異海ニテ魔ヲ討チ滅ボス
いきなり土曜ににすぐは無理でした……許して!!
代わりにボリュームたっぷりでお送りします!
「……根本?」
「あの魔王……”エンディング”のことですね。」
思い出すのは、遠い空に現れた光の柱と世界に響いたアナウンス。
「……あの光と共に現れた魔王……か。」
ルミナ(アナザー)は少し考え込むような仕草をしていたが、
「あれもパパだったの。」
その瞬間、その姿勢のまま硬直することになる。
「は?」
一瞬で駆け巡る思考。
「……パパ?あれもって…………え、金子錬?」
ルミナ(アナザー)は混乱していた。それも当然。『カネコレンは宿敵だ』という自分本来の感覚と、『金子練は大好きなパパ』という感覚が己の中に混在していたからだった。
「ま、待て。待って欲しい。自然に受け入れていた。金子錬が自らの父であるという衝撃事実を。
え?あいつ自分の娘殺そうとしてたの?しかも求婚?考えてたっぽいし?普通にヤバいでしょ笑。」
「あぁ!ルミナさんのメンタルが!!」
「あ、そっか。そっちのルミナはパパと仲良しじゃなかったの。ルミナはパパと仲良しなの!!」
「……あれ、おかしいな。なんだこの記憶……子供がいる……?何してんだッ!!あのロリコン野郎ッッ!!!!娘に手ェ出すって常識的におかしいだろッ!!」
ギャルになったりヤンキーになったり、かなり忙しいルミナ(アナザー)だったが、大きく息切れしつつも、己の記憶とアイデンティティをしっかり確立し、
「何かあったら絶対私に言うのよ!?なんだろうと関係ない。私が切り刻んでやるから。」
ルミナを諭すようにそう言った。
「愛があるから大丈夫なの!」
「…………くっ、ちょっと分かるのが逆にストレスだわ……。」
「……と、2人がお取り込み中の合間に解析終了です。」
シルフィアは魔導記憶を操作しつつそう言った。
「何か分かったの〜?」
「えぇ、憶測に過ぎない仮説ですが、少し見えて来ました。お兄様に連絡します。」
続けて、練に結果を伝えるべく解析結果を適した情報形態へと変換する。魔導記憶って動画編集ソフトみたいなことできたんだ……。
「……お兄様って呼ばされてるの?」
「私が勝手に呼んでるだけです!!それに、関係性はもっと進んでますから♡」
「…………爛れてる。この世界は。」
さて、一方”プレデター”との戦いは────
(1発は受けれた……!でも。)
季は剣を振り抜いた姿勢で歯噛みする。
「そう。一撃じゃ済まないこと、理解していますよね?」
その答え合わせをするかの如く、”プレデター”は更に追い討ちをかけようと試みる────
「そっちこそ、俺が黙って見てると?」
だが、即座に練が”プレデター”の正面に立つ。投げ棄てられたイミテートキャストの内、二振りを回収し、そのまま斬撃を加える。
しかし、火力不足。その一振りは”プレデター”が手を翳すだけで容易に崩れ────中に仕込まれた魔法が効力を発揮する。
(氷。しまった、受けて剣が壊れたんだ。)
発動する魔法は『氷獄』。周囲の空気を巻き込みつつ急激に冷却し、”プレデター”は一瞬のうちに氷塊の中に閉じ込められる。
(でもこの程度────)
「「障害にならない。」────なんて言うつもりか?」
氷に閉じ込めたくらいじゃ時間稼ぎにもならない。事実、氷の檻は既に破壊され、”プレデター”は眼前に迫っている。そんなことは百も承知。
(属性付与・熱。)
残ったもう一振りに属性を付与し、斬撃。そのコンマ数秒の出来事。”プレデター”に与えられた『中に魔法が仕込まれている』という先入観は、『剣を破壊しないよう受け止める』という判断を容易く導き出させた。
(熱……?!)
