海来たらしいぞ!!
前回のあらすじ〜
流しそうめんでギネス取るらしいよ
「う…………ぐ…………、」
木々の隙間から射し込む木漏れ日が暖かいと同時にうざったい。
「眩しっ……ってか……」
「ぅぅぅぅうあっっっちぃぃぃわああああああああああッッッッ!!!!!!!!!!!」
金子練、咆哮。
まぁこの炎天下で直火で焼かれているので当然か。
「あっ、パパ〜!!」
さて、叫ぶことが平常運転だと認知されている練。普通に苦しんでいるのに、全く心配されずにおはよう感覚の挨拶を返されると、少し物悲しい────
「ファッ!?水着ルミナ!?…………熱中症か。」
熱中症だな。
さて、そんなぼうっとした脳ミソでも今やるべきことは分かる。水分補給のため、どこかに水がないか探す練だったが、その視界の端に何やら蠢く物体が…………
「うぅ……日焼けヤダ……。」
「ファッ!?スク水季ちゃん!?……熱中症だなこりゃ……。」
熱中症だった。
さて、そんな脳ミソ生ゆでパラダイスな練を心配する声がする。
「お兄様?頭は大丈夫ですか?クラクラするなら回復魔法を使いますよ?」
「……………………ん?」
声色でその主がシルフィアだということは分かるが、見える景色はぼやっとしていて、人物像が全く分からない。
あぁ、本当に熱中症だったんだな。そう納得しつつ、
「…………あぁ、熱中症か。回復してくれい。」
そう言って頭を差し出す。しかし、シルフィアの返答は予想だにしないものだったのだ。
「はい!……ん?どこも悪くないですが……?」
「そんな訳ないが???!!!!」
そんな訳がない。そう練が騒ぎ立てる理由、その理由とは、
「???何か変なことが?」
そう、視界のボヤけ。もとい────
「服は!??????」
一国の王女が無着衣でウロウロしているという事実だった。
そう、『全裸なワケがない』という先入観によって練は視界不良を感じ、熱中症を訴えていたのだ。
「……これですけど。」
まぁ確かに?シルフィアが指で指し示す先では、BluRay/DVDで剥がれそうな光が局部を覆い隠しているが、そんなの何も着ていないのと同じだろ。
それとも違うのか?!水着と下着は違うって事と同じなのか?!
「………………バカにしか見えない服?」
「あはは、誰にも見えませんよ。」
「夢なら覚めてくれ〜ッ!!」
その瞬間、ドシン!!巨大な石板が頭上から落下し、その莫大な質量攻撃で練を軽く吹き飛ばした。
「はあっ??!!なんですか!!?」
その物理現象に驚いたのも束の間、その石板に書かれた内容で更にもう一段階驚くことになる。
『夏を満喫しないと出られない空間』
「………………??」
いや、それは驚きというよりも困惑か。
……と、驚きで固まっている練に、背後から話しかける人影が2つ。
「あっ、お兄ちゃんのとこにも降ってきたみたいだね。」
「全く、不思議な石板ですね。」
それは水着のダークとライトだった。
「…………なんで登場人物が余すことなく水着なん?」
さて、改めて描写しようか。
ルミナは、普段のワンピースのアレンジっぽいスタイル。かわいいね。
季は謎のスクール水着。ゼッケンに『くろのす』とあるので、結構昔のものらしい。
シルフィアは……知らん。光の屈折とかを魔法で操作してるらしいぞ。
ダークはモノクロのスポーツタイプの水着で、ライトは……クールビズタイプのメイド服……?
「中に水着を着ています。」
おいピラリじゃない。気軽にそういうことするんじゃない。コラ!
