!)」

切っ先を狂戦士へ向けた。後ろにいるやつらより、これの対処を優先しないと僕までも試験から脱落するはめになる。

「……(閃で詰めて、四肢を切り落とせばいけるか)」

「なぁに構えてんだ凜。助けに来てやったのによ」

「……はぁ?」

脚に魔力を込め、跳ぼうとした瞬間。狂戦士は自ら暴走を解いた。彼の全身から赤みが抜けていく。薊だ。

「お前、なにしに来たんだ」

「んや、負けなさそうだなーって思ってよ。仕方ないから俺の手の内の一つを見せて仲間になろうと思って」

「それこそ、何を見せるって…………薊、お前暴走しないのか?」

「それが俺の奥の手の一つ。暴走しないバーサーカーってな」

薊がゆっくり近づいてくる。

バーサーカーのある種の強み、それは暴走することによって痛覚などを断ち切り魔力が尽きるまで活動できるということだ。デメリットは戦法が火力だよりになること、読まれやすいことだろう。

だが、こいつは暴走こそしても我を失わないという。なぜなのか。

「これで、少しは信用してもらえたか?ほれ、握手だ」

三度目の握手を求められ、今度は考えた。ここまでされるとかえって断るのが面倒になった。また断ったとしても次もくるだろう。新たに自分の手の内を明かしてまで握手を求めてくる可能性がある。

「わかった、認める。だから後で本当に目的を教えろ。握手はそれからだ」

「おう、なら先に倒さねぇとな」

笑顔の薊が残党の方へ向き直り、

「しゃーね。左の二人やるから、右の四人任せた」

走っていく。体からまた赤い蒸気が出ていた。

僕も走った。アーチャー二人とランサー一人に守られているセイバーを目掛けて走る。

先行してきたのは相手のランサーだった。アーチャーは構えてこそいるが狙い撃ちはしてこない。

「俺が、お相手つかまつる!」

「生憎、君はお呼びでない、よっ!!」

振り下ろされた棒激を剣の腹で防ぐ。体格の差か、重い。そもそも、槍使いがなぜ薙刀のように槍を振るうのか。

左へ受け流し、顔を耳元へ近づける。

「お前、武道経験者か」

「嗚呼、いかにも。だが、そうならどうする」

「決まってる。倒すよ」

顔へ射たれた矢を冷静に避け、槍使いの体を盾にする。どうやら、射たないだけで隙を見せれば射ってくるらしい。スピード勝負で決めるしかない。

少しだけ距離を取り、剣を持ち替える。この状況を切り抜けるには、二人ずつ同時にやる必要がある。

お互いに動いたのはほぼ同時だった。

薊たちの戦闘音を合図に動いたからだ。

地面と平行に槍を構え、突きをするために槍使いが踏み込んだ刹那、

「『閃』──」

距離を詰める。

ほんの一瞬、ただ瞬発的な加速。

だが、その加速は光より、速い。

一歩で、槍使いの懐に入った。

突き出されていく槍を、脇で挟む。そして、利き手であろう右腕の腱だけを斬る。

「──僕の、勝ちだ」

「そうだな。私の敗けだ」

その言葉を聞いて閃の加速でさらに奥へ翔る。眼前に、アーチャーを見据え、番えていた矢ごと右腕を斬る。

「っあぁぁ!!貴っ様!!!」

片腕が使えなくなった弓兵は、弓を雑に振る。縦横無尽に、近づくなとばかりに振っていた。が、縦に振った瞬間、弓の下が地面にぶつかり、手から武器が無くなる。

「ふっ」

胃に蹴りを入れる。

弓を掴み、横へ投げる。

倒れていくアーチャーを、盾にする。

「ちッ、こっの!!」

セイバーの奥に居たアーチャーが跳んでくる。盾にした弓兵が横に吹っ飛ばされ、矢が飛翔する。数は、三本。

剣を右に持ち替え、下段から矢を斬りあげた。続けて二本目を回避し、三本目を掴む。

上体を低く、地面すれすれまで倒し、体を捻りながら、左手に力を込める。上をアーチャーが通過していった。その、太ももに矢を突き立てた。

「ぐッうぅあ……!!」

さらに回転を加え矢を捩じ込む。

太ももから垂れる血で矢が滑る。

矢から手を離し地面に指を添え、身体を支え、回転力を加えた蹴りで、背骨を殴打。

これでこいつは再起不能だろう。

「な、なんなんだ!」

地面から起き上がると同時に剣を横へ薙ぎる。

構えられていた剣に僕の剣が激突し、火花が散る。

「僕の機嫌が悪かったからね、仕方ないさ……!!」

「ぐっ……!押しきら、れる!?」

力の差は拮抗していなかった。例えるならさっきの槍使いと僕だ。この状況では、僕が槍使いの位置だが、その場合負けるのは僕になる。

「なっ!?」

だから、僕は相手に反らされるよりも先に力を抜いた。

刃同士の接点を切っ先近くへずらした。

相手は、自分の押す力によって僕の横を通過し、前のめりになる。

「まぁ、ストレス発散にはなったよ」

剣を掲げ、振り下ろす。躊躇などない。殺すつもりで、柄の部分の底を、

「ぎゃっ!?」

首付近に強打した。相手の手から剣が落ちて、顔面が殴打される。よく見ると泡を吹いているのがわかった。

「終わった、な」

微振動を繰り返すセイバーを後に薊のもとへ行く。

「傷が治ってるやつは他のやつを頼むぞ」

進行方向に居た少しばかり元気そうなやつに頼む。

全員、殺すまではしていない。他の人間が部外から入ってきて殺したとなればばつが悪い。

だからそれが起こらないよう、念を押す。

「ほんっとに改めて、握手だな」

剣を鞘に納める。

薊は誇らしげに壁に背中を預けて微笑んでいた。

なんだか嬉しそうなのが、癪だ。

嗚呼、なんでこんなめんどくさいやつと、

「仲良くしなきゃいけないのかね」

差し出された手を握った。



後の僕は、この時、


その手を掴んだことを後悔しなかった。








デジリアルワールドどうでしたか?



個人的にはどちらの凜も好きです(当たり前)




では次の投稿で

(2018年2月13日改稿)

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