気付いた時には、既に遅い。
「俺が障害だ。」
純粋な高熱を受けた氷は一瞬で溶解・昇華する。
水蒸気爆発。固体だった氷が気体になることで一気に膨れ上がり、周囲を再び煙幕が覆う。
「また煙幕……!芸のないこと!!」
「わかってるさ。一芸じゃ勝てないことは。だから、」
その時、突如”プレデター”の足元がすくわれる。
「……これは!?」
足場が消失し、プレデターの視界に映ったのは、
「百芸くらい用意しといたぜ。」
穴の壁面にびっしりと、百は優に下らない。数多の複製品。
(地上での交戦はここに意識を向けさせない為のブラフ!?)
咄嗟に身を捩ろうとする”プレデター”の肉体に電流が奔る。軽度の麻痺により肉体のコントロールを一瞬手放したその瞬間、”プレデター”は見る。
壁面だけではなかった。空中にも夥しい数の微細な『刃』が滞留している。それを破壊したから電流を受けた────
「────やばいですね。」
追い込まれた。そう自覚したその時、
「はあああああああっっっっ!!!!!」
────時は満ちた。空から黒が降る。
「…………っ。」
「練くんが作った最大のチャンス!!ここで倒す!!!」
季が大剣を上空から打ち下ろす。反応が一瞬遅れ、”プレデター”はその攻撃をモロに受けた。
(……彼女には剣が炸裂しない……なるほど。)
その最中、背中に魔法を受けつつ”プレデター”は観察していた。
「少し無茶をしますか。」
季の二撃目、数多の行動阻害系の魔法効果を受けつつも、”プレデター”は季の剣を受け止める。無理やり能力値の暴力で身体を動かしたのだ。
予想外の自体に驚くよりも先に、季の身体は墜ちていた。
「がぁっ!!」
穴の底に打ち付けられ、息が漏れる。季が剣を振った勢いのまま受け流し、地面へ叩き付けたと気付く前に、”プレデター”は穴の底の季へと接近していた。
(と、季ちゃんを先行させて俺の機雷を避けた!?)
咄嗟に壁面の刃を操作して壁を作るが、やはり大した障害にはならない。
「季ちゃん……!!」
焦りつつも、練は壁面の剣を抜き取りつつ、飛び降りる。
「焦らなくても、すぐにメーンディッシュに行きますよ。」
そう余裕そうな表情を浮かべるが、その表情を一振りが断つ。
「これで私を倒したつもり?舐めないでよ。」
季が大剣を投擲したのだ。
そのまま、まるで練と鏡合わせかのように剣を抜き、壁を蹴り駆け上がる。
くるり。自由落下の勢いのまま、”プレデター”は身を捩り一回転する。
(あら、挟み撃ち……。)
至極真っ当な事を改めて書き記そう。2対1なら、2人の方が圧倒的に有利。
────完璧なコンビネーション。攻撃の瞬間は寸分の狂いも無く合致。同時に砕け折れた剣から炸裂する2色の極彩色。その物量を前に、”プレデター”は防戦一方にまで追い込まれる。
極彩色の多重爆発により、穴ごと砂浜が全て蒸発し、周囲を白煙が包み込む。
「「はぁ、はぁ……。」」
長距離を走り終えたマラソンランナーのように膝を付き、肩で息をする2人。
「……うっ!!」
「季ちゃん!……限界突破の副作用が……。」
「でも、流石にあれで倒せてないなんて。」
それは所謂、フラグというやつだった。
「……マジか。」
「敬意を表しますよ。不調とはいえ、この私を本気にさせたこと。」
その干上がった砂浜の上を、ゆっくりとゆっくりとこちらへ接近する姿、それは正に魔王だった。
「……ど、どうすんだよこれ。」
その時だった。
『お兄様、手短に伝えます。意識を失う事のないようにお願いします。』
その言葉は一見救いの手を差し出すようでいて、
「は?意識を失うってどういだだだだだだだだッッッッ!!??!!?!!!!!」
