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金子練はにげだした!

勇者に勝利したその日の夜のこと……


「何してるの?お兄ちゃん?荷物纏めたりして」


不思議そうにダークが練の顔を覗き込んだ。

が、直ぐに格式正しい直立の姿勢になり、


「どうしたんですか何かあったんですか?ご主人様」


と言った。勿論、物理的に目の色が変わっている。

そして、当事者の練は全く重くない荷物をまとめていた。


「強いて言えばこの国の王がうぜぇ」


「「え?」」


2人はとても驚いていた。

2人は便利な事に二心同体なので、脳内で相談しているようで、誰も表に出ていないのか、目が灰色になっていた。


「何かある度に「練殿ぉー」って煩いんだよ!たまには自分で解決しろよ!」


そう言いつつベットに怒りの鉄槌を下そうとするが、ベットを弁償したくないのでやっぱりやめた。


「……では、何故荷物を?」


練はニコリと微笑んだ。

2人の脳裏を嫌な予感が走り回った。


「うん、夜逃げすることにした」


2人の反応はとても面白かった。

目を大きく見開いたかと思えば、物理的に目を白黒させ、


「「え!?…えええぇぇぇ………」」


驚きの声が一気に失望の声に変わる。

非常に揃っている、まるでステレオスピーカーだ。


「おお!息が合うようになったじゃないか」


実際、2人の溜息は完全に一致していた。


「そうじゃなくてですね、別れの挨拶とかはしないのですか!!」

「そうだよ!お兄ちゃん!」


2人はやはり左右チグハグな体勢でそう言った。

そして、練は胸を張って答えた。


「あぁ、手紙を書いておいた『捜さないで下さい 金子練』ってな?」


なんと、この(ケモナーというらしい)のパンフレットの余白に、中途半端に綺麗な字でそう書いてあった。

正直言ってティッシュに書いた方がまだマシだと思う。


「なにそれぇ!」


手紙を見たダークがそう言った。

もう半分はワナワナと怒りに震えている様子だ。


「わかった!わかったから」


その2人で1人の少女を、錬金術師が宥める。


「わかって…くれましたか?」

「ライト…わかってくれたみたいだね!」


だが、このロリコン野郎の手は全く止まらなかった。


「夜逃げが駄目なら、朝逃げしよう!」


数瞬空いてから2人が


「「………え?」」


そんな間の抜けた声を上げた。


「私は『寝ました』」


そして、月が消え、太陽が一瞬にして呼び出された。


『パパーおはよー!』


「ルミナーおはよう、今日はちょっと遠くへ行こうか!」


『わかったー!』


全国のお父様お母様。

純粋な子どもというのはこれ程までに騙されやすいのです。お気を付けて下さい。


「「……」」


2人は、呆れと驚き、その両方を持った表情をしていた。

なんたって、2人は練の装備扱いなので、睡眠時間消失バグに一瞬に巻き込まれたのだ。

そして、その元凶は。


(口を開けたまま戻ってこない…誰だ!こんなことした奴は!)


