異海ニテ魔ノ盤上ニ踊レ
新年、明けましておめでとうございま──す!!!(激遅)
何故毎年恒例あけおめ番外が生まれなかったのか。それは無限にバイト先に拘束されてたからです。えぇ、そうに違いありません。なんたって12月は99時間も働いてましたから。(もちろん11月もそう)嘘じゃないですよ。給与が見た事ない額になってましたから。
あと、このお話が結構長くなっちゃったって、そういうせいでもあります。
まぁ私から申し上げたい事はですね。毎週土曜日上げるから許して!!!!ねぇお願い!!!許して!!!!
カッ────っと空に紅く光の柱が伸び、夕焼けを更に紅く、真紅に染め上げる。
その終末じみた異常な光景を目にし、夏の温度に浮かれていた(とある魔王を除く)一行は、まるで冷水でも浴びせられたように表情を引き締める。
『『終末を齎す魔王』”エンディング”を確認しました。』
それと同時、世界の声がその魔王の正体を告げる。
「…………魔王のアナウンス……!!」
「へぇ、彼も魔王なんですか……面白い。」
まるでそれを待ち侘びていたかのように、恍惚した表情で、”プレデター”は光の柱を指差し言い放つ。
「ならサシで殺り合いましょう。持て余した力を解放する喜びを分かち合えるハズです。」
『残念だが無意義な戦いは嫌いでね。何故このビーチで仲良くじゃれ合ってるかは知らないけれど、本来の役目を果たしてもらおう!!』
(…………本来の、役目?……ッ!!)
その言葉は、練の中で燻っていた疑念を確信に変えるのには充分だった。
ルミナとルミナ、季、ダーク、ライトに自らの魔力を伸ばし、シルフィアの手を取り叫ぶ。
「────シルフィア!!『転移を』!!!」
魔力を伸ばした事で『1グループ』と定義された練達の転移は一瞬で完了。一瞬にしてその場を離れ────
「………………あら。」
そのすぐ直後だった。”プレデター”が砂浜を隕石落下地点そっくりに変えたのは。
「逃がしましたか。まぁ、追いかける楽しみができたということで。」
「……お兄様、今のは。」
シルフィアは練に何か言いたげな様子だったが、窮地を脱してハイになっている練にそれを聞く余裕はない。
「間に合ったみたいだな!流石シルフィア、俺が言うまでもなく転移を────」
しかし、自らに向けられる殺意を感じ取る事はできた。剣が鞘から抜け放たれる微細な音。それを感じ取るや否や、2人を喚ぶ。
「────ダーク!ライト!」
『『共進化形態ッッッ!!!!!』』
その言葉を待っていたと言わんばかりにダークとライトがその身を練の中に注ぎ込む。
『言われずとも!』『準備万端です!』
顕現した剣でその一撃を防いだ練は、少し微笑んでいた。
「なるほどね、ヤツの言っていた『本来の目的』ってこういう事ね……。」
そして、その一撃を加えたのは、ルミナ(アナザー)だった。
「予想はしてたけど。あーあ、話が早くて助かるな……!!」
そう皮肉めいた恨み言を吐きつつ、冷静に対象を分析する。
身体──特に眼がぼんやりと発光。身体の一部が鱗状に変型。瞳孔は縦長に開いている。
(……龍人化。龍5%ってとこか?)
