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勇者として異世界転移したけど裏切られたので錬金術師やってます!  作者: HKmE
『惑星』

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異界ノ海・開キ顕現ス

さて、まだ11月になっても続くこの番外編。番外編を2つも抱えて本編を連載できるのでしょうか!!

……ってごめんなさい僕でしたね。頑張ります……。

さて、前回のあらすじ。夏を満喫していた練たち一行の前には、練たちをこの世界へと連れ込んだ例の渦巻きが現れ────その渦巻きから人影が2つ放り出された。


「…………ここは……?」


勢いよく渦から吐き出された長身の金髪の女性は、受け身をとっていたらしいが、ダメージを殺しきれなかったらしく、周囲を見渡しながらそう呻いた。


「……あら、ここはどこですかね?」


それと対称的に、小柄な黒髪の少女は、ふわりと地面に着地しながらそうこちらに問いかける。


「……な……に……??」


「……俺の……俺の、勘違いか……?」


完全にキャラデザ被りだからだろうか、季はその黒髪少女の姿を目の当たりにして目を丸くし、息を呑み、同じく練も頭を抱える。


「……!貴様は……!!」

「……あなたは……。」


その瞬間、同時に女性と少女が練の姿を見つけ、各々違った表情を浮かべる。


(忘れもしない……あのとんでもない蛇足デカパイが付いてるのは────)


「……昔の季ちゃんと…………??」


練はとんでもなく失礼な注釈を脳裏に浮かべながら、黒髪少女を指してそう呟き、次に金髪の女性をジッと観察し────


「…………えっと、ルミナ?」


────何故か、そう結論付けた。

そして次の瞬間、ルミナ(仮)と季(仮)が同時に口を開いた。


()()()()()ッッッッ!!!!!!」

「……誰でしたっけ?」


片や腰に下げた剣を抜き放ち、練に対して臨戦の構えを取り、片や全く記憶にないといった表情。


「ど、ど、どゆこと!?」


全くもって予想と正反対の2人の態度に驚く練。そんな練の態度なんか知ったこっちゃないとばかりに、


「シラを切っても無駄だ。貴様がどういうつもりかなんて事はどうでもいい。」


ルミナ(仮)はその抜き放った剣を構え、凄む。


()()()()()()()()()()()()()()()()()容赦しない!!またあの時と同じように────」


そこまで言いかけて────


「…………?!」


ルミナ(仮)の身体が、口が、まるで凍りついたようにピタリと止まる。


(う、()()()()……一体何が……!!!)


「あなた、誰の獲物を狙ってるんですか?」


時に……あなたは飢えた肉食獣────ここではライオンだとしよう。それが隣に鎮座している状態で、普段通りの生活をまともに行えるだろうか?

当然、不可能。そして季(仮)はそれのめっちゃヤバい版だ。

そんなヤバい彼女が放つ威圧感。それはその場の全員を黙らせるに足る威力。


「彼──────…………。」


そんなヤバい彼女、およそ10秒沈黙。


「…………カネコレン?」


見かねたルミナ(仮)は助け舟を出した。

しかし、練はその助け舟を傍から眺めて鼻で笑う。


(いやいや、確かにこの季ちゃんはそういう目してるよ?俺の顔面を凝視して必死に思い出そうとしてる。でも普通に考えてさ、命を賭けて戦った相手を忘れるなんてそんな馬鹿なこと)


「そうそう。レンくんは私の獲物です。」


忘れられてて草。


「えええぇぇぇぇぇぇ!!??????!!あれだけ死線を潜り抜けた仲なのに、忘れる????!!??名前!!!?!!!」


「ごめんなさい。名前を覚えるの好きじゃないんです。」


「普通そんなにこやかに言うか!??」


「あははは……で。」


ゾクリ、背筋を異形が這い上がるが如く、身体に悪寒が走る。


「ならないんですか?神に。」


天性のバトルジャンキーなんて生半可な話じゃない。


「……ッッッッ!!!!!」


戦慄するも既に遅い。


「じゃあ、殺しますけど。」


命を命とも思わない。ただの暇つぶし。

不安を嫌う命運を握る魔王は、不安要素を遊び感覚で排除する。


(そうだった……魔王の季ちゃんはこういう性格だった……!!)