実際は拷問だった。脳裏に存在しない記憶が溢れていく。さながらアニメを1万倍速で見ているかのようで、
「れ、練くん……?」
「いつ映像を圧縮して送れるようになったの??念話って便利だね……。」
頭痛を抱えながら練は不敵に笑う。忠告通り意識を失う事は無く、シルフィアの作戦は完全に脳内にインプットされていた。
「そちらの準備はよろしいですか?まぁ、そこの方は準備どころか、動くこともままならないでしょうけども。」
「くっ……。」
「季ちゃん……その通りだ!!」
毎度恒例。練くんの大劇場が始まる。
「「……ん?」」
さぁ、観客は何も知らされていない季さん2人。
「流石に、俺も季ちゃんのサポート無しだと、勝てないどころか、勝負にもならないだろう!!」
(本当にそうかな?)(本当にそうでしょうか。)
季達は訝しんだ。
「だから夏らしく。」
そして、練は新たにイミテートキャストを使用し、とあるものを作り出す。
それは、正に夏の風物詩に相応しい存在。
「ビーチフラッグで締めよう。」
……いや、確かに夏の風物詩ではあるが。
「「なんで??????????」」
まぁ当然の反応だが、”プレデター”は一味違った。
「…………まぁいいでしょう。なら、ビーチフラッグに負けたら死んでもらいます。」
なんと、乗り気。勝負ならなんでもいいのかと言いたくなるほどだ。
「もちろん、『金子練』の命を賭けよう。ルール説明は必要かい?」
「えぇ、後出しで条件を追加されるのは不快ですから。」
「つまり、俺と勝負する意思はあると。」
旗を砂浜に突き刺しながら練はそう問いかける。
「当然あります。ルールに則り、その上で貴方を殺してみせます。」
「なるほど、なら──────」
さて、少し不自然だが何気ないその会話。その最中。
それは、『対戦相手の肩を叩く』という行為は、これから戦う相手にエールを送るという意味合いなら全く不自然ではなかった。スポーツマンシップに則った気持ちのいい行いだ。
「────『勝て』。」
しかし、その意図は、目的は、「スポーツマンシップなんてクソ喰らえ」だと言わんばかり。正々堂々とは真逆の行い。
「…………私、いつの間に、旗を。」
それは、紛れもなく金子練の『錬金術』だった。
”プレデター”の勝利に対する貪欲さ。それを完成させたのだ。
「俺の負け、だな。」
……一瞬、場に静寂が訪れる。
それもそのハズ、あろうことかこの男、自分の命を賭けた勝負にワザと負けやがったのだ。マジでどういうつもりだお前。
「……は?いや、そんな、どういうつもりです?」
突如与えられた勝利。勝利に貪欲だからこそ、その勝利を穢された怒りは果てしない。
「命を賭けた勝負に、俺が負けた。ただそれだけの事さ。」
「ふ……ふざけるな。こんなの認められるわけが……!!?」
その微細な違和感。しかし、練にとってはそれで充分。
「自我を見せたな?」
「ぐがっ!?」
”プレデター”の胸を剣が貫く。それは、万の術を消し去る剣だ。
「『万術切断』。」
その効果により”プレデター”から剥離した黒い影は地べたに這い蹲る。
「さぁ、こんな舞台を用意してくれた、矮小な魔王様のご登場だ。みんな拍手で迎えてやってくれ。」
それはこの世界を生み出した”エンディング”。
金子練のそっくりさんだった。
「貴様ァ……!!!!よくm」
────正に瞬殺だった。振り向きざまに一蹴。そのたった一撃が”エンディング”の首を瞬きの内に刈り取る。
「下らない三下。遊ぶにも値しませんでしたね。」
『『終末を齎す魔王』”エンディング”が消滅しました。』
無機質なエンディングコールと共に”エンディング”は消滅した。実に呆気なく、『終末を齎す』という二つ名とは相反した最期だった。
