俺の使っていた剣が擬人化して女の子になったんですが
「俺は悩んでいた…
何故剣のスキルポイントが増えないのか
何故未だに剣が胸当てなのか
何故剣術スキルが増えないのか
その答えはただ一つ…
ダークネスとライト!それを俺が一度も直接使って無いからだァ!」
…そこはカッコつける所ではない事を彼は理解していないようで、一仕事終えたように軽く息を吐いた。
「ということで剣を直接使って戦おう!あと、あれだね魔物とも戦ってないからね…錬金術は…ウィンドカッターはノーカンだから!」
そう、ノーカンである。
あれではタダの殲滅だ。
どうにか最強の魔物と出会った後、何だかんだあってギャグ漫画風にやられて欲しい。
「じゃあ、ルミナ『お出かけ』しようか」
『はい!パパ!』
そうして彼は森の中を歩いていた。
何故ルミナを連れてきたのか、本当に疑問だが、
「ルミナもレベルを上げないと行けないだろう?
…え?本音?……ルミナともっと一緒に居たかったんです!反省しています!後悔はこれっぽっちもしていないがな!」
…だそうだ。
おい。その幼女はお前の彼女でもなんでもないぞ。
「お、いたな」
練の目線の先には大きな虎がいた…確かに居た筈なんだが…
『パパ!ちょっと行ってくる!』
「ちょっとルミ…ナ?」
一瞬、虎が潰したアルミ缶のようにひしゃげる。
即座に全身から血を吹き出し、倒れた。
『終わったの!』
「わぁすごい。」
(…時空魔法ってすごいなー)
俺も使えるかな?
「ザ・ワー〇ド!! 時よ『止まれ』ぇぇいッ!!!」
葉っぱが擦れる音や舞い落ちる花弁も空中で固定されていた。
まぁ、実際時間が止まった。
(錬金ちゃったよ…またか!)
『どういうことだ?我が加護を与えていない人間ごときが何故時を操れる?』
威圧的にこちらに語り掛けるマントをたなびかせた存在。
そして、彼は当てずっぽうに答えを言う。
「時空神さん?」
『いかにも!我が名は時空神!時を操る者也!』
時空神と言うからには威厳がさぞかしたっぷりなのだろうと、そう考えている読者には申し訳ないが。
そこにいるのは、かなり厨二的でちょっと際どい服を着た黒髪黒目の幼女。
まぁ、神なので実年齢は…グボァ!
「あっクロノスさん!加護の事ありがとうございます」
『加護?…成る程貴様あの子供の親か』
言葉にどんな威圧感を込めようと、高めの声とその外見で微笑ましくなるだけだ。
「はい、本ッ当に!ありがとうございます!!」
さっきから主人公がやけに素直だ。
気味が悪い。何か企んでいるに違いない。
クロノスさん逃げて。
『ところでさっきの』
「あ!あれですか?ザ・ワー〇ド!ですか?」
『そうだ、貴様は…まさかッ!?』
別に驚く事はないと思う。
何故なら、彼が着ているのは学ラン。
学ランなんて非効率な服は日本にしかないだろう。
「もしかしてクロノスさんも転移したんですか?」
『いや我は転生で此方に』
厨二病の幼女は神様で転生者でした!
属性盛り過ぎ、お腹いっぱいだよ。
「そうだったんですか!なんか親近感わくなぁ…」
少なくともロリコンと幼女が親しいと、色々あぶねぇよ。
物理的に離れろ、1mくらい。
『ふむ、我は貴様を気に入ったぞ!加護を与えてやろう』
どこに気に入る要素があったのかは謎だが、とりあえず、彼は幼女の加護を頂くらしい。
……え?時空神の加護?知らん、そんなこと。
「まじですか?」『まじだ』「やった!」
『称号:時空神の加護を獲得しました。』
……ホントだ。時空神の加護。
そして、幼女が
『では、機会があればまた会おう』
幼女が全身を使って手を振る。
本当に言葉と行動が比例しないな。
「ありがとうございましたー」
「うっわぁー!あのクソアビスと比べもんにならない位いい人だったなー!…また話したいな!」
こいつのいい人の基準が何か、少し気になる所ではあるが、それを知った所でなんの生産性も生まれないので、保留しておく。
「ふぅ、楽しかったな、また時止めたら会えるかな?
