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中途半端な異世界

「おはようございます、どうも金子練です。

昨日の夜は本当に何もなく、ちょっと期待してた自分が馬鹿みたいで哀しくなった金子練です。」


彼は小さな溜息を吐き、そして軽く伸びをする。

今日は何をするか、なんて気楽な事を考えてベットから身を起こす。


「おはようございますご主人様」

「おはよう!お兄ちゃん」


指し示されたように、2人同時にそう言った。

昨日は喧嘩をしていたが、ホントはもっと仲良しなのだろう。


「あぁ、おはよう」


『ん……ん?…パパおはよー』


「おはよう、ルミナ」


ルミナが眠そうに欠伸をする。

練はもう少しその光景を見ていたそうにしていたが、全員分の食事を作る為に仕方なくベットから降りた。


『ねぇパパ。あの人だぁれ?』


練は寝室の扉を開けようとしていたのだが、その妙に圧のこもった言葉に身体が硬直した。


「あぁそうだね…」


まさか剣が女の子になりました〜!!

なんて言える訳もなく、そして、下手な嘘をつけば自分がどうにかなってしまう。

そんな謂れのない恐怖にただ冷や汗を流すだけだった。


(うわぁ…なんていったらいいのかわっかんないやー)


その結果が思考放棄である。


「おはようございますルミナ様、私はライトと申します。」


眼の色が白に変わる。

手を前に交差し、丁寧なお辞儀。

本場のメイドなんて生まれてこの方見たことが無いが、実際その挙動一つ一つには優雅さが感じられた。


「おはよールミナちゃん!ダークって呼んでね!」


眼の色が黒に変わる。

まるで鹿威しが跳ね上がるように上体を起こして3本指で顔の横でピース、更にはウィンクのおまけ付きだ。


『う~ん、ライトお姉ちゃんとダークお姉ちゃん?』


ズギュゥゥゥゥン!!ライトとダークの心にクリティカルヒットした!


「ダークお姉ちゃんだよ~ルミナちゃーん」


膝立ちになって両手を広げる。

ニンマリとした笑みが光っている。


「こ、こら…ダーク、ルミナ様にそんなことを…し、しちゅれいでしょ…」


左目が白色に変わる。

左手があわあわと暴れる。


「噛んだな」「噛んだね」『噛んだー』


器用に左目だけ涙目になるライト。

右手が頭を撫でる。


「うぅ~ルミナ様ぁ」


『偉い、偉い、ライトお姉ちゃん偉いの!』


よく見れば右眼が物凄く輝いている。

どうやら全てダークの計画通りだったらしい。


(…どうしたら良いのだろうこの空気)


扉の前で1人だけの孤独感。まさに近くて遠い状態。

そして練は気付いた。



「ッ!俺が…まとも…だと?このカオスな空気により俺の頭が正常に?

まさか!このカオスが俺のアイデンティティーの一つである〈頭いってる〉を消そうとしているというのか!クッ!カオスめ!」


いいや、まだまだ正常だ(頭いってる)


「まあ、このカオスも眼福だし見とくか…」


そして彼は正座を始めた。

神聖なものを見る時は正座と相場が決まっているのだ。





(…やっと終わってくれた…止めなかったら2時間突入してたぞ…)