「……確かに頂きました。金子練の命。」
そう呟く”プレデター”の表情がどんどん影に包まれていく。それは”エンディング”が創った箱庭が消失していく合図であると同時に、まるで「興ざめ」だと言わんばかりだった。
「次逢う時には、本気で殺り合いましょう。」
そう言って空間に生まれた歪みに腕を振りかぶる”プレデター”だったが、
「ちょいまち。」
そんな彼女の肩を練が叩く。
「せっかく夜の海辺なんだし、花火してかない?」
確かに、花火をするには悪くないロケーションだった。
「どう?超綺麗でしょ。」
シャワーっっ。即興お手製の花火は思っていたよりも良い出来で、じめったい夏の夜を煩わしさを忘れるほどだった。
「ふん、下らないですね。」
そう言いつつ、色が変わり始めた花火に眼が離せない”プレデター”だったが、
「じゃあいいよ別にぃ。さっさとどこへでも行きなよ。
……おっぱい魔王。」
なんて事を季が口走ってしまい、魔王の怒りの業火が季を襲う事となった。
「あちあちあちあち!!!」
「花火を人に向けてはいけません!!本行為は専門家の指導を受けており、また季ちゃんは特殊な訓練を受けております!!」
そう言っている間に花火の勢いは衰え、最後燃えカスになった残り火がポトリと、砂浜に落ちる。
その使い終わった花火をポイとバケツの中に放り込み、”プレデター”は頬杖を突く。
「……チープな火です。華美さの欠片もない。」
「ヒッドイなぁ、ダークとライトが身を粉にして作ったのに。」
ゾッとダークとライトの背筋が凍る。
「えっ、何それ……ホントに知らないんだけど。」
「これ、私たちが使われてるんですか……?」
「今更だろ。」と読者の皆様もお思いだろうけども、想像してみて欲しい。自分の切った髪とかを友人がぬいぐるみの綿替わりに詰めていたら。
……ゾッとするね。
「花火に色をつけるには、特定の炎色反応を起こす金属を使う必要があるんだよ。あと、派手さを出す為にも金属を使う必要がある。」
「「だからって人の身体を花火にします(する)?!」」
「でもさ、あの光景はダークとライトのおかげだぜ。」
そう指し示す先には2人のルミナが舞っていた。
一方は花火の色に合わせ、ダイナミックかつ、規律良く丁寧に。
もう一方はまるで輪唱が如くその姿を追うように、しかし、伸び伸びとハツラツとした動きはまた違った印象を皆に与えた。
火が宵闇に描くのはまるで二輪の花。その花が消えると共に、2人はまるで鏡合わせのようにして動きを止める。
「どう?上手く踊れてた?」
「えぇ、とても。」
その圧巻の光景を前にして、拍手を贈らずには居られない。
「「許す!!!」」
「お待たせしました!打ち上げ花火術式、展開します!!」
そして、花々が空を彩る。宵闇色を背景に極彩色が所狭しと自己主張をする。
「たーまやーなの!」
「こういうエンディングでいいんだよ。こういうので。」
これにて異界の海は御開き。ご拝読感謝致します。
いつも読んでくれてありがとうございます!!
ちなみに『終末を齎す魔王』”エンディング”の弱点は、『終わり』です。終わりを否定することにより、終了した物語に続きを与え、死すらも否定できます。
自身の世界線が既に終末を迎えてしまっているため、能力によって他の終了した世界線に相乗りし、自らの存在を繋いでいます。ただし、”エンディング”の能力によって歪められた世界線は、矛盾や齟齬が増えて滅びます。
言わばアナザー世界線の『ラン』であり、ルミナが魂の片隅に残らなかったが為に、破壊神ではなく魔王にまで堕ちたのでしょう。