その時だった。


「ちょっと待ってもらっていいかな?」


なんか、同じCV(全くの未定)が聞こえたかと思えば、


「…………はい??私に言ってます?」


「唐突に人の黒歴史晒し始めたかと思えば、挙句の果てには練くんを殺す……?」


いきなり能力の開放。長期戦も見据えて『限界突破』こそ使用していないものの、その存在感を一瞬にして24倍以上に跳ね上がらせる。


「人の神経を逆撫でするのも大概にして貰っていいかな?!」


何故か突然同キャラ対決が発生した。

……別に何故かでもないか。互いに戦う理由は確かにある。


「へぇ、私に口が利けるんですね。別にいいですよ。そこの────……彼の先にあなたと戦っても。殺す順に拘りはないので。」


「上等……ッ!!」


1人はプライドと最愛の者を守るため、1人は────ただの暇つぶしのため。

2人がぶつかり合うその瞬間、


「……えっと、バチバチの所悪いんだけど、1ついい?」


戦力的場違いな主人公、挙手。


「練くん?」「なんですか?」


「ちょっと世間話いい?俺さ、この空間から出ないと神になれないんだよね。」


突然自語りを始めたかと思えば、練は自ら季と季(仮)……否、神咲季と『命運を握る魔王』”プレデター”の間へと────つまり死地へと割って入る。


「練くん?!何を……!!」


季は気付いていた。この場にいる誰も、少しでも”プレデター”の機嫌を損ねれば殺されてしまうということを。

だからこそ、季は敢えて目の前の黒歴史……『全盛期の自分』に対して、喧嘩をふっかけた。

そんな死を前にした季の想いを、練は軽く蹴散らす。


「どんな時でも季ちゃんを助けるって約束した。今の季ちゃんも、過去の季ちゃんも、未来永劫。だから季ちゃん同士で傷付け合う事を俺は許容しない。」


「それに。」そう練は付け加える。


「俺はこの季ちゃんを、季ちゃん以上に知っている。まるで最近の事のようにな。」


まるで、高校生が中学生だった頃を思い出すかのような口振りで練は笑う。


「あー、そういう事ですか。いいですよ。」


”プレデター”が突如放った後ろ回し蹴りは、空間を歪め──────


「…………??」


ただ、遠くの海面を果てしなく吹っ飛ばすだけだった。


「季ちゃん。物理攻撃で出れるならもうとっくに出てるよ。」


「へぇ、で?」


「そう急かすなよ。そろそろ来るだろ。」


それは、言葉の通りだった。

突如、"プレデター"は上空へ手刀を放つ。それは空間を歪め、鎌鼬の如く空間を裂く斬撃を生み出す。その次の瞬間、まるで事前にそこに現れることを知っていたかのように、飛来した斬撃が上空に突如現れた石板に命中した。


「そろそろ。何が来るんですか?」


「ん?『夏の命運を握る魔王』"プレデター"の実装。」


「……は?」


その言葉の意味を理解する前に、粉微塵になった石板の欠片が雨の如く降り注ぎ、”プレデター”とルミナ(仮)の服装を海辺仕様へと変更する。


「……衣服を変えた……?これになんの意味があるんでしょうか?」


胸のゼッケンに”プレデター”と書かれたスクール水着。季と全くもって同じデザインだが、決定的に違う所は大火力のメロン2丁。バカデザイン受賞だ。


「破廉恥な女!!破廉恥な女!!恥を知れ!!!」


「うるさいですね……。」


黒歴史時代の自分が自分以上の抜群スタイルで、「胸がキツいですね……」とかほざいてたらムカつくと思う。勿論、神咲季とかいう女もそうだった。なんならさっきより殺意マシマシだった。


「とにかく、力じゃ解決できないって分かったよな?」


「不本意ですが仕方ありませんね。本気のあなたと戦うためです。 脱出に協力しましょう。」


「じゃ、夏を満喫しようね〜。」


「は?」


規格外の魔王も、その単語は予想外。流石に気が抜けて周囲を押さえ付けていた重圧も消えた。

そしてその影響で1人、


「はぁッ、はぁっ……はぁっ……。」


ルミナ(仮)は砂浜に拳を打ち付けていた。


(仇を……一生涯の敵を目の前にしているのに、別の相手に怯えて動けないなんて……。)


挙句、超絶ラフなオシャレ水着を着せられる始末。


「……なんて、情けない……!!」


そんな、意味の分からない状況に揉まれているルミナ(仮)に、1人近付く影があった。


「ねぇ、お姉ちゃんもルミナなの?」


「お姉ちゃん『も』」。その単語の意味を理解できず、ルミナ(仮)は少しフリーズしていたが、


「………………私……?」


龍の能力故、目の前の少女が自分とほとんど同じ存在である事、それが本能で理解できてしまう。


(……これが、私……?)