……閑話休題。時を戻そう。
「…………なんで登場人物が余すことなく水着なん?」
そんな素朴な疑問に、ダークとライトが答える。
「あー、それはね〜?」
「その理由は石板の穴の中に書いてますよ。」
ダークのセリフを食うようにしてライトがそう言う。
「そうなんだ。えっ、穴ある?」
そのセリフを真に受けて石板をジロジロ見始めたその時だった。
「「えいっ。」」
ダークとライトに背中を押され、驚くのも束の間。
「ぎゃっ!?…………えっ、なんで俺の一張羅が海パンに?」
石板が消えると同時に練の学ランも全て消失。代わりに練が身に付けていたのは海パン一丁だけだった。
「あ〜あ。」
「やっちゃったねぇ。お兄ちゃん。」
「…………なにが?」
さて、説明タイム……といっても、「それぞれ練が経験したこととほぼ同じ事態に遭ったよ。」程度のものである。説明するまでもない。
「……よーし、大体わかったぞ。」
しかし、どちらにせよこんな状況で『夏を楽しめ!』なんて意味不明である。
「ふざけんな──ッッッッ!!!!!!ふざけた真似をしやがって!!この世界を作ったヤツ!!出て来いや!!!!!」
とりあえず叫ぶ練。平常運転だった。
そんな練に同調する人影が1つ。
「そうだよね!こんな世界に飛ばされて水着にされるなんて!!おかしいよね!!!」
それは海=陽の先入観丸出しの季だった。まぁそのイメージはあるけどさ。
何はともかく、季が練の意見に同調しようとしたその時。
「超ありがとう!!!!!お礼言わせろや!!!!!!」
全然同調できなくなった。
「…………???」
「なんだコイツ……」という顔で練を見つめる季。気にせずはしゃぐ練。
「そりゃそうなりますよね。じゃあ、私はこの空間の解析を始めます。」
そう言って魔導記憶を展開し、空間の解析を始めるシルフィア。頭の上には三角錐型の結界を張り、日光対策も万全そうだった。
「『夏を満喫しないと〜』なんてアバウトな条件で構築されている世界なら、綻びも生まれるはずです!」
こうなったシルフィアは誰にも止められない。一体いつからこうなったんだろうね。
「……はぁ。練くんは夏が好きなんだね。でも、私は夏が嫌いかな。暑いし……」
『暑い』。それ以外の夏が嫌いな理由を思い出すため、季は自分の一生分の夏を振り返る。
……思えば、生まれてこの方夏を満喫した事などなかった。
(そうだった。私は夏が羨ましかったんだっけ。)
弱く脆い身体。それ故に、『夏』という季節から隔離されていたのかもしれない。
春と秋は花を見た。冬は雪を見た。
(私が楽しめるのは観ることだけ。)
身体を動かせば、全て痛みに変わる。空気に触れれば、身体は蝕まれる。故に、温室の中で育てられる花のように、自分の部屋にずっといた。
(花火だって、海だって、祭りだって、私は見ているだけ。羨ましいだけ。)
夏は、誰とも共感できなかった。共有できなかった。ただ、そのギラついた日光の暑さ以外は何も────
「……とにかく暑いし!」
「でも、海で遊べるのは夏だけだぜ。」
拒絶しても変わらずに手を差し伸べる練。
それがまるで太陽のように思えてしまい、少し眼を背ける。
「海の何が良いのさ。」
意地っ張りな自分が嫌いになる。ここで意気地にならず素直になれたら、きっと楽しいのに。
「そりゃ────あれ?ルミナは?」
……それは練が海を眺め、海の何たるかを熱弁しようとした時だった。いつの間にかルミナがいない。キョロキョロと砂浜や海岸線を探し回り始めた練だったが、季はふと視界の端に何かを捉える。
ザパン。水面を跳ねる黄色い影。魚だろうか?イルカ?いいや、あの形は────
「…………今の、じゃない?」
「ンなわけ……。」
次のジャンプは2人ともハッキリとその姿を捉えられた。
「「…………………………えっ?」」
「イヤッホーイ!!!!」
何故なら龍人化したルミナがはしゃぎ声を上げ、10m程の特大ジャンプを見せてくれたからだ。
「……まぁ、満喫しないとね。」
そう納得しかけた練だったが、
ル ミ ナ が 危 な い 。
「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!???!!!!」
いつも読んでくれてありがとうございます!
やりてぇ創作が多すぎてどれから手つけるか迷いまくりだぜ……とりあえずこの夏休み番外から更新していきます。