ま、いいか!じゃあルミナ行こうか!!」
『…』
しかし、ルミナは笑顔のまま動かない。
暫し、練はその彫刻のように整った顔を、まるで何かに取り憑かれるように眺めてから、意識を取り戻してこう言った。
「ルミナが…動いてない?
あ、時間止めてたわ」
「そして時は『動き出す』」
クソ程に似てない声真似だ。
それはそれで面白いのだが。
『どうしたの?パパ』
「ん?なにもないよ」
『そうなの?よかったー』
そうやってほおを綻ばせるルミナに。
(か、かわeeeeeee!!最高ですか?最高です!あぁ…感謝します……そうか、俺はこういう時の為に存在していたんだ…)
完全なる狂気、恋は盲目というが、コイツは幼女を見るだけで盲目になる。
絶対そうなるという確信じみた何かがある。
「じゃあ行くか」
『うん!パパ!』
(次の標的はあいつに決めた!何か虫っぽいな…)
意思のない複眼がこちらを覗いている。
一見すると蜘蛛のようだが、脚が8本あるので、少なくとも地球の蜘蛛ではないのだろう。
「今度はパパが倒すからな?」
時空魔法でワンパンされても困るので、念を押しておく。
『うん!わかった!』
素直なそういう子、最近少ないですよ。貴重ですよ。
「偉い子だ!」
そして、頭を散々撫でた後、その蜘蛛もどきに向き直る。
「さぁ!ぶっ倒してやる、十秒以内にな!」
高速移動『スタートアップ』
肉体が加速する。まるで周囲が遅くなっているかのようなこの状態。
取り敢えずスキルポイントを獲得する為、この蜘蛛には細切れになってもらうしかない。
『加速終了まで、3.2.1…オーバー。高速移動実験終了、終了します。お疲れ様でした。』
『スキルポイントを獲得しました』
(成る程、やっぱり直接剣で攻撃するので合ってるのか…というか体痛ぁ!?主に腕と腰辺りが痛いッ!)
やはり、ただで発動できる能力なんてものは無いらしく、全身の筋肉痛に悶える羽目になった。
「…いてて……やんなきゃ良かった…じゃあ、帰ろうかルミナ」
『うん!パパ!』
しばらくしてから。
「仕方ないなー…『疲労回復』…ましになったかな?それじゃあ、やりますかね」
茂みに隠れていたもう1人の俺がそう呟いた。
「魔物共!貴様等が何匹いても関係無い処刑方法を思いついた…ザ・ワー〇ド!時よ『止まれぇい!』」
そして、彼は止まった時の中で無双する。
せこいが、これが主人公なのて仕方がない。
『うわぁ…それはさすがに我も引くぞ…』
引かない方が異常なので、目一杯引いて下さい。
「ただいま俺~」
練が借りている(貸してくれている)宿にもう1人の練が現れた。
きっと宿屋の従業員の方々は非常に不思議な顔をしていただろう。
「おう、お帰り俺!」
すでに外は明るさを失っており、ルミナはぐっすり眠っていた。
「では」「ふん、やるか」
「「今こそ我らを『一つに』ィィィ!!!!」」
凄いエフェクトや、爆発なんて一切起きずに、水滴に水滴を近づけた時の様に簡単にくっついた。
「うん!雰囲気は大切だな!」
夜にしてよかったわなどと呟いているが、そんな簡単な合体にSEもBGMも雰囲気も要らないのだ。
「さてと剣のスキルを取ろうか!」
どうやら満足したようで、剣を取り、ステータスを覗いた。
「攻撃力強化…魔法強化…擬人化…ん?擬人化?これはとらない選択肢は無いですね!」
それーぽちっとな、とでも言うように『擬人化』の項目をクリックする。
「あ、剣が」
「こんばんは、ご主人様」