そんな事を考えていた。

本当に気付かないのなら、馬鹿を治す為に死んだ方がいいのかも知れない。


「と言うわけだ二人共いくぞ!どこへでもれんくん~」


そう言いながら全員の手を掴む。

現代社会ならセクハラで訴えられる行為だ。


「ちょっとお兄ちゃん!」「ご主人様っ!」


エルフの国の前に『移動!』


練の犯罪行為履歴に、少女拉致が追加された。


「練殿ォ!あれ、いない」


間一髪だった。



「『とうちゃーく!』」


目の前に広がるのは、7メートルはありそうな白い壁と、その中央に2メートルの門。

行ったことはないが…きっとここはエルフの国なのだ。


「ダーク…うちのご主人様は鬼畜みたいよ…」

「ライト…本当にそうみたいだね…」


呆れが諦めに変わっていた。

ダークはダークで仕方ないとはいえ、ライトもダークな雰囲気を醸し出していた。


「酷いなぁ、人を鬼畜の擬人化みたいに言いやがって」


「「そのとおりでしょ!」」


実際、やっている事はただの鬼畜なワガママだ。


『わー!ライトお姉ちゃんとダークお姉ちゃん息ぴったり~!ルミナもまぜてー!!!』


ルミナが突進、2人に抱き着いた。

難なく受け止めた2人の顔は、ほんわかとしていて、今までの疲れなどまるで感じさせなかった。


「唯一の癒しだね…ライト」

「そうね…ダーク」


2人はうっとりとした顔でルミナの頭を撫で回している。


「まぁ、あれだ、異世界と言えばエルフだからな!」


「何いってるか分かりません!」


半ギレでライトが答えた。


「貴様ら!何をしている!」


鎧や甲冑ではなく、軽鎧を纏い、遠距離で弓を構えているエルフ(男)が言った。

凄くライトがアタフタしていた。

やっぱりライトの大声でバレたらしい。


「いや~この国に入りたいな~と思って〜」


まるで怪しいセールスマンのような口調で話す練。

実はこれでも出来るだけ自然に会話しているらしいのだが、充分すぎるほど怪しい。


「この人族め!どうせアビスを信仰しているのだろう!!」


そういえば獣人の国の図書館で読んだ本にそんな事が書いてあった事を思い出す。


「するわけないだろォ!あんなクソ神をよ!」


一瞬で驚くほど奇妙な猫を被るのをやめた主人公。

ダークとライトの肩が一瞬跳ねた。


「何…話を聞かせてもらおうか」


「あいつに!あのクソアビスに!俺は裏切られたんだよ!しかもそれで死にかけたんだ!

世界を救って下さいって言われた1日後に邪神を信仰してるとかで崖からドンだからな!!」


しきりに頷くエルフは目頭を押さえている。

泣く要素は一切なかったと思うのだが…


「まじかよ…なぁ俺のも聞いてくれよ」


「おう、どうしたんだ?」


そうして、目に涙を浮かべながらその男は話し始めた。


「あいつは……いや、あいつらはな!!俺らの創造神のフォレス様を汚したんだ!燃やしたり、変な水掛けたり、持ち帰ったり……アビスが一番だとな!」


少女3人は話について行けないので、奥の方で遊んでいる。

練はそれを意にも介さず話を続ける。


「ひどい!!人それぞれ価値観が違うからそういう事は尊重されるべきだよな!!

例えば特殊な性癖(ロリコン)とかな!!