……と、そんな練とルミナ(アナザー)に割り込みをかけるように、ルミナが上空から奇襲をかける。
飛び退くルミナ(アナザー)を横目に、
「……パパ、ここはルミナに任せて欲しいの。」
ルミナは練に耳打ちをする。
「……ルミナ。」
「私もお供します。丁度剣術の指南を受けたかったので!!」
チーム分けは完了。練は早速踵を返し、号令をかける。
「……よし、行くぞ季ちゃん!」
「うん!協力して黒歴史をぶっ飛ばそう!!」
「カネコ……レンっ!!」
ルミナ(アナザー)が2人を無視し、練を追おうと試みるが、会話中に無詠唱で組み立てていた魔法を即座に適用し、シルフィアは生まれ変わる。
一瞬。最終兵器・ティターニアを手にした長身の女性が姿を表し、練を追跡する移動経路を阻むように一閃を放つ。
それを易々と回避した後、ようやくルミナ(アナザー)は邪魔者達を視界に捉えた。
「ここは通しませんよ。」
「いざ尋常に勝負なの!」
「邪魔するなら……倒す!!」
さて、練と季は数十秒の間、ずっと走り続けていた訳だが、
「季ちゃん。」
それについて練が一言伝えようとしたその時、季は笑顔で首を振る。
「分かってるよ。戦いの余波が邪魔にならないように、なるべく遠くに行くんでしょ?」
「それは勿論。あともう1つ。」
練の身体から糸のような物がはみ出す。それはそれぞれが意思を持つかのように蠢き、形になる。
季は、見覚えのあるその形を思わず口にする。
「時空司剣……?」
「形だけだけどな。」
「形だけで充分だよ。」
季は手渡されたそれをギュッと握り締める。
「気持ちが、1番嬉しいから。」
思い出に浸る暇もない。それを理解しているから即座に『停滞』を使い、実質的に不壊を付与した状態にする。
戦闘準備完了。
「その『気持ち』とやらで勝てるんですかねぇ?」
タイミング良く、件の魔王は2人の元に現れる。テンポの良さに運命の悪戯を感じるが────それは、何度も打ち壊してきた。この主役。この主人公。金子練が。
「じゃあやってみようぜ。返り討ちにしてやるよ。」
一瞬の沈黙──────最初に動いたのは”プレデター”だった。
「『イミテートキャスト』!!」
その初動を砕かんとして、練は大量の剣を背後に多重顕現させる。愛剣の外殻を持つ魔力の塊は、練の緻密な魔力制御によって自律飛行する武装と化す。
それらを一斉に魔王へと特攻させるが、
「ぬるい。」
その腕の一振で模造品達はまるで砂場の城が如く、一瞬で砕け────
「『霧中』。」
一瞬にして周囲を白い煙で包み込んだ。
(……なるほど、武装内部に詰め込んだ魔力を魔法に変換したんですね。それで目眩し、と…………)
それを食らった瞬間、”プレデター”はその微細な違和を既に感じ取っていた。
(武器の外殻を撒き散らす事によるジャミングと、こちらの動きの阻害。無駄なく見事ですね。)
手放しの賞賛。”プレデター”の実力を持つ者からすれば、その賞賛がどれ程のものか理解できるだろう。
「しかし、無意味。」
しかし。しかしなのだ。”プレデター”が所有する特権、『完全独立論理世界』によって世界と自身を隔絶し、既存のルールや存在を無視する。
よって、自身に不利益をもたらす魔法や能力、物理的干渉による目隠しや行動阻害さえも全て無意味────
「……ん……?」
そのはずだった。しかし、外界の魔力感知、不能。煙幕の透視、不能。
(……私の能力が機能しない……?!この霧にそんな高尚な効果が────)
そう考えるよりも先に、
「あったとしても吹き飛ばすだけです!!」
”プレデター”は地面を強く踏み締める。それだけの行為で蜘蛛の糸が如く絡み付いた霧を一瞬で霧散させる。
(目隠しがあっても負けませんが、)
────魔王には余裕がある。事実、能力値で2人は”プレデター”に敵わない。
(せっかく面白い事があるなら、見えなきゃ損です。)
「さぁ、どう来るか。」
その散らされた霧の影から、それを掻き分けるようにして黒い影が迫る。
「はぁぁぁぁっ!!!」
まるで手頃な木の棒でも振り回すかのように軽快に振るわれた大剣。
季は既に能力を全開放している。そのため軽い一閃一閃が全て必殺の一撃────
「愚直だね。」
しかし、魔王の自信揺るがず。
季の一挙一動全てに反応し、その一撃一撃全てを同等以上の一撃で相殺していた。
(武器無しなのに私と攻撃力が互角……!!)
「……やっぱり、私ひとりじゃ勝てないね。」
あっさり、季はやけに簡単にそう弱音を吐いた。
「つまらないですね。降参ですか?」
苛立ちを感じた”プレデター”は拳に篭める力を更に増大させるが、次の季の言葉に目を見開く。
「ううん、ひとりじゃないから。」
「──────キャストッ!!!」
季と”プレデター”が拮抗していたのはやり取りの密度に反して数秒程だった。だが、それは練が仕込みを終えるには充分な時間だった。
複数生成した剣を”プレデター”に向けて全弾射出。
(…………油断した。)
一瞬、ほんの一瞬だけ”プレデター”がフリーズする。
(この隙ッッ!!!!逃さない!!!)