しかし、心はどうにも納得させられなかった。

ルミナ(仮)……否、ルミナ・シルヴ=ファングは孤児だった。物心着いた時から、亜人人族間戦争に巻き込まれ、息つくことなど一瞬たりともなかった。


目の前の、五体満足にして天真爛漫な少女に対して自分は────左腕と右眼を失い、目の前の現実全てに疑心暗鬼になっている。

……あまりに対極的。しかし、それをどうする事もできない。悲惨かつ凄惨な戦争によって、少女の身も心も、大きく削り取られてしまったのだから。


「ルミナはルミナ!」


眩しい。真夏の太陽よりも。そんな眩しさに思わず眼を覆いたくなってしまうが、


「…………私は。」


差し出された手を、繋ぐ。


「……私は、『ルミナ・シルヴ=ファング』。」


その瞬間。


「────そっか。」


ポトリ、ポトポト、水滴が砂浜を濡らす。


「こっちの世界の私は、幸せなんだね。」


互いの脳裏に、走馬燈が如く溢れ出す()()()()()()()()()()()()


「ひぐっ……ぅぐっ…………ゔんっ……!!」


「……そして、金子練も。」


「ちょっとちょっと、どうしたんだよルミナ。」


突然泣き始めたルミナをなだめつつ、練はルミナ・シルヴ=ファング(以下、『ルミナ(アナザー)』と呼称する。)を不思議そうに見上げる。

ルミナ(アナザー)はそんな練を見て、頭を下げた。


「ごめんなさい。あまりに知り合いに似ていたから、つい無礼な真似をしてしまいました。」


「え?いや別に気にしてはないけども……」


「ありがとう、金子さん。あとひとつだけお願いが。」


「お願い?」


そして彼女は、少し息を整え、微笑を浮かべる。


「ルミナは幸せに生きていると。()()()()()()()()()()()。」


練を通じて、練に似た誰かにそう言った。


「────じゃあ、ここから出ないとな。」


全員の方針は決まった。あとは手段だけだ。


「それで?夏を満喫する……それが条件と聞きましたが。」


流石ラスボス級。話が終わるまでしっかりと待っていてくれたらしい。


「それは私から。」


シルフィアが挙手し、その疑問に答える。

ちなみに、”プレデター”さんはシルフィアのふざけた格好を2度見してました。魔王でもびっくりするんですね。


「ここは全員の共通認識によって生まれた異空間です。」


「はぁ?!なんだその魔法……的なのは!?」


ここで練はそれを敢えて『魔法』とは呼称しなかった。勿論、それは理由があっての事だった。


「『魔法的なの』という言葉は言い得て妙かもしれません。どうやら、この空間は魔法じゃない何かによって構成されているみたいなので。」


魔法。『非科学的なもの』を総じてそう指すこともできるが、この世界において、魔法は説明できない事柄ではない。

つまり、『魔法的なもの』とは、魔法でも科学でもない、理外の力を指しているのだ。


「魔法的なの!!」


「ルミナ、語尾じゃない。」


「そしてこの空間が破壊される条件はあの石板の通り、『夏を満喫すること』となっていました。」


シルフィアは淡々と事実を話す。その事実に練達は驚きを隠せなかった。


「そんな馬鹿な!」


「俺たち!あんなに夏を満喫したのにー!!!」


「…………えぇ、お察しの通りです。この空間は全員が夏を満喫する必要があるんです。」


……沈黙。一同白い目でシルフィアをみつめていた。


「「「「「………………。」」」」」


「えぇ、えぇ!!言わんとしている事は分かりますが!!!これも解析の結果です!!!しかし!!」


バッ!!と、シルフィアが手を払い、その内に秘めた想いを吐露する。


「解法が示されたのなら、私が夏を我慢する必要などない!!そうですよねっ!!」


ちなみにその様子を見て”プレデター”さんはより怪訝そうな表情になっていた。多分、魔王の能力で『見えなくなる』というデバフを無視しているのだろう。つまり”プレデター”視点では、(全裸の幼女がなんか言ってる……怖……。)状態なのだろう。