全く…本当にアビス最低だな!」


「そうだろ?あいつは最低だぜ!」


「「アビスのクソ野郎ッ!!」」


「最高だぜお前!俺はオレスだ!お前の名前は何て言うんだ?」


「お前こそ最高だぜ!俺は金子練だ!」


アメリカ映画並みのテンションで友達になった2人。

色々なイメージが壊れた。特にエルフは。


「アビスが嫌いな奴は同志だ!さぁ入ってくれ!」





そのエルフの国はかなり静かだった。

敵意全開のエルフ達。

まぁ、こちらの方が世間的なエルフのイメージに近いのだが。


「おい!オレス!なんで人族なんか国に入れやがった!」


静かなのは、言うまでもなく練の所為だった。


「こいつは同志だ!アビスに裏切られたんだと!…なぁ練よ、お前からもなんか言ってやってくれよ。」


「わかった…アビスは最低だ!クソだ!いいや…クソ未満のゴミだァ!!いや!ゴミを超越したゴミだ!!!ゴミオブゴミ!!!アルティメットゴミ!!!!!!」


途中から小学生レベルの悪口を発し始める高校生。

だが、それはエルフにとってはバカ受けだったらしく。


「ふはははははは!!!!言うじゃねえか!おまえ!!名前は?」


「金子練だ!」


「どうだ!俺と一杯やらないか!」


「酒が飲めねえからジュースだけ頂いとく。」


「面白いな!お前!よし!今回は俺の奢りだッ!」


そうしてアビスが嫌いという共通点だけでエルフと打ち解けた練であった。



「私達、置いてかれた気分だね…」

「そうね…ダーク」


『ライトお姉ちゃん!ダークお姉ちゃん!パパが先に行っちゃうよ!』


「さぁ…行きましょうか…ダーク…」

「うん…ライト…」


『もう!ライトお姉ちゃん!ダークお姉ちゃん!』


仕方ないのだ、2人が疲れるのも無理はないのだ。

察してやってくれ、ルミナさん。




机には木製のジョッキ、地面には空の酒樽、又はジュース樽が転がっていた。

そして、どうやらそろそろお開きらしく、ゾロゾロとエルフが退出していった。


「あぁ、楽しかった、なぁオレス、空いてる土地とか無いか?」


「……いや、無いと思うぜ?」


「じゃあ外でも良いから!」


「まぁ、外なら良いけどよ…魔物が……」


「ありがとう!オレス!」


そのまま立って駆け出し、勢い良くドアを突き飛ばす。

そして、オレスは酒場のマスターと2人きりになった。


「おい練!……マジかよ……まぁ、此所まで来れるなら大丈夫か。

……なぁ、マスター。アレ、キープの奴くれ。」



そして、エルフの国の外壁に練は来ていた。

丁度良い土地を見つけたところで考え込む。


「何か…忘れてるような気がする…あ、ルミナ達のこと忘れてた!ルミナ達は此所に『来る』」


『パパぁー!』


「ごめん!ルミナごめん!許して!」


『……じゃあパパ、ぎゅーてして。』


「わかった、ぎゅー!」


『もっと!』


「ぎゅー!!」


『もっと!』「ぎゅー!!!」

『もっと!!』「ぎゅー!!!!」


『…許してあげる』


「るみなぁ…ごめんよぉ…」


『パパ、えらいえらい!』


「るみなぁーー!!うぅ…」


『えらいえらい!』


「ハハハハァァーー!!!!ルミナさんごめんなさい!許してぇ…」


これが、最近の高校生、最近の主人公である。

(最近の高校生・主人公から批判殺到中)


「…どう思いますダーク?」

「…酷いよねライト。」

「私達のご主人様は最低ですね。」

「そうだね、お兄ちゃんは最低だね。」


至極当然な意見です。

ろくでなしにも程があると言うが、そのろくでなしの底が見えないのは何故だろう。


「ごめんなさい本当に許してください!なんでもしますから!」


「ん?今」


「「なんでもするって言った?」」


「い、言ったけど…」


「「じゃあ…」」


「待って!やらないといけないことがあるから!」


「わかりました、ご主人様」

「わかったよお兄ちゃん」


完全アウト、ネット禁止用語でしか無い言葉だ。


「それでは金子練の3分アルケミングのコーナーです!今回は家を造りましょう。」


「「家!?」」


なんか独り言って反応があると嬉しいよね。

大概の事は無視されるけど。


「樹を使いましょう、土も使います、そして樹を木材に『錬金』します、さらに土も粘土に、そして思い浮かべた家の形のままに…『錬金』はい、完成です。」


すると練の目の前には大きな日本風の家が建っていた。


「大満足だ!」


『パパすごーい!』


「ご主人様…どっから突っ込んで良いことか…」

「やっぱりお兄ちゃんはおかしかったよ…」


え?釘はどうしたかって?この家継ぎ目が無いんだよ、凄いだろ!


ところで素材を樹と土しか使って無いのに布団があるのはなんでなんだ?流石錬金術センパイだぁ!


バランス崩壊とは、こういう事を言うのだろう。



「それでは、お仕置きの時間ですよご主人様?」

「なんでもするって言ったもんね?お兄ちゃん?」


「わかった、なんでも言ってくれ!」


「じゃあ」「…うん」


「「なでなでして」」


「え…? え?ご褒美」


「早くなでなでして下さい!」

「お兄ちゃん!早く!」


「キターーーーー!」




なでなでなでなで……


「ご主人様ぁ…」


なでなでなでなで……


「お兄ちゃん…」


幼女撫でれるとかご褒美ですね。

こいつは爆撃を受けて四散するべきですわ。


「止まってます!」


「お兄ちゃん…早く…」


『パパぁー!ルミナもー!』


「よーし!ルミナもなでなで!!!」


その後、2時間に渡る撫でを続け、両腕が筋肉痛になったそうだ。

初めて感想を頂きました!ありがとうございます!


そして内容を変更しました!

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