その一瞬に季は渾身の振り下ろしを捩じ込む。
だがしかし、その『フリーズ』はある種の予告に過ぎなかった。
それは、まさに一瞬の出来事だった。さっきまでの雰囲気が正に『遊んでいる』と理解り、その豹変っぷりに、2人の背筋がゾワリと震える。
ガチンと、音が鳴ったと認識した時には既に、季は剣を握ったまま宙を舞っていた。
(…………飛ばされたっ……!!上に!!!)
時空魔法で空中に足場を生み出し、水泳のクイックターンが如く地上へと帰ろうとした季が見たのは、
(ッッッ!!!!!!)
汗が視界の先へと滴り落ちる。
それは、練の剣を全て破壊せずに投げ棄てた上で、こちらに拳を向ける魔王の姿だった。
(避ける)────可能?リスク大。
(受ける)────不可能。
(足場解除)────そのまま飛ばされ帰還困難。
(迎撃)────ギリ可能。
腹は決まった。
「『限界突破』!!」
全ての能力値を爆上げする代わり、一定時間経過後に行動不能になるスキル。その真の全力を以ってして、
「こンのォォォッッッ!!!!」
打ち込む一撃。その一撃は眼前にまで迫っていた『飛ぶ打撃』を完全に打ち消した。
ホッと一息、安堵したい瞬間だったが、季の表情は暗い。
(こんなところで使わされるなんて……!!)
季の全力の一撃は”プレデター”の『ただの攻撃』と同等。なのに『限界突破』の時間制限が首を絞める。
(このままじゃ……殺される……!!!)
一方、ルミナ(アナザー)がシルフィアとルミナを敵と、そう定めたところから物語は再開する。
「参りますっ!!!」
その膨大な魔力を湯水のように使い、身体能力を馬鹿みたいに引き上げた結果、ただの『近付いて斬る』行為は必中必殺の域にまで到達する。
「……!!」
だがしかし、足りない。経験と技量が圧倒的に。
視線、あるいは予備動作から動きを予想され、攻撃を受け止められる。
(……いいえ、当然ですね。どれだけ私が速く強くなっても、剣術については────)
「まるで素人ね。私が優しくしている内に手を引きなさい。」
『素人』実に正当な評価だ。だからこそ、シルフィアはここに立っている。自分の実力不足、その欠点を埋めるまたとないチャンスだから。
「そう言われて「はい」と頷くなんてっ!!ありえません!!」
それにシルフィアは────
「……諦めが悪いわね。」
「それ、私の自慢なんです。」
────「不向きだから」「初めてだから」「1度やって無理だったから」なんて月並みな理由では諦めない。
(だって私は諦めてきた。)
それは、練と出逢う前の記憶。家族を遠ざけ、自分の部屋という密室に自ら閉じこもり、死を待つばかり────実際には、その『死』に抗ったからこそ、シルフィアは今こうして生きているのだが……
その出来事は、シルフィアに不屈の精神を与えた。
(一生分の諦めはあの時使い果たした。)
「だから、諦めません。食らいついてみせます。貴女にも。」
「そう。そんなこと自慢しない方がいいわよ。」
「そうですか?」
時にして数瞬。しかし、数十という濃密な打ち合いの最中、シルフィアは加速度的に実力を伸ばす。
(……この子、とんでもないスピードで強く!!)
…………否、慣れていく。延びた手足、増加した筋肉。完成したてのその器に、隅々まで『シルフィア・エルティ』が行き渡っていく。
「何もせずに諦めるなんて、美徳ではありませんから!!」
その先頭の最中、シルフィアは指をパチンと鳴らす。全く『戦闘』にそぐわないその行為、次の瞬間、ルミナ(アナザー)はその意図に気付く。
「ッ!!」
突如影が落ちる。その影は夜の訪れによるものではなかった。頭上から降るそれを反射的に二刀で真下へ受け流し、そのままバネのように飛び退く。
(空からの攻撃────この魔力は!!)
