多分これが一番早いと思います
「それじゃ行ってくるぞルミナ」
特に荷物も持たないまま扉を開けてそう言った。
『はい!いってらっしゃいパパ!』
「うん、行ってきます」
お利口さんで、手のかからない子だが…それはそれで、親としては心配なのだ。
「…さてと俺以外『通すな』」
扉に触れ、結界を張る。
ご飯はまだ作っていないが…一瞬で終わらせるつもりだから大丈夫だと自分に言い聞かせる。
(これでルミナは安全だ、あいにく俺は過保護なもんでね…ん?魔法にばっか頼らないって言ったばっかり? …しーらね、だってこれ錬金術だしな!)
「というかまだちょっと心配だわ、俺以外絶対『通すな』」
そして、謎の重ねがけを行う。
心配なのだろう、だってそう言ってるし。
それだけに留まらず、更に10回程重ねがけをする。
『称号:過保護を獲得しました』
まぁそうなるよな、うん。
そうして彼は一人寂しく砦を守っていた。
「そうだよな魔法に巻き込まれたらいけないもんな…」
正確には、魔法に似た何かなのだが…
一人で言う独り言はいつもより寂しい、それは確かだった。
「そっれにしても暇だ~……あぁ!面倒くさい直接攻めるか…」
ルミナを宿に残している事もあり、半分くらい練は苛立っていた。
「魔力『出ろ』俺に飛行の能力を『付与!』」
魔力を出す必要はあったのか不明だが…
「…おっ?浮いた!よし、やりますか!」
まぁ、ちゃんと浮いたので、大丈夫なんだろう。
「一度ここで休憩をとる!手早く済ませろ!」
ガチャガチャと鎧の音を立て、彼等はゆっくりと行進していた。
それは、ただの余裕か、それとも迷いか。
「あっれ~俺を殺そうとしたエティアルさんだねぇ、ふははははっ!!!塵も残さず始末してやる!」
そんな事を知る由もない金子練。
台詞は完全に悪役である。
ーーーさぁて今回も始まりました、金子練の3分間アルケミングのコーナー!使うのは俺の魔力だけ!それではいきましょう!
魔力『出ろ』こうやってまんべんなく魔力を配置しましょう、配置できたら呪文を唱えます、行きますよ〜?
「苦しむ暇もなく『塵と化せ』いくぞ!イ〇ナズン!」
その瞬間、爆風で全ての音が消え…
『レベルが上がりました』『レベルが上がりました』『レベルが
「あーッ!あーッ!うるさいなぁッ!『消えろ』」
まるで爆風とレベルアップの音は無かったのように消え去り残ったものは何もなかった…いや、まるで隕石が落ちてきたかのようなクレーターが…
…これはもうアウトだ!完全アウト!駄目です!完全に俺破壊神みたいじゃねぇか!
「どうか安らかに成仏『してください』」
…これでよかったんだよな
そう言って眼を閉じる彼の横顔にはどこか哀しみを感じるものがあった……お前がやったんやぞ?
「はぁはぁ クッ、まさか邪神の使いが生きていたとは!アビル様に報告を…しなければ…」
無駄に高いステータスとお高い防具のお陰でなんとか耐え切ったようだ。
…それは、幸か不幸か。誰もまだ知らない。
また、レベルがあがったな…うわっなんか怖いな『ステータス』
名前:金子練
種族:人族
職業:錬金術師(+43)
装備:龍魔の胸当て(白き剣ライト 黒き剣ダークネス)
ATK:215
DEF:375(+100)
SPD:312
INT:1935
MIN:2105(+100)
DEX:2355
LUK:25
HP:3735
MP:9125
スキル:錬金術 試練 言語理解
称号:異世界人 悪戯神の加護 運動音痴 獣人を救いし者 過保護
「はぁ、よかった…称号に殺戮者とかなくてちょっと安心したわ、うん…」
この世の殺戮者の定義とは?
純粋に疑問なのだが、彼は自分とルミナの事で頭がいっぱいらしい。
過保護:明らかに過剰な保護を行った者のみ得ることができる
(保護対象のステータスをある程度まで見ることができる)
「…ちょっと使ってみるか。」
名前:ルミナ
種族:月光龍人
職業:なし
装備:パパがくれた服
スキル:変化 龍魔法 月光龍人 魔力言語 時空魔法
称号:龍の血を継ぐもの 月光龍人 パパっ子 時空神の加護
「…スキルと称号の詳細もみるかな」
過保護の鏡。
みなさーん、これが、悪い見本です。
伸びやかに育てましょうね!!!
龍の血を継ぐもの:龍及び龍人に与えられる称号(スキル変化、龍魔法を得る)
「ルミナって龍人だったんだ…普通に人間みたいだったけど…でもそれで差別したら…親じゃ…ないだろ?」(キリッ
ロリコンがそんなキメ顔しても、幼女には持てないぞ。
(キモッ
が正確な反応だぞー?