……いやあんたの服も大概だろ。


「そうだぜみんな!!シルフィアがとんでもない魔法バカだとしても!!!だとしても可愛い女の子なんだぜ!??夏を楽しむななんて言えるかよ!!」


「バカじゃないです。真剣なだけです。」


「そう!真剣にやってただけだ!!だから夏を真剣に満喫するぞー!!!」


そんな勢いだけの展開だったが、そもそもこのお話はどの展開を見渡しても、勢いだけだったハズだ。じゃあ今回もこんな感じでいいんじゃない?って事で──────


「「「「おーー!!!!!」」」」


「この世界はこういうノリ、なのか……?」


「うふふ、では満喫しますか。」


そっからはもう遊びに遊(以下略)。

シルフィアと”プレデター”とアナザールミナが加わった事で生まれたハイライトといえば────シルフィアの魔法光学迷彩水着を、練が何とか覗こうとしてぶっ飛ばされたり、”プレデター”が海に触れる瞬間海が割れてしま(曰く水より圧倒的に存在そのものが強いせい)ったり、ルミナ(アナザー)にルミナが遊びを教えるという逆転現象まで起きていたり…………各々が夏を満喫している事は間違いなかった。故に、その影響は徐々に世界へと現れていた。


「……ん?」


ふと、練が空を見上げる。練だけではない。皆が些細な違和を感じ、空を見上げる。


「…………夕方だ。」


そう呟いたのは誰だったか。しかし、それは皆の共通認識だった。ずっと変わらなかった世界に現れた分かりやすい変化、それはこの空間の終わりを意味していた。


「……満喫したもんな、夏。」


その言葉に対して、誰かが何かを言うことはなかった。それも全員の共通認識であり、言うまでもないことだった。

1人はこの空間が終わってしまう事に寂しさを感じ、1人は少し物足りなさを感じつつも、この先の出来事に胸を踊らせ、1人は一時の夢のようだったと、この一瞬を締めくくり──────そして1人は、()()()()()()()()()


「ん……?」


遠くで、黒い点のような物が見える。それは地平線の向こうから────否、


「────ッッ!!!!」


地平線を()()()()()()()()、それが姿を現したのだ。


『ワンダァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!』


某有名2Dアクションゲームの最新作みたいな叫び声────否、それはテーマパークのアナウンスに酷似していた。


「……なっ!?」


『楽しんでくれたか??最強魔王”エンディング”の夏休みワールドを!!!!!』


その夕陽を背景に現れたのは、


「…………え、俺?」


金子練のそっくりさんだった。

いつも読んでくれてありがとうございます!

海です。11月なのにね。

あと、イラストちょっと上げてます。pixivのここ⬇

HKmE https://www.pixiv.net/users/22381711

以下、ルミナ(アナザー)の軽いあらすじ。

森に隠れ住む獣人、『シルヴ=ファング』夫妻に卵の状態で見つかり、そのまま1ヵ月程育てられる。しかし、程なくして『勇者』の襲撃によって夫妻は殺害。ルミナ自身は左の角を斬り落とされるが、逃亡する。

勇者『カネコレン』の台頭によって戦争は苛烈さを増し、育ての両親を殺されたルミナも義勇軍として参戦し、幾度となくレンと闘う。ルミナが戦争に加わってから2年。ルミナ自身も『勇者』と祭り上げられ、互いの勇者が満足に戦えるようにと、戦争は最早勇者と勇者の一騎討ちに近い様相を呈していた。

最期の一騎討ちでは、レンの動きが最期の一瞬だけ鈍り、それが決定打となり勝利した。深淵の侵食によってほとんど生物兵器と化していたレンの身体は、敗北と同時にみるみる形を失い、最後に無骨な銀のリングが2つと、宛名だけ書かれて本文も便箋もない、つまらない手紙だけが残った。

勇者の死亡後、人族側の戦況はみるみる悪化し、程なくして敗北した。勝利によってルミナは多くの栄誉と富を得たが、それら全てを惜しみなく使い、ルミナは孤児院を開いた。その左腕の義手の薬指には、無骨な銀のリングが嵌められているのだとか。

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