俺の目の前に立って居たのは美少女だった…もう少し詳しく説明するか。
身長はルミナより10センチ位高く髪はロングで中央から白と黒に別れている。
ちなみに右が黒だ、眼の色は…黄色と白が混ざってる、なんか神聖っぽい色だな…
……そして当然の様に…全裸だね、肌の色は黒くも白くもないって感じだ…後で服を作ろう。うん。
「こんばんは、お兄ちゃん!」
少女は生後1分でウィンクを決める。
だが、練はそんな事実よりは口調が変わった事の方が気になるようだ。
「んん?お兄ちゃん?なんだ?なんか眼の色黒になってるし…」
「ダーク!ご主人様には敬意を払いなさいと何時も言っているでしょう!」
目が白になった。
「えぇ~別に良いじゃーん」
黒になった。
「だから貴方は大雑把だと言われるんです!」
白になった。
「でもそれ言ったのライトだよね?」
黒になった…喋ってる方で眼の色が替わるのは分かりやすい。
…が、同時には話せないのだろうか。
だとすれば面倒だ。
「「もう!ばかー!!」」
「うわっ!オッドアイになった!かっこいい!」
黒白白黒オッドアイといった感じで口喧嘩が止まないので、彼は服を勝手に作っておくことにした。
効率的でよろしい。
「そうと決まれば素材を『持ってこよう』…わぁ錬金術ってべんりー」
…錬金術って何だっけ?
だが、少なくともこのロリコンは錬金術師を名乗ってはいけないと思う。
「う~んワンピースに仕上げるかなと、黒と白の羊の毛を使って3秒間アルケミングと出来た!素晴らしい出来だ!黒と白が上手くマッチしている、名前は…」
「このぉ〜ッ!」
「あぁっ痛い!やめてぇぇ!!!」
「調和せし混沌…色が混ざりきってない所もライトとダークにピッタリかもな!」
どこが調和しているのか、全く理解出来ないのだが。
この姉妹ゲンカ勃発中のお二人(?)に調和は全くないだろう。
「ほれ、プレゼントだ、裸はまずいからな!」
全裸の幼女に数分間抱き着いていた奴の発言じゃないな。
数日前の彼にこの言葉を聞かせてやりたい。
「す、すみませんご主人様」
「ありがとうお兄ちゃん!」
2人同時に礼とサムズアップを繰り出したので、ポーズが変になった。
「無礼でs「はよ着ろ」はい…」
「ふふふ、馬鹿だn「はよ着ろ」はい…」
コイツらはきっと、言い合わないと死ぬ生き物なのだろう。
だとすると着替えのこの時間で死ぬことになるが。
「どうです?ご主人様。…似合ってますか?」
「どう?お兄ちゃん、似合ってる?」
「うん!似合ってるぞ!」
「ふふっ!ありがとう!お兄ちゃん!」
「ありがとうございます。ご主人様。」
またもや同時に礼とサムズアップ、喧嘩が勃発した。
「…眠いな、そろそろ『寝るか』」
ピタリと、喧嘩が止んだ。
「私もお兄ちゃんと寝る~」
「…ご主人様の身を守るのが剣の使命ですから。」
こうして彼は女の子二人(実質三人)と寝ている、これはもうハーレムと言っても過言では無いな。
そんなことを考えながら彼は眠りについた。
王座の前で、セーラー服の少女がひざまづいていた。
この中世の時代には余りに不相応な格好だ。
「では、世界を救ってくれるのだな?勇者よ」
「はい、世界を守るのが勇者の…私の使命ですから」
毎日何回も投稿するのがキツいので毎日0時に一回投稿することにしました。
それと見てくれている皆様本当にありがとうございます!
3/18文章を変更しましたが、更に文章を変更しました。