月光龍人:月の龍の血を継ぎし龍人に与えられる称号(スキル月光龍、魔力言語を得る)
「月の龍…強そうだな!」
月にはウサギがいる…というのが日本では有名だが…地域によっては見え方も違うらしいので、この異世界では、龍に見えるのだろう。
パパっ子:パパが大好きな子に与えられる称号(父親の位置を確認できるようになる)
「ルミナ…ありがとうッ!あぁ嬉しくて泣きそう…!」
時空神の加護:時空神の加護を受けた者(スキル時空魔法を得る)
「…時空魔法ってあれだよね?時間止めたりできる…時空神様ッ!ありがとうございます!」
彼は気付かない。
わざわざ逃げるには打って付けの加護が与えられている理由を。
「ふぅ、凄まじいステータスだった…これあれだろ?
【異世界転移したんですが娘のほうが圧倒的に強いです】みたいなタイトルに変わっちゃうやつだね。
いいんだ…いいんだよ…これで…」
諦めろ、子供はいつか、親を超えるのだ。
『パパーお帰りー!』
(唯一の癒しッ!あぁ我が天使よ…)
そろそろ目の前に天使がいるという事実をちゃんと受け止めた方がいいだろう。
おまえ、死期が近いんだよ。
「ただいまルミナ」
(ルミナが居なかったら俺はもっとイカれてたかもしれないな……今も十分イカれてるけど…)
彼がソレを自覚していた事に驚きを隠せない。
凄いね。
「練どn」「『終わりッ!』」
『称号:鬼畜を獲得しました』
やっぱり彼は気付かない。
さっきの殺戮がこれに影響している事を。
「本当にありがとうございました。」
「いえいえ、大丈夫ですよ。」
客観的に見るとやばい会話だ。
突然、「ありがとうございました。」…だ。
『パパ?あのおじさん何しにきたの?』
ルミナもかなりのあざとさを誇る神技『首傾げ』を発動しなくてはならないレベルにやばかった。
「本当だね何しに来たんだろうね?」
こいつが全ての元凶なのだが、娘の手前、誤魔化す事しか出来ない。
『うん…不思議~』
(あぁ…悩んでるルミナも可愛いなぁ…)
どうしようもない奴だ。こいつは。
『称号:親バカを獲得しました』
逆になんで獲得しなかったんだこの称号……
…と練が呟き、更にルミナの疑問が加速してしまった。
その頃、生き延びていたエティアルは、やっとのことで王城にたどり着いた。
「ぁ…っ!!……アビル……様…!!」
肉体的には、既に限界だったが、騎士団長としての誇りが、そうはさせなかった。
彼は、真面目なのだ。
「エティアル?どうしたのだ?」
心配や、怒りなど、全ての感情を吹っ飛ばすような疑問がそこにあった。
「我が、軍が…敗北、いたしました…」
そして、疑問は更に加速した。
「なんだと?…ばかな……ばかな…!!」
「お待ち…下さい……金子練…邪神の使いが生きて…いました」
「あいつがか?」
その王の表情には、冷ややかな侮蔑と憤りがあった。
「はい…」
だが、面を上げることすらままならないエティアルは気付かない。
あのまま、死んだ方がマシだったのかもしれない。
もしくは…
「…はぁ………エティアルよ…」
そして、王はおもむろにに短刀を取りだしエティアルの腹に押し込んだ。
「グァッ……な、なにを…!」
奇しくも練と同じような声を上げる。
自分が、一体何をされたのか、全く理解できない。
「エティアルよ…これが治療なわけがあるまい?…わかるか?お前はもう用済みなのだよ。」
短刀を突き立てた手で、エティアルの肩を押し、地面に横たわらせる。
「ぐ…そ…そんな…王よ…」
「エティアル、最期に教えてやろう、獣人は生け贄ではない…器だ、異世界の人間を呼ぶ為のなァ?」
「それは…どういう…ことですか」
彼は、もっと早くに気がつくべきだった。
頭ごなしに練を敵と決め付けるべきではなかったのだ。
悲劇の連鎖が、ここで止まったかもしれないのに。
「ハ、ハ、ハ、ハ、ハ!物わかりの悪い奴だな、誰でもいいんだよ。死ぬのは…な?だが…身体能力が高い方が都合が色々良かったんだ…その点お前は素晴らしい!」
王は、悪魔のように笑った。
彼ーーーエティアルが忠誠を誓った、先代の王とは全くの逆、ドブがびちゃびちゃ音を立てるような音にそう感じられた。
「そ、そんな!がはッ…それでは私は今までなにを!何のために!」
「…もういい眠っておけ『スリープ』」
そんな…馬鹿な…そう呟いたまま、騎士団長は眠りについた。
「ふん、勇者が召喚されるまで生かしておいてやる、その勇者の器に成るのはお前だがな?」
広い王の間で王の笑い声だけが響いていた…
「ッ!」
『どうしたの?パパ?』
「なんか仲間が増えた気がした」
『なかま~?』
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