砂煙の中から黄金色の発光体が姿を顕す。
その姿を捉え、一言呟く。
「……この世界の私……。」
「んのっ!!!」
間髪入れず、ルミナは地面に腕を突き立て、砂埃を巻き起こす。
(砂煙……!砂の中に潜った?!次の奇襲の為────)
咄嗟の予想に従い、ルミナの位置を把握しようと魔力感知を全開にした。その時────
「…………ッ!?」
────否、その隙に、
「余所見してていいんですか?」
『最終兵器』使用中のシルフィアが砂煙を突っ切って目の前に肉薄する。
(────しまった。)
防御────あわよくばカウンターを合わせようと剣を動かすも、時すでに遅し。確実に間に合わない。
「『万術切断』!!」
『万術切断』。文字通り全ての魔術を一撃で斬り裂く絶技。斬撃の軌跡に存在する総ての法術は全て逆位相の魔法をぶつけられて消滅するのだ。
(そしてそれは、肉体の魔力器官も例外ではない。)
シルフィアの目的は『目の前の少女を無力化すること』。故に、四肢の魔力器官を断ち、行動不能にすることを選択したのだ。
そしてその選択は、誰も予想できない結末を迎える。
「────入った!!」
シルフィアの剣の軌跡が、ルミナ(アナザー)の右脚と両腕を裂くと、細身の剣には不相応な「バジッ」という鈍い音がする。ティターニアが魔法を斬り裂いた音だ。
がくり、右脚の違和を感じるまでもなく、世界が反時計回りに回る。左腕が制御不能に陥る。右腕の感覚が消える。
そして、思考にかかった『モヤ』が消える。否、消えたのは────
「これで1本。といったところ?」
魔力器官と切り離され、動かせすことがままならないハズの右腕に握る剣。それがシルフィアの頬を掠め、直前で止まった。
「…………あそこから動けるんですか。どうやって?」
消えたのは、頭のモヤ、魔力器官の断裂を含めた身体の不調全てだった。流石に欠損した腕や眼は治癒しなかったが、お陰でルミナ(アナザー)は自分の意志を取り戻す事が出来た。
「私にもよく分からない……けど、常識じゃ測れない事もあるって、勉強になったでしょ。」
そうはぐらかしながら、ルミナ(アナザー)は剣を鞘に納める。それに倣い、シルフィアもティターニアを解除。身長もロリサイズに戻る。
「えぇ、ズタズタにした魔力器官を即座に治せるなんて、会ったことありませんよ。」
さて、ここでクイズです。魔力器官がズタズタになった後、適切な処置を施さなければどうなるでしょうか!
ちなみに魔力器官と血管は大体役割が一緒です。
「…………普通死ぬわよね?」
正解!!良くて末端部の壊死、最悪死にます!
「いえ、治すので死にませんが、3秒かかります。」
ついでに「周辺部位を消し飛ばしてから治すのが1番早いです。」なんて無駄知識をプレゼントしてくれるけど、それ苦い顔して聞き流す以外できる反応ないでしょ。
(ホントになんで治ったの……?)
「あれ〜?シルフィアちゃん負けちゃったの?」
……と、地面からルミナが顔を出す。
「……潔く認めますよ。私の負けです。」
「潔く」と言う割には頬を膨らませていたが、行動の切り替えは早い。
シルフィアはルミナ(アナザー)に手を差し伸べながら、魔導記憶を再展開する。
「何か不調はありませんか?一応私も診ておきますが────」
「いいや。そんなことよりも、こっちの……金子さんに加勢しましょう。あの魔王は危険です。」
そう言いながらルミナ(アナザー)は遠くの空を見つめる。轟音に次ぐ轟音。激しい戦闘が起こっている事が読み取れる。
……ふと、同じく空を見つめていたシルフィアが気付く。
「……ちょっと、空が薄暗くなってませんか?」
「……確かに、少しだけ……」
「戦う前の86%くらいになってるの。」
「「…………。」」
月光龍故の特性か、光量をかなり微細に読み取れるらしい。シルフィアは「ルミナちゃんが言うなら間違いないですね。」と告げ、2人の方へと向き直る。
「……暗くなってるからどうしたというの?」
「とりあえず、貴女の身体を診ながらお兄様に状況を伝えます。多分、全員で協力してあの季さんっぽい魔王を倒しても、根本の解決にはならないと思うので。」
なんと、まだ続くらしい。
いつも読んでくれてありがとうございます!!
え、この番外編まだ続くんですか?!レンくんの番外は?!!!!???