どうやら眼福よりも孤独感が上回ったようだ。


「それじゃ図書館に行こう!」


その直後、お腹が大きな音を立てた。

ライトが料理を作ってくれたのはいい誤算だった。



「規則の方を説明致します。」


「『スキップ』」


「ーーそれでは、ごゆっくり。」


受付の人はうさみみだった、可愛かったけど二十歳だったので、ロリコンはなんのアクションも起こさなかった。


「2人も本読んでくる?」


「はい、そうさせていただきます」


「私もそうするよ~」


左右にフラフラしながら少女が本棚に向かう。

どうやら漫画コーナーと料理のレシピ本で揺れているらしい。


「そんで、ルミナは俺と一緒だーー!」


『うん!パパと一緒!』


可愛いは正義だ、異論は認めん。

そんな至極真っ当な事を考えつつ、練は本を探していた。


「…ん?種族について…か、著者はレイジ…か。」


そして、表紙を捲ると、なんの変哲もない前書きから始まっていた。


【この世界の種族は基本的に人族、獣人族、エルフ、ドワーフ、妖精族、魔族、ヴァンパイア、龍人の8種族に区別されている】


「は?ヴァンパイアって魔族じゃないの?」


微妙な疑問を感じつつページをめくった。


【人族:ほとんどが神を信仰しておりその50%が廻魂神を信仰している。】


「少なッ!?文字数少なッ!もっと頑張れよ作者!」


作者は人間が嫌いかもしれない、そう思いながら次のページをめくった。


【獣族:獣と人間の血を両方継いでいる種族。

悪戯神を信仰していた為に人族と何度も戦争を行っている。】

※獣耳と尻尾はロマン、最高


「この作者とは分かりあえる気がする…というかこいつ絶対日本人だろ!」


作者に妙なシンパシーを感じつつ、ページをめくった。


【エルフ:人族より尖った耳を持ち、魔法が得意な種族。

なのにダークエルフがいない…日焼けしたエルフならいるけど…ほぼ総てのエルフが緑神フォレスを信仰している。】


「え?ダークエルフいないの?おい異世界!」


色々突っ込みどころが多い異世界にツッコミを入れるのを我慢しつつページをめくった。


【ドワーフ:鍛冶が得意で手先が器用、背は小さくないし酒嫌いのドワーフもいる…それじゃただの手先が器用な人じゃねぇか!】


「ドワーフって何だっけ…というか作者の精神が危ない!」


よく出版できたな…という関心を覚えつつページをめくった。


【妖精族:サイズは手のひらに乗るくらいで魔法が得意で羽も生えている。

体の半分以上が魔力で出来ており、概ね日本で描かれるものと特徴が同じ。】


「よかったちゃんと異世界してるじゃん、というか日本って書いちゃってるし!もう隠す気ねえな!?」


転移者の扱いに驚愕しつつ、ページをめくった。


【魔族:魔法適性が高く戦闘能力の高い種族。

見た目は人族で角も生えてなかった、最早魔法の使える人族だよ!しかも魔王は話ができる良い奴だったよ!!どうなってんだ!!!】


「本当に異世界って何!?というか作者さんが心配っ!!」


さっき書かれていた事が本当なら、魔族は実は存在しない訳で……怖いもの見たさでページをめくった。


【ヴァンパイア:人族の魔導師が生体魔法で生み出した種族。

人間の死体を魔法で強制的に代謝を行わせる事によって擬似的に蘇生させる。

これにより、人間とは比にならない再生力を有する。

ただし、その性質上、死体は脳が死んでないものしか使うことができない。

魔方陣の維持に血が必要で、定期的に血を飲まないと死体に戻る。

ちなみに死体は人族のものでなくても良い。

太陽の光に当たっても死なないし十字架も効かない、あと血から栄養を取ることは出来ないので普通に食事もしないといけない、しかも普通に歳もとる。

ヴァンパイアを造り出した魔導師の名言に「血を吸うだけの人間だ…」というものがある。

まさににそのとおりである。】


「なげえっ!!!!!」


長い上に衝撃的な事実がそこに記されていたが、図書館では静かにしておかなければならないらしく、周りの目が痛いので、少し礼をしてからページをめくった。


【龍人族:人族と龍の血を両方継いでいる種族。

獣族と同じ括りにされる事もある。】


「短いな…まぁいいか、アレな作者だし。」


どうやら残りのページはそれぞれの種族の種類分けの説明のようだ。

時間がかかりそうなのでまた今度読むことにし、本を閉じた。


『パパーこの本読んでー』


「よーしわかっ…た?」


【この異世界はふざけてる!】


(なんかラノベっぽい…伝記か?)


「よーし読んであげよう」


『やったー』



一応断っておくが、この本の最初のページをめくった時に、既に練はバルコニーに出ている。


「俺は心の中で思った。

何を基準に種族分けされてるんだテメェらァァッッッッッ!!!」


『不思議なの〜!』


(…これなんだ?種族のことばっかり書いてるけど…作者は…レイジお前か!)


そして、彼が本にツッコミを入れている裏で別の物語は始まっていた。



「勇者様、邪神の遣いを倒してくれるのですね?」


「はい、私は勇者ですから…」


やはり、そこに居たのは少女だった。

だが、今度はそのセーラー服の所々に鎧があしらわれており、左腰には剣が収められていた。


「では、頼みましたぞ」


「はい」


突然、頭に声が響いた。


『王よ…』


「うっ!ぁ…頭が!」


「どうしました?勇者様!」


「はぁ、はぁ…い、いいえ、大丈夫です。

…なんともないです……」


「は、はぁ」


「それでは…」


(…またあの声が聞こえた、一体何なの?あの声は…)

見てくれてありがとうございます!


4月8日、文章を変更しましたが、また文章を変更しました。

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