全滅-THEEND
game over…
本当はこういうバットエンドにするの嫌いなんですがひと段落ついたので終わらせてみます
「う…ぞ……うそ…だ……ごふ……う…そ…だろ…?」
そう虚ろに呟く彼は血に塗れ…うつ伏せに倒れ血に浸かっていたその血は彼のものだけではなくーーー
ーーー彼の良く知る人達のものであった
「る……るみ…な…ぁ…ルミナ…!」
そこにあったかつての娘は紅く染まり…一撃を受けたのだろう右側だけ潰れた果実の様だった
「し…る…ひぃ……あ……?」
彼女は最後まで抵抗したのだろう、既に原型を土留めておらず、バラバラに散らばった翡翠の様な髪は血の色に染められて紅玉の様に染まっていた
「だぁ…く…らい…とぉ…!」
だだの反応の様に呟き続ける…2人がこの声に気付いてくれるように
しかしその声は既に砕けた剣には届かず虚しく響くだけだった
「ごふっ!ごふっ!ぐばっ……ぅぅ…く、ぐ…ぉ…」
血を吐き何とか息を吸おうとする…悪態も言葉にはならず意味不明言葉に変わってしまった、何故だ?どこで間違えた…?判らなかった、理解る前にやられた、それは正に『異常』としか表現仕様の無い出来事であった
「グギィ?」
此方に気付いたのだろう、『敵』を仕留める為に少しずつ近づいてくる…
「あ…あ……お…ま…え…ぎ…ぁぁ『ごろ…ず…『ご…ろ…じ…て…や…る…」
何とか気力だけで錬金術のキーとなる言葉を綴る…
いや、正しくは綴ろうとしただろう喉に絡みついた血が運命を変える邪魔をして言葉が言葉にならない
「ご…ろ…」
棍棒が振り上げられ重力に従い彼の身体を粉砕した
ぐちゃり、その単純な一つの単語で全てが片付いてしまうそんな事が起こった、そして…音の発信源を確実に殺した
「はぁっ!!…はぁ…はぁ…はぁ…ここは…」
其処は知らない天井、ではなく最も見憶えのある天井だった
「…俺の…部屋?何で…?」
俺は殺されたはず、余りにも一瞬だったが確かに痛みも有った、もしかして全部夢だったのか?崖から落とされたのも、ルミナと会ったのも、剣を創ったのも、時空神と友達になったのも、エルフの王女を助けたのも…全部夢?夢…なのか?ルミナは?ダークは?ライトは?シルフィアは?死んでないのか?そもそも異世界なんて本当にあるのか?
「とにかく…ここに居てもわからない事だらけだ」
はっきりと覚えている…この廊下、扉の位置、やっぱりここは俺の家だ、そう確信が持てただけで少し安心した、先ずはリビングに行って…そうだ!瑛理、瑛理なら何かを知ってる筈だ!
そしてリビングにたどり着いた、長くも短くも思える道だった、どこかで本当にルミナが、みんなが死んでいたら…と考えてしまっていたのかもしれない
「間違いない…ちゃんと俺の家だ…」
リビングに入ると先ず目に入る仏壇…父だ、俺が小さい時に交通事故で死んだんだ、ブレーキの壊れたトラックが突っ込んで来て…いや、この話はやめよう
右にはキッチンが、母が料理を作っている、心なし少ない気もするが多分瑛理がダイエットでも始めたのだろう
そして左には…大きなテーブルと四つの椅子…そしてそのうちの一つに腰掛ける…
「瑛理…!なぁ!覚えてるか?異世界の事!」
「兄さん…」
あぁ、絶壁とどこか愛らしい小動物を思わせるようなその顔…恐らく母からの遺伝だろう、間違いない、俺の妹だ…!
「夢なら夢でいい!ただ…瑛理は知ってるか?異世界がある事を…」
「ふふっ今日はエイプリルフールだったよね」
「瑛理…」
エイプリルフール…?今日は…4月1日…あぁ、そうか
覚えてないのか…と、そう言おうとした、その言葉は別の言葉に置き換わった
「ねぇ、兄さん…いつ帰ってくるの?」
「は……?」
困惑、それしか無かった、何故だ?俺はここに居るだろう?あまりの突拍子のない言葉の所為で頭が空っぽになってしまった
「ねぇ、兄さん…昔、一日中帰って来なかったことあったよね、たしか、あの時も4月1日だったよね…もうかくれんぼは終わり、早く出てきてよ」
「瑛理……練……」
母は泣いていた…
「もう、2年目だよ?かくれんぼはやめてよ!」
さっき見た時には気づかなかった…少し身長が伸びて…本当に…本当に…2年も経ったのか?
「嘘だって言ってよ!…帰って来てよッ…!」
本当に…あの後俺は…いや、俺たちは…死…?
じゃあ…
「俺は…『俺は』一体なんなんだ?」
其処にはただ家族を失った悲しみにくれ泣き続ける2人の姿、それだけしか無かった
いつも見てくれている方々、本当にありがとうございます!
いやー…ここまで長かったです!ちょっと挫折しそうにもなりましたが…ここまで来れたのは皆様のお陰です!本当にありがとうございました!本当はこんな終わり方なんてしたく無かったのですが…仕方ないのです。
あ、昼に次話投稿します




